顎変形症の治療とオトガイ形成はどう違う?それぞれの目的と併用されるケースを解説

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顎変形症の治療とオトガイ形成はどう違う?それぞれの目的と併用されるケースを解説

顎変形症の治療とオトガイ形成はどう違う?それぞれの目的と併用されるケースを解説

「顎変形症の治療とオトガイ形成って、どう違うの?」

「自分の場合はどちらが適しているのか知りたい」

このようにお悩みの方も多いのではないでしょうか。

顎変形症(がくへんけいしょう)の治療は、咬み合わせや骨格のずれといった機能面を整えるのが目的で、歯列矯正と外科手術を組み合わせて根本から改善する方法です。

一方のオトガイ形成は、顎先の形を整えて横顔やフェイスラインの見た目を調和させる施術で、目的もアプローチも大きく異なります。

両者の違いと役割を理解しておくことは非常に重要です。

この記事では、顎変形症治療とオトガイ形成の目的の違い、適応の考え方、併用されるケースについてわかりやすく解説します。

顎変形症とは

顎変形症とは

顎変形症とは、上顎や下顎の骨格にずれや変形が生じ、咬み合わせや顔全体のバランスに影響を及ぼす症状のことです。骨格の位置や大きさに不調和があることで、受け口(下顎前突)や出っ歯(上顎前突)、顔の左右非対称などの特徴が現れることがあります。

この症状は見た目だけの問題ではなく、咀嚼のしづらさや発音の不明瞭さ、さらには呼吸機能への影響など、機能面にも支障をきたす場合があります。顎の骨格が原因であるため、歯列矯正のみでは根本的な改善が難しいのが特徴です。

治療には、歯列矯正と外科的手術(外科矯正)を組み合わせた方法が用いられます。顎の骨格を正しい位置に整え、咬み合わせと顔貌のバランスを同時に改善することで、機能面と審美面の両方からアプローチすることが可能です。

オトガイ形成とは

オトガイ形成とは

オトガイ形成とは、顎先(オトガイ)の形や位置を整えることで、顔全体のバランスを改善する形成外科的手術です。顎の長さや前後の位置、高さを微調整し、横顔のEラインやフェイスラインを整えることを目的としています。

手術方法には、顎先の骨を切って移動させる「骨切り法」と、シリコンなどの人工物を挿入する「プロテーゼ法」があります。どちらの方法も、顔の輪郭を自然に整えることができるのが特徴です。

主に審美的な改善を目的とする手術ですが、顎変形症の治療と併用して行われることもあります。その場合、咬み合わせを整える外科矯正に加えて、顎先の位置を調整することで、より調和の取れた自然な顔貌を目指します。

顎変形症の治療とオトガイ形成の違い

顎変形症の治療とオトガイ形成の違い

顎変形症の治療とオトガイ形成は、一見似ているようで目的やアプローチが大きく異なります。治療内容を理解するうえで、両者の違いを整理しておくことが重要です。

両者の主な違いは以下のとおりです。

  • 治療目的の違い
  • 適用される手術部位・方法の違い
  • 保険適用の有無

それぞれについて詳しく解説します。

治療目的の違い

顎変形症の治療は、顎の骨格的なずれや変形を改善し、噛む・話す・呼吸するといった機能を回復させることが主な目的です。機能面の不調を根本から治す「医療的治療」にあたるため、健康保険が適用される場合もあります。

一方、オトガイ形成は顎先の形や位置を整えることで、横顔やフェイスラインの見た目を美しく整えることが目的です。顎の機能には大きな影響を与えず、主に顔貌バランスや輪郭の審美的改善を図る「形成・美容的手術」に分類されます。

つまり、顎変形症治療は機能改善を重視し、オトガイ形成は審美的バランスを重視するという目的の違いがあります。どちらも顔の印象に関わる治療ですが、アプローチの方向性が大きく異なるのです。

適用される手術部位・方法の違い

顎変形症の治療では、上顎や下顎の骨を切り、前後・上下・左右に移動させて咬み合わせと骨格全体の位置を整えます。代表的な手術には、下顎枝矢状分割術(SSRO)や上顎骨切り術(Le Fort Ⅰ型)などがあり、顎の構造そのものを修正する大がかりな外科手術です。

一方、オトガイ形成は顎先(オトガイ部)のみを対象とし、骨を切って移動させる「骨切り法」や、シリコンなどの人工物を挿入する「プロテーゼ法」で形を整えます。対象となる範囲が小さく、主に輪郭や横顔のバランスを調整する目的で行われます。

また、顎変形症の手術は全身麻酔下で入院を伴うのに対し、オトガイ形成は局所麻酔や短時間の施術で日帰りが可能なケースも多いです。

保険適用の有無

顎変形症の治療は、咬み合わせや顎の機能を改善することを目的とした医療行為であり、一定の条件を満たせば健康保険が適用となります。指定医療機関や大学病院などで、矯正歯科と口腔外科が連携して治療を行うのが一般的です。

一方、オトガイ形成は見た目の改善を目的とする審美的手術とみなされるため、原則として保険適用外の自費診療となります。費用は使用する方法(骨切り法・プロテーゼ法)や医療機関によって異なりますが、数十万円程度が目安です。

ただし、顎変形症の外科手術に付随して顎先の位置を整える場合には、機能改善の一環として判断され、保険適用内で行われるケースもあります。治療目的や手術計画によって扱いが変わるため、事前に医師へ確認することが大切です。

顎変形症の手術でオトガイ形成を併用するケース

顎変形症の手術でオトガイ形成を併用するケース

顎変形症の手術では、上下の顎の骨格を整えたあとに、顎先(オトガイ)の位置や形がわずかに不自然に見えることがあります。これは、骨格全体のバランスが変化した結果、顎先だけが相対的に突出または後退して見えるためです。

そのような場合、顔全体の骨格バランスやフェイスラインを補正する目的で、オトガイ形成を併用することがあります。顎先を数ミリ単位で前後・上下に調整することで、咬み合わせの機能性と顔貌の調和を同時に高めることが可能です。

この処置は美容目的ではなく、骨格全体のバランスを整える医療的補正として行われるケースが多いです。結果として、横顔のラインや下顔面の輪郭が自然に整い、より完成度の高い仕上がりが得られます。

オトガイ形成のみを検討する場合の注意点

オトガイ形成のみを検討する場合の注意点

オトガイ形成は顔貌バランスを整えるうえで有効な方法ですが、適応を誤ると満足のいく仕上がりにならない場合があります。とくに単独で行う際は、骨格や機能面との整合性を慎重に見極めることが大切です。

オトガイ形成のみを検討する際の注意点は以下のとおりです。

  • 骨格性の問題を伴う場合は単独では改善が難しい
  • 美容目的の施術では後戻りや左右差に注意が必要

それぞれについて詳しく解説します。

骨格性の問題を伴う場合は単独では改善が難しい

出っ歯や受け口など、顎変形症に該当する骨格的なずれがある場合は、オトガイ形成だけで根本的な改善を図ることは難しいです。

顎先の形を変えることで一時的に見た目を整えることはできますが、骨格全体のバランスが崩れたままでは、咬み合わせや機能面に問題が残るおそれがあります

とくに、咬合のずれや顎の前後差が大きい場合、オトガイ形成を単独で行うと、見た目の不調和がかえって強調されるケースもあります。そのため、まずは顎変形症の有無を確認し、必要に応じて外科矯正などの根本的な治療を優先することが重要です。

美容外科だけでなく、歯科口腔外科や矯正歯科での診断を併用することで、治療方針のミスマッチを防ぎ、見た目と機能の両面で最適な結果を得やすくなります。

美容目的の施術では後戻りや左右差に注意が必要

オトガイ形成を美容目的で行う場合、術後に骨やプロテーゼがわずかに移動し、形状が後戻りすることがあります。とくに骨切り法では、骨の癒合過程や筋肉の張力によって、位置がごくわずかに変化することがあるため注意が必要です。

また、骨の切除量や移動量が左右で異なると、顔の対称性にわずかな差が生じるケースもあります。さらに、オトガイ部には知覚神経(オトガイ神経)が通っているため、まれに下唇や顎周囲にしびれなどの感覚変化が現れることもあります。

これらのリスクを最小限に抑えるためには、顎の構造や神経走行を正確に理解している口腔外科医・形成外科医に相談することが重要です。術前に3Dシミュレーションや画像分析を十分に行い、理想の形と安全性の両立を図ることが大切です。

よくある質問

よくある質問

オトガイ形成と顎変形症の手術は同時に行えますか?

同時に行うことがあります。上下の顎の骨格を整えたうえで、顎先(オトガイ)の位置や形を微調整することで、顔全体のバランスをより自然で調和の取れた仕上がりにすることが可能です。

咬み合わせや呼吸といった機能面の改善に加えて、横顔のライン(Eライン)やフェイスラインの審美的な完成度も高められます。手術全体の設計段階で計画的に行うことで、追加の負担を最小限に抑えられる点もメリットです。

また、顎変形症の治療の一環として機能改善を目的に実施される場合には、健康保険の適用範囲内で対応されるケースもあります。

顎変形症の治療はどの診療科で相談すればよいですか?

矯正歯科または口腔外科での相談が基本です。歯並びや咬み合わせだけでなく、骨格全体のバランスを詳しく確認し、必要に応じて形成外科や耳鼻咽喉科と連携して治療を進めるケースもあります。

矯正歯科では歯列や咬合の分析が、口腔外科では顎の骨格や手術適応の判断がそれぞれの専門です。両分野が連携して治療計画を立てることで、見た目と機能の両方を総合的に改善できます。

大学病院や顎変形症の指定医療機関では、保険適用のもとで一貫した治療を受けられる場合もあります。

オトガイ形成で顔が大きく見えることはありますか?

顎先を前方に出しすぎたり、下方向に長く伸ばしすぎると、顔全体が縦に長く見えることがあります。特に下顎の長さや角度のバランスを誤ると、下顔面が強調され、意図せず「顔が大きく見える」印象になることもあります。

こうした仕上がりを防ぐためには、手術前のシミュレーションが非常に重要です。CT画像や3Dモデルを用いて横顔やフェイスラインのバランスを確認し、顔全体との調和を保ちながら自然な形に調整します。

まとめ

まとめ

顎変形症の治療とオトガイ形成は、どちらも顔の印象に関わる治療ですが、目的は大きく異なります。顎変形症は「噛む・話す・呼吸する」といった機能面の改善が中心で、骨格のずれを根本から整える治療です。

一方、オトガイ形成は顎先の形を整えて輪郭バランスや横顔の調和を高めるための形成手術で、審美目的のケースがほとんどです。

骨格の不調和がある場合は、オトガイ形成だけでは改善が難しいこともあり、外科矯正と併用して行われるケースもあります。治療の選び方を誤らないためには、矯正歯科・口腔外科で骨格や咬み合わせの状態を正確に診断してもらうことが重要です。

山之内矯正歯科クリニックでは、顎変形症の外科矯正からオトガイ形成まで、幅広い治療に対応しています。口腔外科・形成外科・呼吸器内科など多領域の専門医と連携し、機能と審美の両面から最適な治療プランをご提案します。顎の形や咬み合わせでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

山之内矯正歯科クリニック 院長山之内 哲治
山之内 哲治

矯正歯科臨床38年以上の経験を持ち、外科矯正と呼吸機能改善を専門としています。口腔外科・形成外科・呼吸器内科など多領域の先生方と連携し、咬み合わせの問題を骨格から見直す必要があるのか、歯列矯正で対応できるのかを慎重に見極めた治療を行っています。

経歴

  • 1984年:岡山大学歯学部附属病院 研究生・医員
  • 1986年:光輝病院勤務、岡山大学歯学部附属病院 助手
  • 1987年:米国ロヨラ大学 Dr.Aobaのもとへ留学
  • 1998年:岡山大学歯学部 退職
  • 2000年:山之内矯正歯科クリニック 開院
  • 2004年:日本矯正歯科学会 優秀発表賞受賞
  • 2011年:日本臨床矯正歯科医会 アンコール賞受賞