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【小児矯正】歯科医院の選び方ガイド!保護者様に知ってほしい4つのポイント

【小児矯正】歯科医院の選び方ガイド!保護者様に知ってほしい4つのポイント

お子様の歯科矯正を行ううえで、歯科医院選びは重要なポイントです。どの歯科医院ではじめるかによって治療の選択肢や仕上がり、お子様のモチベーションに大きな影響が出るからです。

小児矯正は長期間にわたり、費用も高額です。通院先はお子様と保護者様が安心して通える場所である必要があります。

小児矯正を検討中の保護者様のため、本記事では失敗しない歯科医院選びのポイントを解説します。

小児矯正における歯科医院選びの重要性

小児矯正における歯科医院選びの重要性

歯科矯正には、単に見た目を整えるだけでなく、歯並びや噛み合わせの改善によって体全体の健康を保つ効果があります。

虫歯や歯周病のリスクが軽減したり、咀嚼(そしゃく)・発音が改善したり、よく噛めるようになれば消化機能の向上にもつながります。噛み合わせの悪さからくる口呼吸や姿勢の悪さ、筋肉の緊張なども歯科矯正で改善できる症状のひとつです。

小児の場合は体が成長段階にあり、発育を利用した矯正ができます。あごを正しい方向へ導き、骨格のズレを補正することは成人矯正ではできないアプローチです。

長い治療過程で抜歯をせずに済んだり、治療の難易度が下がったり、時には短期間で治療が終わるなどさまざまなメリットが期待できます。

では、これらのメリットは誰がやっても同じように得られるかといわれれば答えは「NO」です。実は、歯科矯正には国家資格としての専科制度がなく、歯科医師免許があれば歯科矯正を行うことができます。

保護者様の気持ちとしては、お子様の将来的な健康に影響することは知識と経験が豊富な歯科医に任せたいと思うはずです。大切な永久歯を治療するわけですから、保護者様には親子で安心して通える歯科医院を選んでほしいと思います。

小児矯正の歯科医院を探そう!選び方のポイント

小児矯正の歯科医院を探そう!選び方のポイント

小児矯正を検討するうえで、保護者様が時間をかけているのが歯科医院探しです。「近いから」「いつも通っているから」という理由もいいですが、最終的な仕上がりに満足できるよう、以下のポイントをチェックしましょう。

  1. 1.症例数と実績
  2. 2.子どもと保護者への配慮
  3. 3.自宅からの距離
  4. 4.矯正の選択肢

それぞれのポイントを詳しく解説していきます。

1.症例数と実績

歯科医院選びの際にまずチェックしたいのが、小児矯正の症例数と歯科医の実績です。経験豊富な歯科医師は、成長期特有のあごの発育や骨格の変化を見極める力に優れています

治療前後の写真や矯正データを提示できる歯科医院であれば、信頼性を客観的に判断できます。ホームページで症例を公開している歯科医院もあるので、気になる歯科医院があればぜひチェックしてみてください。

もう一つ、歯科医の実績を知るうえで判断材料となるのが、日本矯正歯科学会の認定医・専門医の在籍有無です。いずれも国家資格ではありませんが、専門知識と臨床経験が公式に認められた歯科医師という位置づけです。

認定医適切な知識と技術、経験があり、日本矯正歯科学会の指定研修施設で5年以上の研修と診療を終えた者。資格審査では症例審査に合格することも条件。
専門医診断や治療、術後管理の技術と経験を持ち、かつ他診療領域の医師らとの連携を図り、標準的な矯正歯科が行える者。認定医の資格があり、診療や学術活動の実績を持つことも条件。筆記試験と症例審査に合格することで認定される。

難症例への対応や、口腔外科・耳鼻科との連携ができる体制が整っていると、保護者様の安心につながります。

参考:公益社団法人 日本矯正歯科学会「認定医・専門医・指導医・臨床医について」

2.子どもと保護者への配慮

小児矯正は長期戦であり、お子様本人と保護者様の協力なくしては行えない治療です。時に痛みや違和感が生じたり、周囲の視線が気になったりすることがあるかもしれません。

治療中の困りごとや悩みに対して寄り添ってくれる歯科医院であれば、長期の治療も頑張ろうと思えるものです。お子様が嫌がる気持ちを無視せず、どうすれば続けられるか考えてくれる歯科医院は心強い存在となります。

通院=苦痛なものと感じない工夫をしている歯科医院であれば、お子様も達成感を味わえます。保護者様に対しても画像や模型などを使った説明をしてくれる歯科医院だと安心して通えるはずです。

3.自宅からの距離

小児矯正は1〜3ヶ月に一度の通院が必要なため、歯科医院が継続して通える場所にあることも重要なポイントです。

自宅や学校から無理なく通えることと、駅からのアクセスや駐車場の有無もチェックしましょう。

また、塾や部活動との両立を考えた時に、土日診療や夕方以降の診療体制が整っていることで通いやすさが増します。小児矯正は数年単位で続く治療だからこそ、通院が苦にならない距離にある歯科医院を選びたいものです。

4.矯正の選択肢

小児矯正はさまざまな方法があり、お子様の年齢や歯の状態に合わせて最適な方法を選択します。

近年は痛みが少なく目立ちにくいインビザライン(マウスピース型矯正)の需要が高いです。インビザラインは確かに優れた矯正装置ですが、すべての症例に合うわけではありません。

重度の症例ではその他の矯正器具が適していることもあるので、選択肢が複数あることは患者様の満足度にも貢献します

歯科医院探しでは、矯正装置ごとのメリットやデメリット、代替案を丁寧に説明してくれるかどうかも確認したいポイントです。

小児矯正のカウンセリングで確認すべきこと

小児矯正のカウンセリングで確認すべきこと

歯科医院選びで後悔しないためには、初回カウンセリングで次の3つのポイントを確認しましょう。

  1. 1.検査結果
  2. 2.治療計画
  3. 3.支払い方法

確認すべき内容を詳しく解説します。

1.検査結果

小児矯正を開始するにあたって、歯科医院ではまず口腔内の検査を行います。顎関節や歯列、頭部のレントゲン写真、歯と顔の写真、歯の模型など治療計画を立てるのに必要な情報を揃えます。

歯科医師はこれらの情報をもとにお子様の歯や噛み合わせの状態を説明するので、治療の必要性や方向性を確認してください。数値やイラストで示してくれる歯科医院だととても親切です。

2.治療計画

小児矯正では、いま行うべき治療・経過を見守るべき症状・将来に備える治療を多角的に考えます。使用する装置や治療期間、通院頻度など、治療計画の見通しはしっかり確認しておくと安心です。

小児矯正のメリットだけでなく、デメリットも隠さず説明してくれる歯科医院は信頼できます。説明が一方的でなく、お子様や保護者様の意向を汲み取った提案があれば安心です。

3.支払い方法

小児矯正は原則として保険適用外(自費診療)です。費用は高額になりやすく、経済的な負担は決して小さくありません。

保護者様が納得して治療をはじめられるよう、費用に対しても丁寧な説明を求めましょう。

一般的に、小児矯正の費用には検査費や装置費、調整費、後戻りを防ぐためのリテーナー(保定装置)などが含まれます。マウスピース矯正の場合は、紛失・故障した場合に再製作費が必要となり、その費用も確認しなければなりません。

支払い方法については、現金やクレジットカードのほか、デンタルローンを利用できることが多いです。歯科医院の中には独自の分割払いを用意しているところもあります。

小児矯正は途中でやめると理想の歯並びになれなかったり、永久歯が乱れて生えたりすることがあります。いつか再開しようとしても、時間が経てば経つほど一からやり直しになってしまうケースも少なくありません。

無理のない範囲で支払えるよう、費用の内訳と支払い方法を事前にしっかり確認しておくことが大切です。

当院ではローン・カード会社を通さない院内分割払いをお受けしております。詳しくはお気軽にお問い合わせください。

関連記事:小児矯正は医療費控除の対象になる?条件や申請手順を歯科医が解説

迷った時はセカンドオピニオンも検討する

迷った時はセカンドオピニオンも検討する

小児矯正を検討している保護者様の中には、ご自身で色々調べて情報収集をされる方もいるかと思います。

その過程で、歯科医院によって治療内容や費用に差があることを知り「この方法でいいのか」「もう少し負担を減らせないのか」といった不安も出てきます。

そんな時は、別の歯科医師に意見を聞くセカンドオピニオンを検討しましょう。複数の歯科医院で話を聞くと「ここなら安心できる」「この先生にお願いしたい」といった前向きな発見があります。

また、セカンドオピニオンは治療内容や費用の妥当性を判断できることも大きなメリットです。歯科医院選びで迷った時は、お子様のためにより良い選択ができるよう複数の意見を聞いてみることをおすすめします。

小児矯正にはどんな方法がある?

小児矯正にはどんな方法がある?

小児矯正にはさまざまな選択肢があり、一人ひとりのお子様に合う方法で治療を進めていきます。

治療法特徴固定or取り外しメリットデメリット
拡大床成長を利用して少しずつあごを拡大する。取り外し式掃除がしやすい装着初期の違和感
急速拡大法上あごの正中口蓋縫合に固定式の装置を装着し、骨を拡大する。固定式治療期間が短い痛みや違和感が出やすい
緩徐拡大法弱い力でゆっくり時間をかけてあごを拡大する。固定式/取り外し式を選択可後戻りしにくい治療期間が長くなりやすい
バイオネーター下あごの成長を促す。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
プレオルソ口周りの筋力向上や舌癖の改善に効果的。取り外し式痛みや違和感がほとんどない装着しなければ効果がない
リンガルアーチ歯の裏側に金属製のワイヤーを装着して歯を動かす。固定式見た目に影響しない奥歯が虫歯になりやすい
ヘッドギア上あごの成長を抑え、臼歯を後方へ移動させることで出っ歯を改善する。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
フェイシャルマスク額とあごに装置を装着し、上あごの骨格成長を促す。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
インビザライン・ファースト3Dシミュレーションをもとに作成したマウスピースで歯並びや噛み合わせを改善する。取り外し式ほとんど目立たず行動制限も少ない適応症例が限られる

歯科医は検査結果をもとに治療法を提案しますが、小児矯正は自費診療であるため、最終的には保護者様の希望が尊重されます。

複数の矯正装置の取り扱いがあれば患者様の選択肢も広がります。お子様と保護者様が安心して治療をはじめられるよう、気になることは納得いくまで歯科医に相談してください。

まとめ

まとめ

小児矯正は、お子様の歯と体の健康を支えるための大切な治療です。歯並びや噛み合わせを整えるには信頼できる歯科医師のもと、適切な治療を継続することが何より重要です。

歯科医院選びで迷った時は、まず症例数や実績を確認しましょう。治療の選択肢が豊富で、楽しく通える工夫があれば尚良しです。

当院では、お子様にとって負担の少ない矯正をご提案しております。「実績のある歯科医院に通いたい」「痛みの少ない方法を選びたい」という方はお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

山之内矯正歯科クリニック 院長山之内 哲治
山之内 哲治

矯正歯科臨床38年以上の経験を持ち、外科矯正と呼吸機能改善を専門としています。口腔外科・形成外科・呼吸器内科など多領域の先生方と連携し、咬み合わせの問題を骨格から見直す必要があるのか、歯列矯正で対応できるのかを慎重に見極めた治療を行っています。

経歴

  • 1984年:岡山大学歯学部附属病院 研究生・医員
  • 1986年:光輝病院勤務、岡山大学歯学部附属病院 助手
  • 1987年:米国ロヨラ大学 Dr.Aobaのもとへ留学
  • 1998年:岡山大学歯学部 退職
  • 2000年:山之内矯正歯科クリニック 開院
  • 2004年:日本矯正歯科学会 優秀発表賞受賞
  • 2011年:日本臨床矯正歯科医会 アンコール賞受賞

小児矯正で使うヘッドギアはもう古い?効果や使い方、使用期間を解説

小児矯正で使うヘッドギアはもう古い?効果や使い方、使用期間を解説

小児矯正ではヘッドギアと呼ばれる装置を用いることがあります。ヘッドギアは奥歯と頭部を固定して使うもので、上あごの成長を抑える効果があります。

小児矯正にはさまざまな選択肢があり、技術も大きく進歩していることから「ヘッドギアは古い」と思われがちです。確かに歴史のある装置ではありますが、現代でも効果的な治療法であり、決して廃れているわけではありません

本記事では小児矯正で用いるヘッドギアの基礎知識をわかりやすく解説します。効果や使い方、費用などもまとめているので、小児矯正を検討中の保護者様はぜひ参考にしてください。

小児矯正で使うヘッドギアとは?

小児矯正で使うヘッドギアとは?

ヘッドギアとは、上あごや奥歯の位置を整えるために使用する矯正器具です。主に上あごが前に出ている上顎前突(出っ歯)の治療に用いられます。

小児矯正でヘッドギアを使う目的は、上あごが前方に成長するのを抑えたり、上の奥歯を後ろへ動かして噛み合わせの土台を整えることです。

見た目のインパクトが大きい装置ですが、使用するのは在宅時間や就寝中なので学校生活への影響はほとんどないといっていいでしょう。

ヘッドギアにはいくつか種類があり、それぞれ得意な症例が異なります。

種類特徴
ハイプルタイプもっとも一般的なヘッドギアで、頭部に装着するヘッドキャップ・上の奥歯にかけるバンド・力を伝えるフェイスボウで構成される。
サービカルプルタイプ首の後ろにストラップをかける。後下方に力がかかるので、過蓋咬合を伴う上顎前突に用いられることが多い。

ヘッドギアの効果

ヘッドギアの目的は上あごの成長をコントロールし、歯列を正しい位置に補正することです。成長期のあごの発育をうまく利用しながら骨格のバランスを整えます。

上あごの成長を抑えることは、上顎前突(出っ歯)の改善に役立ちます。噛み合わせのズレも修正できるので、将来的な不正咬合の予防にも効果的です。

歯並びや噛み合わせが改善すると、虫歯・歯周病・口臭・消化機能の低下・滑舌の悪化などの予防にも役立ちます。単に見た目が整うだけでなく歯と体両方の健康を支える効果が期待できます。

ヘッドギアの適応年齢

小児矯正におけるヘッドギアの適応年齢は、7〜10歳頃の混合歯列期です。この時期はあごの成長が活発で骨もやわらかく、矯正力が効果的に働きます。

永久歯が生え揃いはじめる12歳以降は骨格の成長がゆるやかになるため、ヘッドギア単独での治療効果は限定的です。したがって、永久歯列期は別の方法を選択することが多いです。

補足ですが、ヘッドギアは小児だけでなく成人矯正でも用いられることがあります。(主に前歯の後方移動量が大きい症例)

ただし、大人は時間や見た目の制約によって継続使用が難しいことも多いため、近年はアンカースクリュー(矯正用の小さなネジ)の使用が一般的になりつつあります。

小児矯正でヘッドギアを使うメリット

小児矯正でヘッドギアを使うメリット

小児矯正でヘッドギアを使うメリットには次のものがあります。

  • 上あごの成長を抑えられる
  • 子どもの負担が少ない
  • 抜歯をせずに済む可能性がある

それぞれのメリットを詳しく解説します。

上あごの成長を抑えられる

ヘッドギアの主な目的は、上あごの成長をコントロールし、歯列を正しい位置に整えることです。歯並びや噛み合わせが整うと顔全体のバランスも整います。

審美的なメリットだけでなく、虫歯や歯周病の予防、咀嚼・発音の改善にもつながり、結果として体の機能向上につながるのです。

子どもの負担が少ない

ヘッドギアを装着するのは主に在宅中や就寝時で、学校や習い事に影響がありません。家族以外の人に見られることもないので、周囲を気にせずに治療を続けられます。

常時装着するものは痛みやストレスが心配ですが、取り外しできることでお子様の負担軽減にもつながります。

抜歯をせずに済む可能性がある

あごの大きさに対して歯が並ぶスペースが足りない時や、歯の重なりが大きく奥歯を後ろに動かす余地がないケースでは、抜歯をしてスペースを確保することがあります。

健康な歯を抜くことに抵抗がある方は非常に多く、親御さんとしてもできれば避けたいと考えるのは当然のことです。しかし、症例次第では抜歯した方がいいケースがあるのも事実です。

ヘッドギアであごの発育を適切にコントロールできると、将来的に歯を抜かずに矯正できる可能性が高まります。非抜歯で済めばその分治療期間は短くなり、治療費も抑えられるメリットがあります。

小児矯正でヘッドギアを使うデメリット

小児矯正でヘッドギアを使うデメリット

ヘッドギアにはメリットだけでなく、使用するうえで注意したいポイントもあります。

  • 装着時間が長い
  • 運動中は装着できない

それぞれのデメリットも詳しく解説します。

装着時間が長い

ヘッドギアは1日12〜14時間以上の装着が推奨されています。使用時間は効果に影響するため、指示された時間はきちんと装着しなければなりません。

装着時間が短いと治療が長引いたり、歯やあごが計画通りに動かないことがあります。お子様だけでは装着時間の管理が難しいため、保護者様のフォローも必要です。

運動中は装着できない

ヘッドギアには金属パーツがあり、衝突や転倒の危険があるシーンでは装着できません。とくに運動中は注意が必要で、自宅での運動時はヘッドギアを外し、安全を確保することが大切です。

また、子どもはきょうだい間で乱暴な遊びやケンカに発展しそうなことが多々あります。ヘッドギアは強い力が加わると装置が安全に外れる仕組みになっていますが、じゃれあいが激しくならないようご家族の見守りもお願いします。

もう一つ、睡眠中の装着について、保護者様からは「寝返りしづらい」「うつ伏せ寝が多いので心配」といった声をいただきます。最初は違和感が気になるかもしれませんが、ほとんどのお子様が数日〜数週間で慣れていくのでご安心ください。

小児矯正で使うヘッドギアはもう古い?

小児矯正で使うヘッドギアはもう古い?

ヘッドギアは古くからあるオーソドックスな治療法ゆえ「古い」「昔のやり方」といった印象を持たれがちですが、現在でも有用な治療法の一つです。

近年は矯正装置の進歩が急速に進み、マウスピース矯正のような目立ちにくく快適な治療法が増えています。しかし、ヘッドギアは上顎前突など特定の症状に大きな効果を発揮できる装置として、いまも現場で選ばれ続けています

歯並びや噛み合わせ、骨格は人それぞれで異なるため、最適な方法を選び、必要に応じてその他の方法と組み合わせて使い分けることが大切です。

小児矯正のヘッドギアの使用方法

小児矯正のヘッドギアの使用方法

ヘッドギアは、使用方法を守ることではじめて効果を発揮します。歯科医の指示に従い、安全かつ効率的に治療を進めることができます。

一般的なハイプルタイプは、まず奥歯に装着した固定式のバンドとフェイスボウをつなげます。次に、後頭部の上の方にストラップを装着し、フェイスボウとつなげてベルトで張りを調整したら完了です。

首の後ろにストラップを装着するサービカルプルタイプも、奥歯のバンドとフェイスボウをつなげてからストラップをつなげます。

装着・取り外しは歯科医院で指導がありますが、お子様が慣れるまでは保護者様のフォローも必要です。ベルトの張力は効果に影響するので、指示通りに調整してください。

在宅中はできる限り装着するのが基本で、1日12〜14時間以上の装着が推奨されます。

小児矯正のヘッドギアの使用期間

個人差はありますが、ヘッドギアを用いた歯科矯正の治療期間は6ヶ月〜1年程度が目安です。上あごの成長や歯の移動状態を確認しながら、装着時間や牽引の強さを段階的に調整していきます。

小児矯正でヘッドギアを使用するのは第一期で、上あごの成長を抑えたり奥歯を後方に移動させるために使用します。一期終了後は第二期の本格矯正に移行します。

期間は歯の状態や装着時間の達成度で変わってくるので、お子様と保護者様で協力し合いながら治療を継続することが大切です。

小児矯正のヘッドギアの費用

小児矯正のヘッドギアの費用

ヘッドギアの費用は30万〜50万円程度が相場です。ただし、ほとんどのクリニックでは第一期治療にヘッドギアの費用を含めていることが多く、装置単体の料金として請求されるケースは少数です。

▼ヘッドギアを使用する小児矯正の費用内訳

  • 装置製作・調整料:10万〜20万円前後
  • 定期チェック・調整費:月々3,000〜5,000円程度
  • 第一期治療総額:30万〜50万円前後

小児矯正は医療費控除の対象になるケースが多いので、治療計画書や領収書は大切に保管しておくと安心です。

小児矯正のヘッドギアにまつわる質問

小児矯正のヘッドギアにまつわる質問

ヘッドギア矯正について、保護者様から多く寄せられるご質問に回答します。

ヘッドギアはサボるとどうなる?

ヘッドギアは装着している時間に比例して効果を発揮するものであり、指示された装着時間を守らないと十分な効果が得られません

使用時間が短いと、治療期間が延びたり矯正計画の見直しが必要になることもあります。お子様だけでは装着時間の管理が難しいため、ご家族は見守りをお願いします。

ヘッドギアをつけて横向きで寝てもいい?

横向きは装置のズレや変形のおそれがあるため、できるだけ仰向けで寝るのが理想です。

ヘッドギアを装着したまま寝るのは難しいように見えますが、子どもは適応力が高く、数日〜数週間で慣れていくことがほとんどです。どうしても違和感が気になる時は歯科医にご相談ください。

ヘッドギアは大人にも使える?

成人矯正でも使われることがありますが、小児矯正とは目的が異なります。

小児の場合はあごの骨の成長をコントロールする目的で使用しますが、骨の成長が止まっている成人では歯の位置調整として補助的に使用することがあります

たとえば、歯を抜かずに奥歯を後方へ動かしたい時や、歯列の微調整をしたいケースではヘッドギアが有効です。ただし、近年は歯科矯正用のアンカースクリューが主流のため、成人矯正でヘッドギアを使うケースは減少傾向にあります。

まとめ

まとめ

ヘッドギアは成長期の子どもの骨格に働きかけられる矯正装置です。

装着時間のルールはありますが、正しく使い続けることで歯並びを整えることができます。小児矯正にはさまざまな選択肢があり、状態に合わせた治療を行うので、お子様の歯並びについて不安がある方は歯科医に相談してください。

山之内矯正歯科クリニックでは、お子様にとって負担の少ない治療をご提案しております。「出っ歯が気になる」「子どもが嫌がらないか心配」といったお悩みはお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

山之内矯正歯科クリニック 院長山之内 哲治
山之内 哲治

矯正歯科臨床38年以上の経験を持ち、外科矯正と呼吸機能改善を専門としています。口腔外科・形成外科・呼吸器内科など多領域の先生方と連携し、咬み合わせの問題を骨格から見直す必要があるのか、歯列矯正で対応できるのかを慎重に見極めた治療を行っています。

経歴

  • 1984年:岡山大学歯学部附属病院 研究生・医員
  • 1986年:光輝病院勤務、岡山大学歯学部附属病院 助手
  • 1987年:米国ロヨラ大学 Dr.Aobaのもとへ留学
  • 1998年:岡山大学歯学部 退職
  • 2000年:山之内矯正歯科クリニック 開院
  • 2004年:日本矯正歯科学会 優秀発表賞受賞
  • 2011年:日本臨床矯正歯科医会 アンコール賞受賞

小児のマウスピース矯正について。効果やメリット・デメリット、費用

小児のマウスピース矯正について。効果やメリット・デメリット、費用

小児のマウスピース矯正は、痛みを抑えながら歯並びや噛み合わせの土台を整えられる治療法です。常時装着するタイプから在宅中や就寝中のみ装着するものまで、お子様の生活に合わせた選択肢があります。

近年は透明で目立ちにくいマウスピースについてのお問い合わせも増えており「負担が少ないならやらせたい」とお考えの保護者様も多いです。

本記事では、小児のマウスピース矯正の基礎知識を解説します。効果や費用、使用上の注意点などもまとめているので、お子様の歯科矯正を検討中の方はぜひ参考にしてください。

小児矯正の目的

小児矯正の目的

小児矯正は、乳歯から永久歯に生え変わる時期に行う第一期と、永久歯が生え揃ってから行う第二期の2段階に分けられます。

第一期はあごの成長を利用し、永久歯が正しく生え揃うスペースをつくる土台づくりの期間です。第二期では本格的に歯を動かし、歯並びや噛み合わせを整えていく仕上げを行います。

小児のうちに矯正をはじめる最大の利点は、成長の力を利用できることです。発育を活かし、適切な位置に骨を誘導することで治療負担を最小限に抑えられます

成長期にしかできないアプローチは、結果として治療の難易度や治療期間、費用を抑えられる可能性があるのです。

マウスピース矯正は小児矯正における選択肢の一つ

マウスピース矯正は小児矯正における選択肢の一つ

歯科矯正の技術は進化しつづけており、患者様の選択肢も広がっています。マウスピース矯正もその一つで、小児矯正においてはお子様の負担を大幅に軽減できる方法の一つだと考えます。

歯科矯正は状態に応じた治療を行いますが、小児の場合、お子様の負担をできる限り減らしたいと考える保護者様がほとんどです。お子様にとっても、痛みの有無や見た目の変化は、治療のモチベーションに影響を与えます。

本人やご家族の気持ちに配慮するうえで、マウスピース矯正はメリットの多い治療法だといえます。

小児のマウスピース矯正の効果

小児のマウスピース矯正の効果

小児のマウスピース矯正は歯を無理に動かすのではなく、成長期のあごや筋肉の発育を利用して歯が正しく並ぶための土台をつくる治療です。永久歯がきれいに生え揃うためのスペースを整えつつ、機能面の改善も目指します。

たとえば、歯の重なりやねじれ、前歯の傾きなど軽度〜中等度の歯並びの乱れを改善するのに効果的です。歯が生えるスペースを確保できれば、将来的な抜歯のリスクを減らす効果も期待できます。

さらに、骨格バランスを整えることは軽度な出っ歯や受け口など噛み合わせのズレを改善するのにも役立ちます。歯並びの乱れにつながる口呼吸や指しゃぶり、舌癖の改善も可能です。

小児のマウスピース矯正の種類

小児のマウスピース矯正の種類

小児矯正で用いるマウスピースは、大別すると①アライナー型②規制型の2タイプに分けられます。それぞれの特徴を解説します。

アライナー型

一人ひとりの歯型データをもとに、専用ソフトで設計・作製されるカスタムメイドのマウスピースです。代表的なアライナー型マウスピースが「インビザライン(小児向けはインビザライン・ファースト)」です。

透明で目立たないことから、人に気づかれたくない方やワイヤー矯正を避けたい方に人気があります。インビザラインの推奨年齢は6〜10歳頃まで(混合歯列期)で、あごの発育をサポートし、永久歯が生えるスペースをつくる効果があります。

当院でもインビザラインを用いた矯正治療を取り入れておりますので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。

既成型

小児矯正ではあらかじめ形が決まっているマウスピースを使用することもあります。既成型の代表的なものが「プレオルソ」です。

プレオルソは日本の歯科医師が日本の子ども向けに開発したマウスピース矯正で、いくつかある種類の中から自分に合うものを選ぶことができます。既成型ではありますが、あたためると形状が変わるので微調整が可能です。

日中1時間と就寝時の使用が推奨され、学校に持っていく必要がありません。4〜10歳頃のお子様に推奨されています。

小児のマウスピース矯正のメリット

小児のマウスピース矯正のメリット

マウスピース矯正は、従来のワイヤー矯正に比べて見た目や装着感のストレスが少なく、お子様にも受け入れやすい治療法です。ここからは、小児のマウスピース矯正の主なメリットをご紹介します。

目立ちにくい

小児向けのインビザラインは透明で厚みも0.5mmほどしかなく、装着していてもほとんど目立ちません。周囲に気づかれにくいので、お子様が前向きな気持ちで続けられるメリットがあります。

痛みや違和感が少ない

小児用のマウスピースはやわらかい素材でつくられており、痛みや違和感が少ないといわれています。

金属製のワイヤーに比べて口の中が傷つくリスクも小さく、接触のないスポーツであれば運動中も装着できます。

虫歯になりにくい

マウスピース型の矯正装置は、食事や歯磨きの時に取り外すのが一般的です。毎日丁寧に歯磨きをすれば食べかすが溜まりにくく、虫歯や歯肉炎のリスクを抑えられるのも大きな利点です。

インビザラインに関しては定期的に新しいマウスピースに交換するため、ワイヤー矯正に比べて清潔な状態を保ちやすいといわれています。

金属アレルギーでも使える

インビザラインやプレオルソはプラスチック素材でできており、金属を一切使用していません。そのため、ニッケルやクロムなどの金属アレルギーがあるお子様でも安心して使用できます。

小児のマウスピース矯正のデメリット

小児のマウスピース矯正のデメリット

小児向けのマウスピース矯正にはさまざまなメリットがありますが、その一方でいくつか使用上の注意点もあります。ここからはデメリットについても解説していきます。

時間を守らなければ効果が得られない

マウスピース矯正の装着時間は効果に直結するため、推奨される時間を守らないと治療は計画通りに進みません。

食事や歯磨きのタイミングで外した後につけ忘れると、十分な効果が得られない可能性があります。お子様自身が矯正中であるという意識を持ち、保護者様も声がけなどのサポートをすることが成功の鍵となります。

適応できない場合がある

マウスピース矯正は軽度〜中等度の歯並びの乱れに効果を発揮しますが、複雑な症例には対応できない場合もあります。

患者様やご家族が希望しても、矯正歯科医が適応でないと判断した場合はマウスピース矯正以外の治療法を提案することになります。

紛失や破損の恐れがある

マウスピースは取り外しができる分、失くしたり壊したりするリスクもあります。学校や習い事などで外す機会が多いお子様は、出先で紛失してしまうケースも珍しくありません。

再作製にはお金がかかるだけでなく、治療の遅れにつながるおそれがあります。慣れるまでは保護者様が見守ってあげたり、外したマウスピースは専用ケースに入れることを習慣づけたりすることが大切です。

小児のマウスピース矯正の費用

小児のマウスピース矯正の費用

歯科矯正はすべて自由診療(保険適用外)で行われるため、マウスピース矯正の費用は歯科医院によって異なります。

費用感の目安としてはインビザライン・ファーストが70万〜120万円、プレオルソは3万〜20万円が相場です。歯科医院によっては検査料や診断料、保定装置料などが別途発生することもあります。

初回カウンセリングでは通院の頻度や調整費、紛失・破損時のマウスピース再作製費用なども確認しておくと安心です。

審美目的でない歯科矯正(機能的な改善を目的としたもの)は医療費控除の対象となります。医療費控除は費用負担を軽減できる公的制度であり、承認されれば、一定金額の所得控除が受けられます。

関連記事:小児の歯科矯正の費用はどれくらい?補助金や保険、ローンについて

小児のマウスピース矯正の治療期間

小児のマウスピース矯正の治療期間

小児矯正においてマウスピースを使用するのは第一期で、あごの自然な発育を利用しながら土台を整えます。歯の状態や成長スピードによって個人差がありますが、多くの患者様が1〜3年ほどで一期治療を終えられています

インビザライン・ファーストは1〜2週間ごとに新しいマウスピースに交換し、段階的に歯を動かしていきます。1〜3ヶ月ごとの通院では歯やあごの発育を確認し、歯並びが安定した後も保定期間が必要です。

第二期では本格的に歯を動かす治療を行いますが、第一期で土台がある程度整えられると第二期での歯の移動量が少なくなり、期間を短縮できる可能性があります。

まとめ

まとめ

小児のマウスピース矯正は痛みや違和感が少なく、お子様でも無理なく進められる方法です。インビザラインは見た目も自然で、周囲を気にせずに済むメリットがあります。

一方で、装着時間の管理や紛失リスクなど、お子様自身の協力度が結果を左右する側面もあります。複雑な症例には対応できないこともあるため、まずは歯科医に相談のうえでお子様にとって最適な方法を選びましょう。

当院では、お子様にとって負担の少ない小児矯正をご提案しております。「子どもの歯並びが気になる」「マウスピース矯正をさせたい」という保護者様はお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

山之内矯正歯科クリニック 院長山之内 哲治
山之内 哲治

矯正歯科臨床38年以上の経験を持ち、外科矯正と呼吸機能改善を専門としています。口腔外科・形成外科・呼吸器内科など多領域の先生方と連携し、咬み合わせの問題を骨格から見直す必要があるのか、歯列矯正で対応できるのかを慎重に見極めた治療を行っています。

経歴

  • 1984年:岡山大学歯学部附属病院 研究生・医員
  • 1986年:光輝病院勤務、岡山大学歯学部附属病院 助手
  • 1987年:米国ロヨラ大学 Dr.Aobaのもとへ留学
  • 1998年:岡山大学歯学部 退職
  • 2000年:山之内矯正歯科クリニック 開院
  • 2004年:日本矯正歯科学会 優秀発表賞受賞
  • 2011年:日本臨床矯正歯科医会 アンコール賞受賞

小児矯正の期間はどれくらい?第一期・第二期の平均期間について

小児矯正の期間はどれくらい?第一期・第二期の平均期間について

小児矯正は第一期と第二期の2段階で行われます。治療期間には個人差がありますが、第一期と第二期を合わせると2〜5年ほどで完了するのが一般的です。

本記事では、小児矯正が完了するまでの期間について詳しく解説しています。開始するタイミングや期間が長くなるケースなどもまとめているので、小児矯正を検討中の方はぜひ参考にしてください。

小児矯正はどれくらいの期間がかかる?

小児矯正はどれくらいの期間がかかる?

小児矯正は、乳歯から永久歯に生え変わる6〜12歳頃に行う第一期と、永久歯が生え揃う12歳以降に行う第二期に分けられます。

歯の状態やあごの成長スピードによって期間は大きく異なりますが、第一期と第二期を合わせると約2〜5年で完了することが多いです。

第一期の平均期間

第一期治療の期間は1〜3年が目安です。第一期では骨格の成長を利用し、あごの幅を広げたり永久歯が生えるスペースを確保するための土台づくりを行います。

乳歯と永久歯が混合する6〜12歳頃は骨の成長が盛んで、あごの形や大きさを調整しやすい時期です。このタイミングで骨を正しく整えておくと、第二期治療の難易度を下げられる可能性があります。

また、軽度の歯並びの乱れであれば、第一期のみで終了できるケースもあります。ただし、成長期は体の変化が大きいため、治療後も後戻りを防ぐために歯を固定する保定期間と定期的な経過観察は欠かせません。

第二期の平均期間

第二期治療は永久歯が生え揃う12歳以降に行う仕上げの矯正です。期間の目安は1年半〜2年半ほどで、ワイヤーやマウスピースなどを用いて歯そのものを理想的な位置へ動かしていきます。

第一期で土台がある程度整えられると第二期での歯の移動量が少なくなり、期間を短縮できる可能性があります。反対に、第一期を行わずに第二期からスタートすると治療範囲が広がり、時間がかかることがあります。

第二期の終了後も、動かした歯を安定させるための保定期間が必要です。保定期間は通常、矯正期間と同じくらいの時間がもうけられます。

小児矯正をはじめるタイミング

小児矯正をはじめるタイミング

小児矯正は6〜12歳のうちに開始するのが理想的だといわれています。その理由は、乳歯から永久歯に生え変わる混合歯列期は骨の成長を利用でき、矯正治療の効果が出やすいためです。

歯並びや骨格には個人差があるので、歯科健診で指摘されたり、保護者様が気になったタイミングで受診するのが望ましいでしょう。

ここからは、乳歯列期・混合歯列期・永久歯列期でそれぞれどのような治療を行うかを解説します。

乳歯列期(3〜6歳)

乳歯列期とは、乳歯が生え揃い、永久歯が生えはじめるまでの時期を指します。この時期は将来の歯並びや噛み合わせに影響する口呼吸や指しゃぶり、舌癖などを改善する治療を行います。

これらの悪習慣は歯列に力をかけ続け、出っ歯や受け口、開咬(かいこう)※につながることがあるため、早期の改善が必要です。乳歯列期に噛み合わせのズレが見られるケースでは、成長への影響を考えて早期に介入を検討することもあります。

ただし、乳児はまだ骨格がやわらかく、歯の生え替わりも進んでいくため、大がかりな治療はほとんど行いません。(必要性があるかどうかは歯科医が慎重に判断します)

※前歯が閉じず、上下に隙間ができている状態(オープンバイト)

混合歯列期(6〜12歳)

乳歯と永久歯が混在する混合歯列期は、小児矯正の第一期治療を開始するのに最適なタイミングです。

この時期はあごの成長力が高く、骨格を誘導したり歯列スペースを確保しやすいため、歯並びや噛み合わせの問題を根本から改善しやすいメリットがあります。乳歯列期よりも治療の選択肢が増え、個々の状態に合わせた方法を選択できます。

歯を大きく動かす治療よりも、成長を活かして歯列を広げ、永久歯が並ぶスペースを確保する土台づくりが主な目的です。

永久歯列期(12歳〜)

永久歯がほぼ生え揃う12歳頃以降は、小児矯正の第二期にあたります。あごの成長は次第に落ち着いていくため、第一期のような骨格誘導は難しくなり、歯そのものを動かして仕上げる治療が中心となります。

第二期治療はワイヤー矯正やマウスピース矯正を用いて歯列を整え、見た目と噛み合わせのバランスを整えるのが目的です。

骨格が完成に近づいているため、治療期間は第一期より短い傾向にありますが、歯の移動量が多い場合は第二期のみでも長期間かかることがあります。

小児矯正の期間が長くなるケース

小児矯正の期間が長くなるケース

小児矯正の期間が長くなるケースには次のものがあります。

  • 途中で治療をやめた
  • 後戻りしてしまった
  • 指しゃぶりや舌の癖が治らない
  • 虫歯になった
  • 本人の協力が得られない

それぞれのケースを詳しく解説します。

途中で治療をやめた

小児矯正は治療計画に沿って進めていく必要があり、途中でやめると十分な効果は得られません。通院の間隔があいてしまうと予定通りに歯が動かず、治療期間も長引いてしまいます。

治療を中断するケースは引っ越しや進学、習い事、経済的理由などさまざまです。通院が困難な場合はスケジュールや治療計画の調整もできるため、歯科医に事前相談することをおすすめします。

後戻りしてしまった

矯正装置が外れたまま過ごしたり、調整のタイミングがずれてしまったりすると、動かした歯が元の位置へ戻ってしまうことがあります。

とくに、矯正終了後の保定期間は後戻りが起きやすく、保定装置の使用を怠ると治療のやり直しが必要になるケースもあります。

指しゃぶりや舌の癖が治らない

指しゃぶりや舌を前に押し出す癖は歯に力がかかり、出っ歯や開咬などが再発しやすくなります。

これらの習慣が改善されないまま治療を進めても、根本的な原因が残ったままでは期間が長引き、仕上がりにも影響が出ます。歯科医に相談のうえで、機能訓練や生活習慣の見直しが必要です。

虫歯になった

虫歯や歯肉炎が起こると、まずはその治療を優先します。矯正装置をつけたまま虫歯治療を行うのが難しい場合は、一時的に装置を外さなければなりません

治療を中断すると、当初の計画よりも期間が延びてしまうことがあります。矯正治療を計画通り進めるには、虫歯にならないよう丁寧なブラッシングが必要です。

本人の協力が得られない

小児矯正で用いる装置には、取り外し式で決められた時間に装着しないと効果が得られないものもあります。

痛みや違和感への不安から装着を嫌がったり、生活の中で忘れてしまうことが続くと、治療が進まず期間が長引く原因になります。小児矯正は家族で協力し、保護者様のサポートのもと治療を進めていく姿勢が大切です。

小児矯正の選択肢

小児矯正の選択肢

小児矯正にはさまざまな方法があり、歯の状態に合わせて最適なアプローチを行います。

治療法特徴固定or取り外しメリットデメリット
拡大床成長を利用して少しずつあごを拡大する。取り外し式掃除がしやすい装着初期の違和感
急速拡大法上あごの正中口蓋縫合に固定式の装置を装着し、骨を拡大する。固定式治療期間が短い痛みや違和感が出やすい
緩徐拡大法弱い力でゆっくり時間をかけてあごを拡大する。固定式/取り外し式を選択可後戻りしにくい治療期間が長くなりやすい
バイオネーター下あごの成長を促す。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
プレオルソ口周りの筋力向上や舌癖の改善に効果的。取り外し式痛みや違和感がほとんどない装着しなければ効果がない
リンガルアーチ歯の裏側に金属製のワイヤーを装着して歯を動かす。固定式見た目に影響しない奥歯が虫歯になりやすい
ヘッドギア上あごの成長を抑え、臼歯を後方へ移動させることで出っ歯を改善する。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
フェイシャルマスク額とあごに装置を装着し、上あごの骨格成長を促す。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
インビザライン・ファースト3Dシミュレーションをもとに作成したマウスピースで歯並びや噛み合わせを改善する。取り外し式ほとんど目立たず行動制限も少ない適応症例が限られる

それぞれの治療法を詳しく解説します。

拡大床

プレート状の装置を使い、上あごの幅を広げていく方法です。装置にはネジが組み込まれており、少しずつ回して調整します。

装置は取り外し可能で、清潔を保ちやすいのが特徴です。装着時間は1日8時間以上が目安となりますが、歯の状態次第では14〜18時間と指示されることもあります。

前歯が生える場所が不足しているケースや、あごが小さく永久歯の並ぶスペースがない症例に適しています。あごの成長を利用できる混合歯列期(7〜9歳頃)に行うのが一般的です。

急速拡大法

上あごの中央部分(正中口蓋縫合)に固定式の装置を取り付け、短期間で骨を広げていく方法です。数週間から数ヶ月の短期間で拡大が進められるのが大きな特徴です。

固定式のため強い力がかかり、調整直後は押されるような痛みや圧迫感が出ることがあります。装置に汚れが溜まりやすいので、丁寧なブラッシングが必要です。

緩徐拡大法

あごの成長に合わせて弱い力でゆっくりと上あごを広げていく方法です。治療期間の目安は1〜2年ほどで、後戻りしにくいメリットがあります。

装置は固定式と取り外し式があり、お子様の生活スタイルに合わせて選択できます。

バイオネーター

ワイヤーと樹脂で作られたプレートを装着し、下あごの成長方向をコントロールする矯正装置です。受け口や出っ歯、叢生(そうせい)※の改善に効果的です。

取り外し式のため自由度はありますが、装着しなければ十分な効果が得られません。装着時間や1日10時間以上(主に夜間や就寝時)で、お子様が忘れないよう保護者様の声かけやサポートが必要となります。

※歯が重なり合ってでこぼに生えている状態

プレオルソ

口呼吸や指しゃぶりなど、歯並びに悪影響を与える口腔習慣を改善することを目的としたマウスピース型の装置です。ポリウレタンのやわらかい素材は痛みが少なく、お子様の負担を大きく軽減できます。

口周りの筋肉を鍛えたり、舌の位置を正しく導くことで出っ歯や受け口、開咬を予防・改善します。プレオルソ自体に歯を大きく動かす効果はありません。

推奨される装着時間は日中1時間以上+就寝時です。

リンガルアーチ

奥歯に固定したバンドから歯の裏側に沿ってワイヤーを通す矯正装置です。前歯を動かしたり、奥歯を固定したい時に用いられます。

リンガルアーチは歯の裏側に装着するため、外側からはほとんど見えず見た目の影響がありません。一方で、舌に装置が触れることで発音しづらいと感じることがあります。

バンドを固定する奥歯は汚れが溜まりやすく、虫歯や歯肉炎のリスクが高まるため、家庭での丁寧なブラッシングと定期的なクリーニングが欠かせません。

ヘッドギア

上あごが前方へ成長するのを抑えたり、奥歯を後ろへ動かしたりする際に使用する外付けの矯正装置です。

ヘッドギアはフェイスボウと呼ばれる金属パーツと奥歯の固定装置、頭部に装着するヘッドキャップで構成され、主に出っ歯の治療に用いられます。外観は目立ちますが、使用するのは主に夜間(1日8〜10時間)なので人目を気にせずに済みます。

フェイシャルマスク

ゴムの牽引力を利用して上あごを前方へ誘導する装置です。主に受け口の治療に用いられます。

額とあごに装置を支えるフレームを固定し、下あごの動きに連動して口の中に力を伝えます。推奨される装着時間は1日10時間以上です。

インビザライン(インビザライン・ファースト)

成長期の子ども向けに開発されたマウスピース矯正です。マウスピースは透明で目立ちにくく、激しい接触プレーがなければ運動中も装着が可能です。

治療開始前には3Dシミュレーションを行うので、患者様ご自身で治療前後の予測結果を確認できます。最終イメージや必要なマウスピース枚数、費用の見通しを事前把握できるのも、従来の矯正にはない大きな利点です。

一方で、インビザラインには適応範囲に限りがあり、症例によっては他の装置との併用が必要になります。また、歯と歯の間をわずかに削る処置(IPR)が必要となるケースもあります。

小児矯正で一番つらい時期は?

小児矯正で一番つらい時期は?

お子様が小児矯正をつらいと感じやすいのは、装置をつけはじめた直後や調整後の数日間です。この間は痛みや圧迫感、噛みにくさ、発音の違和感が生じやすいからです。

口の中に装置を装着したり、今までとは生活習慣が変わってしまうことで戸惑うお子様は少なくありません。長期間に及ぶ治療の中で、装置のお手入れや通院が負担に感じることもあるでしょう。

小児矯正は継続が鍵となるため、お子様本人の努力はもちろんのこと家族のサポートも欠かせません。痛みや装置のトラブルなど、困りごとがあれば家族だけで解決しようとせず、歯科医に相談しましょう。

当院では、小さなお子様でも嫌がることのない痛みに配慮した治療を行っております。多くの患者様が無理なく治療を進められておりますので、痛みが不安な方はお気軽に当院までご相談ください。

まとめ

まとめ

小児矯正は、第一期・第二期と段階的に進めていく治療です。個人差がありますが、多くの患者様が2〜5年ほどで治療を完了されています。

歯並びや噛み合わせは見た目だけでなく、体の機能にさまざまな影響を与えます。数年がかりの治療になりますが、お子様の負担を減らしつつ、ご家族のサポートによって乗り越えていくことが大切です。

治療に関して不安がある場合は歯科医に相談し、経過と治療計画を確認しておくと安心です。お子様の成長に合わせた無理のない治療で、健康的な口元を目指しましょう。

この記事の監修者

山之内矯正歯科クリニック 院長山之内 哲治
山之内 哲治

矯正歯科臨床38年以上の経験を持ち、外科矯正と呼吸機能改善を専門としています。口腔外科・形成外科・呼吸器内科など多領域の先生方と連携し、咬み合わせの問題を骨格から見直す必要があるのか、歯列矯正で対応できるのかを慎重に見極めた治療を行っています。

経歴

  • 1984年:岡山大学歯学部附属病院 研究生・医員
  • 1986年:光輝病院勤務、岡山大学歯学部附属病院 助手
  • 1987年:米国ロヨラ大学 Dr.Aobaのもとへ留学
  • 1998年:岡山大学歯学部 退職
  • 2000年:山之内矯正歯科クリニック 開院
  • 2004年:日本矯正歯科学会 優秀発表賞受賞
  • 2011年:日本臨床矯正歯科医会 アンコール賞受賞

小児矯正の第一期治療の重要性。やる必要はある?費用は?

小児矯正の第一期治療の重要性。やる必要はある?費用は?

乳歯から永久歯へと生え替わる混合歯列期に行われる小児矯正は「第一期治療」と呼ばれます。

一期治療は永久歯が生えるスペースをつくる土台づくりの期間であることから「本当に必要があるのか」「二期からでいいのでは?」と思う保護者様も多くいらっしゃいます。

一期治療はお子様の歯並びを整えるために必要なものであり、適切なタイミングで始めることで将来的な治療期間や費用を抑えられる可能性があります。本記事では一期治療の重要性を解説するので、小児矯正を検討中の方はぜひ最後までお読みください。

小児矯正の第一期とは

小児矯正の第一期とは

小児矯正は、お子様の成長段階に合わせて第一期と第二期の2つの段階に分けられます。第一期は乳歯から永久歯へと生え変わる混合歯列期に、第二期は永久歯が生え揃う12歳以降に行われます。

第一期はあごが成長する力を利用し、永久歯が適切な位置に並ぶためのスペースを確保する“土台づくり”の期間です。この時期にあごの幅や噛み合わせ、口呼吸、舌癖などの問題を改善しておくと永久歯列が安定し、第二期治療がスムーズに進められます。

第一期治療ですること

小児矯正の第一期では主に以下の治療を行います。

  • あごの幅を広げる
  • 不正咬合(ふせいこうごう)を改善する
  • 口呼吸・舌癖などの悪習癖を改善する

混合歯列期は骨格の発育がさかんな時期で、成長を利用してあごが広がるように誘導します。歯が並ぶスペースを確保できれば、歯が重なり合ってでこぼに生えてしまう叢生(そうせい)を予防できます。

受け口や出っ歯、噛み合わせが部分的に反対になっている交叉咬合(こうさこうごう)、前歯が閉じず、上下に隙間ができてしまう開咬(かいこう)などの改善にも効果的です。

第一期に土台を整えておくと、永久歯が生え揃った後の治療負担を大きく減らすことができるメリットがあります。

第二期治療ですること

第二期治療は、永久歯が生え揃ったタイミングで行う「仕上げの矯正」です。ワイヤー矯正やマウスピース矯正を使い、歯そのものを理想的な位置へ動かして噛み合わせを整えることが目的です。

歯の位置をミリ単位で調整し、見た目と機能の両面からバランスの良い歯並びを完成させます。叢生や不正咬合が改善した後は、噛み合わせの最終調整を行います。

治療後は後戻りを防ぐためにリテーナー(保定装置)を使用し、歯列が安定するようサポートする期間も必要です。

第一期であごの成長を整えておけば、第二期で抜歯をせずに済んだり、治療期間が短くなる可能性があります。費用負担を軽減できるメリットもあるため、小児矯正では第一期から第二期へと2段階で治療を行うことが推奨されます。

小児矯正の第一期の必要性

小児矯正の第一期の必要性

小児矯正における第一期は、混合歯列期にしか使えない成長力を最大限に活かすことができる期間です。あごの成長を利用することは、歯並びや噛み合わせ、口呼吸、舌癖といった問題に自然なアプローチができることを意味します。

歯並びや噛み合わせの乱れを放置すると、年齢とともに口腔トラブルが増えていきます。いざ矯正を始めようとしても、その問題を先に解決しなければならず、治療期間が通常よりも長くなる可能性があるのです。

第一期治療を行うと、第二期の治療期間を短くできたり、治療の難易度や費用を下げられたりできる可能性もあります。症状や経過次第では、第一期で治療を終えられるお子様もいます。

将来的にかかる時間やお金、お子様の負担を考えると、第一期治療は成長期だからこそ受けられる効果の高いアプローチだといえるでしょう。

小児矯正の第一期で行う治療

小児矯正の第一期で行う治療

第一期治療には、あごの成長を利用する方法から噛み合わせのズレを改善する装置までさまざまな選択肢があります。

治療法特徴固定or取り外しメリットデメリット
拡大床成長を利用して少しずつあごを拡大する。取り外し式掃除がしやすい装着初期の違和感
急速拡大法上あごの左右の骨のつなぎ目に固定式の装置を装着し、骨を拡大する。固定式治療期間が短い痛みや違和感が出やすい
緩徐(かんじょ)拡大法弱い力でゆっくり時間をかけてあごを拡大する。固定式/取り外し式を選択可後戻りしにくい治療期間が長くなりやすい
バイオネーター下あごの成長を促す。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
プレオルソ口周りの筋力向上や舌癖の改善に効果的。取り外し式痛みや違和感がほとんどない装着しなければ効果がない
リンガルアーチ歯の裏側に金属製のワイヤーを装着して歯を動かす。固定式見た目に影響しない奥歯が虫歯になりやすい
ヘッドギア上あごの成長を抑え、臼歯を後方へ移動させることで出っ歯を改善する。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
フェイシャルマスク額とあごに装置を装着し、上あごの骨格成長を促す。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
インビザライン・ファースト3Dシミュレーションをもとに作成したマウスピースで歯並びや噛み合わせを改善する。取り外し式ほとんど目立たず行動制限も少ない適応症例が限られる

※最適な治療法は歯の状態や生活習慣によって異なります

ここからはそれぞれの方法を詳しく解説します。

拡大床

プレート型の装置を装着し、ネジを少しずつ回してあごを広げる方法です。成長期のあごの発育を利用し、歯列の幅を広げることで歯が適切な位置に並ぶためのスペースを確保します。

食事や歯磨きの際に取り外すことができるので衛生面のメリットがあります。前歯が生えるスペースが少ない、あごが小さく永久歯の生える余地がないなどの症例に適応があります。

拡大床は7〜9歳の混合歯列期に行うのが理想です。(対象年齢は5〜12歳頃)

急速拡大法

上あごの骨の継ぎ目に固定式の装置を装着し、骨を拡大する方法です。6〜12歳の混合歯列期のお子様を対象にした治療で、数週間〜数ヶ月と比較的短い期間であごを広げていきます。

装置は固定式で力が強く、調整直後は痛みや圧迫感が出ることがあります。食べかすが溜まりやすいため、念入りな歯磨きが必要です。

緩徐拡大法

弱い力をかけて、ゆっくりとあごを広げていく方法です。治療期間は1〜2年ほどで、6〜12歳の混合歯列期にスタートすることが推奨されます。

急速拡大法のような早さはありませんが、あごの成長スピードに合わせられる分、後戻りしにくいメリットがあります。装置は固定式と取り外し式の選択が可能です。

バイオネーター

ワイヤーとプラスチックで構成されるプレートを装着し、下あごの成長を促す矯正装置です。受け口と出っ歯の改善に効果的で、ネジを調整すると叢生の改善にも役立ちます。

取り外し式のため、装着しない限り効果を発揮できません。夜間や就寝時、1日10時間以上の装着が推奨されているので、お子様はもちろんのこと保護者様の協力も必要です。

プレオルソ

子どもの口腔機能の改善に特化したマウスピース型矯正装置です。やわらかい素材はお子様でも装着しやすく、痛みが少ないメリットがあります。

大人のマウスピース矯正とは異なり、プレオルソは歯に力を加えて動かすものではありません。口周りの筋肉を鍛えたり、歯並びに影響を与える口呼吸や指しゃぶりの改善が主な目的です。

日中1時間以上と就寝時の装着が推奨されます。弾性のあるポリウレタン製で口の中を傷つける心配もありません。

リンガルアーチ

歯の裏側に装着する金属製のワイヤー矯正装置です。奥歯に固定したバンドから歯の内側に沿ってワイヤーを装着します。

混合歯列期において、奥歯を固定したり前歯を動かしたい時に行う治療です。表側からは見えにくい点が大きなメリットです。

構造自体はシンプルですが、固定式の装置が舌に触れるため発音しづらいと感じることがあります。また、固定源となる奥歯(臼歯)は虫歯や歯肉炎のリスクが高くなるため、普段のケアだけでなく歯科医院での定期的なクリーニングが推奨されます。

ヘッドギア

頭部に固定する矯正装置で、上あごの成長を抑え、臼歯を後方へ移動させるために使用します。主に上顎前突(出っ歯)の治療に適しています。

ヘッドギアは、フェイスボウと呼ばれる金属の牽引装置と上あごの大臼歯に固定する装置、頭に被るヘッドキャップで構成されています。

頭部にも装置を装着するため少々目立ちますが、装着時間は夜間が中心(1日8〜10時間)なので外出時の見た目の心配はほとんどないといっていいでしょう。

フェイシャルマスク

受け口(反対咬合)の治療に用いられる装置で、ゴムの力で上あごを前へ引っ張り骨格の成長を誘導します。

額とあごをワイヤーでつないだ装置は、下あごの動きに合わせて口の中を牽引する仕組みです。大がかりな装置ではありますが、装着は夜間が中心(1日8〜10時間程度)となるため日常生活への支障は比較的少なめです。

インビザライン(インビザライン・ファースト)

成長期の子ども向けに設計されたマウスピース型の矯正装置です。透明で目立ちにくいマウスピースを使用するため、注意深く見なければ周囲に気付かれることはありません。

インビザラインによる矯正は治療開始前に3Dシミュレーションを行い、歯の動き方を可視化します。この3Dシミュレーションによって完了までの期間や費用、マウスピースの枚数などを事前に確認できる点が大きなメリットです。

日常生活への影響もほとんどなく、装着したまま運動することもできます。デメリットとしては、適応する症例が限られる点や、歯と歯の間を削らなければいけない可能性がある点があげられます。

小児矯正の第一期治療にかかる費用

小児矯正の第一期治療にかかる費用

小児矯正の第一期治療にかかる費用は使用する装置の種類や治療期間、歯の状態によって異なりますが、目安は30万〜50万円程度です。

一部を除き、小児矯正は自費診療として扱われるため、費用は全額自己負担となります。医療費控除の対象になるケースが多いので、確定申告で負担を軽減できる可能性があります。

第一期治療を終えた後、第二期治療に進む場合の追加費用は40万〜60万円程度です。

また、高額になりやすい小児矯正では、デンタルローンや歯科医院が独自に行う分割払いを利用できることも多いです。当院でも信販会社やクレジットカード会社を通さない分割払いをお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。

関連記事:小児の歯科矯正の費用はどれくらい?補助金や保険、ローンについて

小児矯正の第一期治療の期間

小児矯正の第一期治療の期間

小児矯正の第一期治療では、1〜3年ほどかけて歯並びや噛み合わせを改善していきます。(成長スピードや歯の生え替わりの時期には個人差があるため、治療期間にも幅が出ます)

永久歯が生え揃う12歳頃以降に行う第二期治療は、1年半〜2年半ほどかかるのが一般的です。第一期と第二期を合わせると2〜5年ほどで治療が完了するイメージです。

治療後は保定期間を設けて、リテーナー(保定装置)を装着しながら後戻りを予防します。保定期間は1〜3年程度が目安です。

小児矯正が第一期で終わることはある?

小児矯正が第一期で終わることはある?

小児矯正は第一期と第二期の2段階で行うのが一般的ですが、症状によっては第一期のみで治療が完了するケースもあります。一期で終了する場合の判断材料となるものは次の通りです。

  • セファロ分析※1
  • 成長予測
  • 口腔習癖(舌癖・口呼吸)の残存
  • MFT※2の到達度など

軽度〜中等度の叢生や部分的な交叉咬合(こうさこうごう:上下の歯が正常に噛み合わない状態)などは、第一期治療でスペースが確保されれば第二期に進まずに治療を終えられることがあります。

もっとも、子どもの口腔内は歯の生え替わりやあごの成長が続くため、第一期で終了しても保定や定期的な経過観察が欠かせません。成長によって新たに問題が生じる可能性もあるため、慎重なフォローが必要になります。

小児矯正はお子様や保護者様の意向、引っ越し・転勤、経済的な理由などで中断せざるを得ないこともあります。しかし、将来的なことを考えると第二期治療まで進み、計画通り終えられるのが理想的です。

※1…横から撮影した顔とあごのレントゲンを使って歯並びのバランスを詳しく調べる検査

※2…口周りの筋肉を鍛えるトレーニング

関連記事:小児矯正を第1期でやめるのは問題ない?

まとめ

まとめ

小児矯正の第一期は、混合歯列期の成長力を活かして永久歯が適切な位置に並ぶための土台をつくる大切な治療です。歯並びや噛み合わせのズレ、口呼吸や舌癖などの問題を早期に改善できるだけでなく、第二期治療の負担を大きく減らせる可能性があります。

第一期だけで治療が完了するケースもありますが、子どもは成長による変化が続くため、終了後も定期的なフォローは欠かせません。

小児矯正の最適なタイミングと治療方法は、患者様一人ひとりで異なります。歯科医院で現状を確認し、お子様と保護者様と相談しながら無理のない治療計画を立てていくことが安心につながります。

山之内矯正歯科クリニックでは、お子様の歯並びに関するお悩みを解消するために丁寧なカウンセリングを心がけております。小児矯正を検討中の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

山之内矯正歯科クリニック 院長山之内 哲治
山之内 哲治

矯正歯科臨床38年以上の経験を持ち、外科矯正と呼吸機能改善を専門としています。口腔外科・形成外科・呼吸器内科など多領域の先生方と連携し、咬み合わせの問題を骨格から見直す必要があるのか、歯列矯正で対応できるのかを慎重に見極めた治療を行っています。

経歴

  • 1984年:岡山大学歯学部附属病院 研究生・医員
  • 1986年:光輝病院勤務、岡山大学歯学部附属病院 助手
  • 1987年:米国ロヨラ大学 Dr.Aobaのもとへ留学
  • 1998年:岡山大学歯学部 退職
  • 2000年:山之内矯正歯科クリニック 開院
  • 2004年:日本矯正歯科学会 優秀発表賞受賞
  • 2011年:日本臨床矯正歯科医会 アンコール賞受賞