2025/12/24

「鼻中隔湾曲症って手術したほうがいいの?」
「症状の目安や、手術以外の治療法もあれば知りたい」
このように不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
鼻中隔湾曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)は鼻づまりやいびき、頭痛など、日常生活に影響するさまざまな症状を引き起こすことがあります。
しかし、すべてのケースで手術が必要になるわけではありません。症状の程度や原因によって選ぶべき治療法が異なります。
この記事では、鼻中隔湾曲症の手術すべき目安や治療の概要、外科的治療なしで改善できるケースをわかりやすく解説します。
読めば、自分の症状に合わせてどの治療法を選べばよいか判断しやすくなるはずです。

鼻中隔湾曲症とは、鼻の内部で左右を仕切る壁である鼻中隔が曲がったり、片側に偏ってしまう状態をいいます。
鼻中隔が大きく曲がると、片側だけ呼吸しづらくなったり、口呼吸やいびきが増えたりと、日常生活で不快感が出るようになります。
日本人はもともと鼻腔が狭いため、わずかな曲がりでも鼻づまりが起こりやすい傾向があります。軽症では自覚しにくいものの、進行すると睡眠の質の低下や頭痛につながることもあります。
原因として多いのは、成長の過程で骨と軟骨の発育バランスがずれることや、外傷によって鼻が変形することです。とくに成長期は軟骨が柔らかく影響を受けやすいため、軽い衝撃でも鼻中隔が曲がることがあります。

鼻中隔の曲がりによって日常生活に支障が出ている場合、手術が必要になることがあります。手術を検討すべき症状の目安は以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
片側の鼻だけ通りが悪い、風邪でもないのに詰まった状態が続く場合は、鼻の内部に構造的な狭窄(きょうさく:通り道がせまくなること)がある可能性があります。
とくに、季節や体調に関係なく鼻づまりが慢性的に続くときは、鼻中隔の曲がりが呼吸の妨げになっている可能性が考えられます。
薬を使っても改善しない鼻づまりが長く続く場合は、鼻中隔矯正術の適応となることが多いです。生活に支障を感じる場合は、早めに耳鼻科で状態を確認しましょう。
鼻呼吸がしづらい状態が続くと、口呼吸に頼るようになり、いびきや睡眠時無呼吸が起こりやすくなります。
とくに鼻中隔の曲がりが強い場合は、就寝中の空気の通りが悪くなり、睡眠の質が悪化しやすくなります。手術によって鼻の通りが改善されると、空気が流れやすくなるため、いびきの軽減や酸素供給の安定が期待できます。
その結果、朝のだるさや日中の眠気が減り、全身のコンディションが整いやすくなります。
鼻づまりが続くと空気の流れが悪くなり、十分な酸素を取り込めなくなるため、慢性的な頭痛や倦怠感が出やすくなります。仕事や勉強に集中できない、すぐ疲れてしまうといった不調が積み重なり、生活の質が落ちてしまうことも少なくありません。
また、呼吸がしづらい状態が長引くと口呼吸が習慣化し、口腔内の乾燥が進みます。乾燥は細菌の繁殖を招き、むし歯や歯周病のリスクが高まるほか、舌の位置が低くなることで歯列不正の原因にもなります。
通気が悪い状態が続くと、鼻腔内の粘膜が腫れやすくなり、炎症や細菌感染が慢性化しやすくなります。その結果、季節に関係なく鼻炎や副鼻腔炎を繰り返すケースも珍しくありません。
とくに鼻中隔の曲がりが強い場合は、空気や排泄物の通り道が狭くなるため、炎症が治りづらい傾向があります。
手術で通気と排膿の経路が改善されると、炎症が起こりにくくなり、再発予防につながります。
鼻中隔が大きくずれている場合、呼吸が片側に偏り、頬や顎の筋肉の使い方にも影響が及ぶことがあります。
とくに片側だけ力が入りやすい状態が続くと、噛む動作に偏りが生じ、顔の左右差につながりやすくなります。
鼻中隔の位置が整うと空気の流れが安定し、筋肉の働きにも偏りが出にくくなります。
ただし、鼻中隔矯正術は美容目的の手術ではないため、大きく見た目が変わることはありません。結果として、咬合や表情のバランスが緩やかに整う可能性はありますが、あくまで機能改善に伴う変化といえます。

鼻中隔の曲がりがあっても、必ずしも手術が必要になるわけではありません。状況によっては、生活の工夫や保存的治療だけで十分改善が見込めるケースもあります。
手術をしなくても改善できるケースは以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
鼻中隔が少し曲がっている程度であれば、とくに治療を行わなくても問題がないケースが多いです。
実際、軽度の湾曲は多くの人に見られるもので、呼吸がしっかり確保されているなら経過観察で十分といえます。
日常生活で息苦しさを感じず、睡眠や運動にも支障がない場合は、手術を選ぶ必要はほとんどありません。
むしろ、症状のない状態で手術を受けてもメリットは少ないため、まずは自覚症状の有無を基準に判断しましょう。
鼻づまりの原因が鼻中隔の曲がりではなく、粘膜の腫れによって起こることもよくあります。
アレルギー性鼻炎や風邪による鼻づまりは一時的で、炎症が治まると自然に改善する場合が多いです。このようなケースでは、薬物療法や環境改善に取り組むことで十分に症状をコントロールできます。
加湿器の利用や空気清浄機の活用、ハウスダスト対策なども効果があり、手術へ進む前に試す価値があります。
鼻中隔の湾曲が軽度であれば、保存的治療で症状を安定させることができます。
抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイドで炎症を抑え、生理食塩水による鼻洗浄で通気が改善しやすくなります。
症状が落ち着いているなら、必ずしも手術を選択する必要はなく、まずは保存的に経過をみる方が現実的です。

鼻中隔矯正術は、曲がってしまった鼻中隔の骨や軟骨を適切な位置へ整え、空気の通り道を確保するための手術です。
湾曲の程度が強く、薬では改善しない鼻づまりが続く場合に選択されることが多いです。呼吸機能を根本から改善できる点が特徴といえます。
手術ではまず鼻の内側を切開し、粘膜を丁寧にめくりながら曲がった骨や軟骨を露出させます。その後、変形した部分を部分的に切除したり整復したりして、中央へ再配置します。
作業はすべて鼻腔内で行われるため、外から傷跡が見える心配がありません。
麻酔は全身麻酔または局所麻酔を使用します。入院期間は日帰りから1泊2日程度になるのが一般的です。

鼻中隔矯正術には多くのメリットがある一方で、治療を検討するうえで知っておきたいデメリットも存在します。
鼻中隔湾曲症手術のデメリットは以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
鼻中隔矯正術の術後は、粘膜が手術の刺激に反応して腫れたり、少量の出血が続いたりする場合があります。その影響で一時的に鼻が詰まりやすくなりますが、これは自然な治癒過程としてよくみられる反応です。
多くのケースでは数日〜1週間ほどで症状が落ち着き、日常生活への支障も徐々に減っていきます。不安を感じることもありますが、長期的な合併症はまれで、重い後遺症につながるリスクは非常に低いとされています。
術後の経過を安定させるためには、処方された薬の使用や、鼻を強くかまないなどの注意点を守ることが大切です。
鼻中隔矯正術は高い成功率を持つ手術ですが、ごく稀に矯正した鼻中隔が再びわずかに曲がることがあります。これは「リラプス」と呼ばれる現象で、術後の軟骨が変形したり、傷跡による組織の収縮が起きたりすることで生じることが多いです。
ほかにも、周囲の筋肉の張力が影響して骨や軟骨が元の方向へ引き寄せられるように戻ることがあります。
とくに湾曲が大きかった症例ではリラプスの可能性が高まり、外傷やアレルギー性炎症が再発した場合にも起こりやすいとされています。
とはいえ、正確な手術手技と適切な術後管理が行われれば、リラプスのリスクを抑えることが可能です。定期的な診察を受けながら、回復状況に合わせてケアを続けることが重要です。
鼻中隔矯正術は、保険が適用されるとはいえ、一定の費用と回復期間が必要です。費用の目安は、保険適用(3割負担)の場合でおよそ3〜10万円です。
内訳には、麻酔や手術処置、入院費などが含まれます。多くのケースでは日帰り手術が可能ですが、状態によっては1〜2日程度の入院や安静が求められることもあります。
手術後は数日間、鼻づまりや軽い腫れが続く場合が多く、完全に回復するまでに時間がかかることも少なくありません。
費用面とダウンタイムを考慮して、スケジュールに余裕をもって手術を検討することが大切です。

鼻中隔湾曲症は、鼻の内部の構造が原因で起こる鼻づまりやいびきなど、生活の質に影響しやすい疾患です。しかし、必ずしも手術が必要になるわけではなく、症状の強さや日常生活への支障の程度によって治療の選択肢は変わります。
軽度であれば薬物療法や鼻洗浄などの保存的治療で十分改善が期待できます。慢性的な鼻づまりや睡眠の質の低下が続く場合には、鼻中隔矯正術で根本的な改善を目指しましょう。
大切なのは、現在の症状がどの程度生活に影響しているかを把握し、適切な治療方法を選ぶことです。
山之内矯正歯科クリニックでは、一般的な歯科矯正に加え、鼻中隔湾曲症の治療にも対応しています。必要に応じて各分野の医師と連携し、「咬み合わせ・骨格・呼吸機能」の三方向を考慮した治療を行っています。
お悩みの方はお気軽にご相談ください。
2025/12/24

「鼻中隔湾曲症があると顔の見た目に影響するの?」
「鼻筋が曲がって見えるのは鼻中隔のせい?」
このように不安に感じる方は少なくありません。
鼻中隔の曲がりは多くの場合は外見に影響しませんが、湾曲が強い場合は、鼻筋のずれや顔の左右差などが現れることがあります。
この記事では、鼻中隔湾曲症で見た目に影響が出るケースの特徴や、鼻中隔湾曲症の治療法についてわかりやすく解説します。

鼻中隔は、鼻の内部を左右に仕切る薄い壁で、前方は軟骨、後方は骨で構成されています。この鼻中隔が左右どちらかに曲がったり、ねじれたりした状態を鼻中隔湾曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)と呼びます。
湾曲自体は多くの人にみられるもので、軽度であれば自覚症状がないことも少なくありません。しかし、湾曲が大きくなると片側の鼻腔が狭くなり、空気の流れが阻害されることで鼻づまりや息苦しさが生じます。
その結果、就寝時のいびきや口呼吸、集中力の低下など、生活に支障が出ることもあります。
耳鼻科では鼻づまりの原因疾患として認識されており、症状が強い場合は薬物療法や手術などの治療対象となります。

鼻中隔湾曲症そのものが、顔の見た目に大きな変化を直接引き起こすことは多くありません。多くの場合は内側の変形にとどまり、外見上ははっきりとした変化が分かりにくいまま過ごしている人がほとんどです。
ただし、鼻中隔の湾曲が強い場合や、鼻骨・鼻内の軟骨の形態と関連した変形がある場合には、鼻筋や鼻先の向きが左右どちらかに偏って見えることがあります。
また、鼻づまりによって慢性的な口呼吸が続くと、口唇の閉じにくさや下顎の位置変化などと関連し、口元の突出や下顔面の印象に変化が生じる可能性があります。
見た目の変化の有無や程度には個人差が大きく、必ずしも誰にでも起こるわけではありません。

鼻中隔の湾曲は内部の症状だけでなく、外見にも影響することがあります。主な見た目の変化は次のとおりです。
それぞれの特徴について詳しく解説します。
鼻中隔が強く湾曲している場合、外見にも影響が及び、鼻筋がS字状に見えたり鼻先が片側へ寄って見えることがあります。
正面から鏡を見ると、鼻の中心が目や唇のラインと一致せず、全体がわずかに傾いて見えるのが特徴です。
とくに、鼻骨や軟骨の変形を伴うケースでは、内部のずれがそのまま外側のシルエットに反映されやすく、鼻が曲がっている印象を与えることがあります。
鼻の中心にある鼻中隔がずれると、顔全体のバランスにもわずかな影響が及ぶことがあります。
片側の鼻づまりが続くと無意識に呼吸が片側へ偏り、口呼吸の癖がつきやすくなるため、頬の筋肉や下顎の使い方にも左右差が生じることがあります。
ただし、笑ったときの表情の左右差や片側だけフェイスラインが下がって見えるといった非対称の印象は、鼻中隔湾曲症だけでなく、筋肉の使い方や骨格など複数の要因が関わると考えられています。
口呼吸が続くと、唇や顎まわりの筋肉(口輪筋・オトガイ筋など)が常に緩んだ状態になります。その結果、口が自然と開きがちになり、顔下半分の表情筋の働きが弱くなることで形態にも影響が出やすくなります。
口呼吸が慢性化すると、「間延びした顔つき」「下膨れに見える」「顎が後退して見える」など、顔全体がゆるんだ印象になることも少なくありません。

鼻中隔湾曲症による鼻づまりが長期間続き、鼻呼吸がしづらい状態になると、口呼吸や舌位の低下と関連して歯並びや咬み合わせに影響が出る可能性があります。
鼻呼吸がしづらくなると口呼吸へ移行し、舌の位置が低下して上顎の発育に影響することが指摘されています。
具体的には、舌が上顎を広げる力が弱まることで横幅が不足し、歯列が狭くなるため叢生(歯並びがガタガタになる)が起こりやすくなります。
さらに、口呼吸が続くと開咬や下顎前突などの不正咬合(ふせいこうごう)につながるケースもあります。

鼻中隔湾曲症は、生まれつきの骨格の特徴だけでなく、成長期の外傷や炎症など、複数の要因が関係して起こります。主な原因は次のとおりです。
それぞれの原因について詳しく解説します。
鼻中隔湾曲症は、先天的な顔面骨格の左右差によって生じることがあります。
生まれつき上顎骨や鼻骨の発育にわずかな差があると、鼻中隔が中央から外れた位置で成長し、結果として左右どちらかに偏った構造になるためです。
とくに胎児期から成長期にかけて骨の発育スピードが均一でない場合、鼻中隔が一方向へ押されるように変位し、曲がりとして現れやすくなります。
成長期の外傷は、鼻中隔湾曲症の原因としてよくみられます。
成長期は鼻骨や軟骨がまだやわらかく、衝撃で簡単に変形やずれが生じやすいからです。
鼻を強くぶつける、転倒する、ボールが当たるといった軽い外傷でも、鼻中隔が曲がったり偏位したりすることがあります。
外傷後に適切な整復や治療を行わないまま成長すると、その位置で骨が固定され、鼻筋の左右差や鼻中隔湾曲症として残ることがあります。
また、外見上は大きな腫れや変形がなくても、内部で鼻中隔だけがずれているケースも少なくありません。こうした場合、鼻づまりや片側呼吸のしづらさなどの症状が成長とともに徐々に現れます。
鼻中隔湾曲症は、生まれつきの骨格の特徴や外傷などに加え、慢性的な炎症が関与して症状が目立ちやすくなることがあります。
片側の粘膜が長期間腫れると鼻中隔への圧力が偏り、反対側へ押される形で徐々に変形しやすくなるためです。
とくにアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎の患者に多くみられ、片側だけ鼻づまりが続く状態が鼻中隔の偏位を助長します。
また、鼻呼吸が困難になることで口呼吸が習慣化し、舌の位置が下がって上顎の発育が妨げられ、歯列不正につながることもあります。

鼻中隔が曲がると、左右の鼻腔の通気が不均一になり、空気の流れが偏るため日常生活にさまざまな不調が現れます。
呼吸がしづらくなることで、睡眠や日中のパフォーマンスに影響が及ぶことがあり、場合によっては姿勢や顔のバランスの乱れの一因となることもあります。
主な症状は次のとおりです。
症状が長引くときは、早めに耳鼻科へ相談しましょう。

鼻中隔湾曲症の治療は、症状の程度や原因に応じて大きく2つに分かれます。
それぞれについて詳しく解説します。
保存的治療は、鼻の構造そのものを変えず、炎症や鼻づまりを和らげることを目的とした方法です。
軽度の湾曲で症状が強くない場合や、アレルギー性鼻炎を併発しているケースで効果が期待できます。
主な治療内容・対処法は以下のとおりです。
| 治療内容 | 対処法 |
|---|---|
| 薬物療法 | 抗ヒスタミン薬、点鼻ステロイド、去痰薬※などを用いて炎症を抑える |
| 物理療法 | 鼻洗浄や生理食塩水スプレーで粘膜の清潔を保ち、通気を改善する |
| 環境改善 | 加湿器・空気清浄機の使用、寝具や姿勢の見直しなどで鼻への刺激を減らす |
| 行動指導 | マウステープや呼吸訓練を取り入れ、鼻呼吸を促す |
※去痰薬(きょたんやく):痰を出しやすくする薬
保存的治療はあくまで症状を和らげるための対症療法ですが、炎症を抑えたり鼻呼吸をしやすくしたりすることで、日常生活の快適さを取り戻すことが期待できます。
鼻中隔矯正術は、曲がった鼻中隔の骨や軟骨を整えて空気の通りを改善する手術です。
外科的に修正することで左右の鼻腔の通気バランスが整い、鼻呼吸がしやすくなります。保存的治療で改善しづらい中〜重度の鼻づまりに対して行われることが多く、根本的な治療方法として位置づけられています。
手術では粘膜を丁寧に剥離し、曲がった骨や軟骨を削ったり整えたりしながら適切な位置へ再配置し、安定させます。施術は多くの場合、鼻の中からアプローチするため外から傷は見えません。

鼻中隔矯正術は、あくまで鼻呼吸を改善することが目的であり、外見を大きく変えるための手術ではありません。
手術では鼻の内部構造を整えるだけで、皮膚や鼻骨の形には直接触れないため、外観が大きく変化することはほとんどありません。
強いて言えば、鼻中隔の位置が整うことで、内部から鼻筋の通りが自然にまっすぐ見えるようになるケースや、左右のバランスがわずかに改善するケースはあります。
しかし、見た目の変化はあくまで副次的な効果であり、見た目の改善を目的とする場合は別の施術が必要になることが多いです。

鼻中隔湾曲症を根本から改善するには、耳鼻科での呼吸機能の回復と、矯正歯科での咬合調整を併用する方法が効果的です。
呼吸と咬合は密接に関係しており、どちらか一方だけの治療では長期的な安定が得られにくいからです。
たとえば、鼻呼吸が確立していない状態で矯正を行うと、舌の位置が低いまま残り、口呼吸の癖も続きやすく、歯列が後戻りしやすくなります。
また、矯正で上顎を広げても、鼻中隔の湾曲が強い場合は呼吸が改善されにくいです。
耳鼻科治療と矯正治療を組み合わせることで、鼻呼吸がしやすくなり、いびきや口呼吸が軽減しやすくなります。
山之内矯正歯科クリニックでは、一般的な歯科矯正に加え、鼻中隔湾曲の治療にも対応しています。必要に応じて各分野の医師と連携し、「咬み合わせ・骨格・呼吸機能」の三方向を考慮した治療を行っています。

鼻中隔湾曲症は、基本的に自然に治ることはありません。
軽度の湾曲であれば、成長とともに症状が目立たなくなるケースもありますが、内部の構造そのものが元に戻るわけではないからです。
鼻中隔は骨と軟骨でできているため、一度曲がったり変形したりすると、成長や自然治癒によって形が大きく変わることはほとんどありません。
鼻中隔湾曲症があっても、矯正治療自体は問題なく行うことができます。
しかし、鼻呼吸がしにくい状態が続いていると、口呼吸の癖が残りやすく、舌の位置が下がることで上顎が狭くなるなどの影響が出ることがあります。
その結果、せっかく整えた歯列が再び乱れたり、治療後の安定性が低くなったりするリスクが生じます。
長期的に安定した仕上がりを目指すためには、呼吸状態の改善と矯正治療を並行して進めることが大切です。
矯正治療によって呼吸がしやすくなるケースはありますが、鼻づまりを根本的に改善することは難しいです。
鼻中隔の湾曲や粘膜の腫れなどが鼻づまりの原因となっている場合、歯列矯正では直接的に治すことができません。
とくに鼻中隔が大きく曲がっているケースでは、矯正治療だけでは十分な改善が得られず、耳鼻科での治療も併用する必要があります。
鼻中隔湾曲症は、多くの場合は内側の変形にとどまります。しかし、湾曲が強い場合や口呼吸が続く場合には、鼻筋のずれや顔の左右差など見た目に影響が出ることがあります。
鼻づまりやいびきは、歯並び・咬み合わせの乱れにつながることもあるため、早めの対策が大切です。
治療は薬や鼻洗浄などの保存的治療に加え、必要に応じて鼻中隔矯正術が検討されます。
呼吸状態や見た目の悩みがある場合は、耳鼻科や矯正歯科に相談し、自分に合った治療法を選びましょう。
2025/12/24

あごの成長が活発な小児期は、歯科矯正を開始するのに絶好のタイミングです。歯並びは見た目だけでなく咀嚼や発音にも影響を与えるため、適切な時期に歯科矯正を行うことが推奨されます。
一方で、お子様の歯科矯正を検討中の保護者様の中には「費用が高い」「支払いに不安がある」と感じる方も多いです。お金も時間もかかる治療だからこそ、費用面での不安は早めに解消しておきたいですよね。
本記事では、小児の歯科矯正の費用全般について詳しく解説します。保険適用の条件やローンについても説明するので、小児矯正を検討中の方はぜひ参考にしてください。

小児の矯正治療は、歯やあごの成長段階に応じて「1期治療」と「2期治療」に分けられます。それぞれ治療内容と費用相場が異なるため、1期治療と2期治療に分けて解説します。
1期治療は乳歯と永久歯が混在する混合歯列期(6〜10歳前後)に行われるもので、主にあごの成長や歯並びの土台を整えることを目的とします。
将来の歯並びを良くするための準備期間であり、歯を無理に動かす治療は行いません。費用相場は30万〜50万円程度で、具体的な治療内容は次の通りです。
▼1期治療の内容
2期治療は永久歯がほぼ生え揃う12歳頃から行われます。1期治療で整えたあごの位置や歯列の土台をもとに、歯そのものの位置を動かして噛み合わせを完成させます。
費用は1期から継続して行うケースで40万〜60万円程度、2期から開始するケースは50万〜120万円程度が目安で、治療内容は成人とほぼ同じです。
▼2期治療の内容

原則として、小児矯正は自由診療となり、費用は患者様の自己負担となります。ただし、特定の条件を満たす場合には保険が適用されます。
▼保険が適用されるケース
これらに該当する場合、厚生労働省が指定した医療機関で治療を受けることを条件に保険診療として認められます。指定施設は各地域の厚生局サイトで確認できます。
▼用語説明

小児の歯科矯正で保険が適用される疾患の一例をご紹介します。(本記事でご紹介するもの以外は日本矯正歯科学会のページをご確認ください)
唇や上あごに先天的な裂け目がある疾患です。咀嚼(そしゃく)や発音、あごの発育に影響を及ぼすことから、年齢に合わせて段階的な外科手術と歯科矯正を行います。
形成外科や歯科口腔外科などが連携して総合的な治療を行う必要があり、歯科矯正の開始時期は発育の程度や歯の状態によって判断されます。
口唇裂(こうしんれつ)・口蓋裂(こうがいれつ)・唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)は保険診療の対象となり、自立支援費用(育成医療)によって医療費の自己負担が1割に軽減されます。※世帯所得に応じて負担上限あり
公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会「口唇(こうしん)・口蓋裂(こうがいれつ)の矯正歯科治療は いつから始めるのがよいですか?」
生まれつき下あごが小さい、または顔面骨の発達が不十分である疾患によって小児矯正が必要となる場合も保険適用となります。代表的な疾患には、ピエール・ロバン症候群やトリーチャー・コリンズ症候群などがあります。
これらの疾患は、成長に合わせて段階的な治療を行うことが一般的です。小児矯正を行うタイミングは成長期以降が多く、必要に応じて顎骨延長術(専用の器具を使い、あごの骨をゆっくりと伸ばしていく治療)や顎変形症手術(上下のあごの位置や形のズレを整え、噛み合わせと顔のバランスを改善するための手術)などの外科的治療を組み合わせて咀嚼や発音、呼吸の改善を図ります。
21番染色体の異常によって起こる先天性疾患で、筋緊張の低下や運動発達の遅れ、心疾患、消化器系の異常などさまざまな合併症を伴うことがあります。
あごの発達がゆっくりで歯がなかなか生えてこず、歯並びや噛み合わせが悪くなりやすいのが特徴です。特に、上あごの発育が不十分なために下あごが前に出る反対咬合(いわゆる受け口)が多く見られます。
歯科的な治療としては、口腔機能訓練や口呼吸・舌癖(ぜつへき)の改善など機能面のサポートを行い、必要に応じてあごの拡大装置や咬合誘導装置を使用したり、永久歯が生え揃った後はブラケット矯正やマウスピース矯正を行う場合もあります。
上あごの成長が不足している、または下あごが過剰に発達していることで起こる骨格的な咬合異常は保険適用での歯科矯正が可能です。
軽度の症例では、上あごに力をかけて前方に成長させる装置や顎間(がっかん)ゴムを使ってあごの成長を促します。骨格のズレが大きい、または成人に近い年齢では顎変形症手術で骨格そのものを整える必要があります。

小児矯正には国の一律補助はありませんが、一部で先天性疾患や医療的ケア児を対象に治療費を助成する制度を設けている自治体があるようです。
口唇裂・口蓋裂などの治療では育成医療の対象になる場合があり、自己負担が軽減されるケースもあります。近年は子どもの医療費助成に矯正治療を含める例も見られます。
市区町村の公式サイトや福祉窓口では対象条件や申請書類を案内してもらえるので、詳細は自治体の最新情報を確認してみてください。

医療費控除は、1年間に支払った医療費の合計が10万円または所得の5%を超えた場合に超えた分を所得から差し引くことができる制度です。
小児矯正でも、噛み合わせや発音の改善などの機能回復を目的とした治療であれば控除対象になります。※見た目を良くするだけの美容目的の矯正は対象外
▼小児矯正で医療費控除の対象となる費用
| 矯正治療費 | 診断料・装置代・調整料・保定装置費など |
|---|---|
| 精密検査費用 | レントゲン撮影・歯型模型の作成など |
| 交通費 | 通院時にかかった交通費(公共交通機関の運賃)※ |
| 医薬品費 | 医師が処方した薬代 |
※タクシー代は原則除外
医療費控除を受けるには、確定申告で「医療費控除の明細書」の提出が必要です。クレジットカード払いやデンタルローン利用分も控除対象となります。(分割払いは支払った年の金額のみが医療費控除の対象になります)

小児矯正は数十万〜百万円単位の費用がかかるため、歯科医院ではデンタルローンや分割払いに対応していることが多いです。
デンタルローンは信販会社を通じて借入を行い、治療費を分割で支払う制度です。返済回数の選択肢が幅広く、月々の返済負担を軽減できるメリットがあります。(分割回数や金利は歯科医院や信販会社によって異なります)
歯科医院の中には、院内で独自の分割プランを設けているところもあります。院内分割は信販会社を介さないため手続きが簡単で、金利や手数料がかからないことが多いです。
デンタルローンよりも分割回数は少ないですが、契約時に半額を支払い、残りを毎月分割で支払うなど短期的な支払いが可能な方に向いています。
デンタルローンや分割払いを希望する場合、中途解約や返金対応のルールを事前に確認しておくことが大切です。小児矯正は治療が長くなる傾向があるので、費用や支払い方法についての不安はしっかりと解消しておきましょう。
当院では、信販会社やクレジットカード会社を通さない分割払いをお受けしております。分割回数やお手続きについてはお気軽にお問い合わせください。

小児矯正の費用について、保護者様から多く寄せられるご質問をまとめました。
受け口(反対咬合)の小児矯正の費用相場は20万〜40万円程度です。あごの成長をコントロールする1期治療が中心となり、使用する装置や治療期間によって差があります。
重度の症例で2期治療が必要となる場合は60万〜100万円を超えることもあります。
受け口には骨格的要因によるものと歯の生え方が影響するものの2タイプあり、治療の難易度は骨格的要因によるものの方が高いです。その分費用や時間を要する可能性もあるため、早めの受診をおすすめします。
1装置あたりの費用は10万〜30万円前後が目安で、あごの成長を活かせる6〜10歳頃に行うのが理想的です。
拡大装置はあごの骨をゆっくりと広げて歯列の幅を整える治療方法で、永久歯がきれいに並ぶスペースを確保するために使用します。主に上あごが狭いお子様に有効です。
拡大装置を用いた治療は、半年〜1年ほどかけてネジを回しあごの骨を少しずつ拡大していきます。必要に応じて本格的なワイヤー矯正やマウスピース矯正へ移行することもあり、そのようなケースでは追加で費用がかかります。
近年は子ども専用のインビザライン・ファースト(Invisalign First)が登場し、6〜10歳の混合歯列期からマウスピース矯正が可能になりました。費用は40万〜70万円程度が相場です。
インビザライン・ファーストでの小児矯正では、透明なマウスピースを段階的に交換しながら歯並びを整えていきます。通院回数が少なく、見た目も自然で痛みや違和感が少ないといわれています。
インビザライン・ファーストでの注意点は、マウスピースの装着時間が治療効果を左右することです。マウスピースは1日20時間以上の装着が必要であり、お子様の協力と保護者様の見守りが欠かせません。
取り外しができる分、つけ忘れや紛失の心配もあるため、親子での取り組みが必要です。

小児の歯科矯正は成長期だからこそできる治療です。費用は1期治療と2期治療で異なりますが、早期にはじめることで成人矯正よりも費用を抑えられる可能性があります。
お金と時間がかかる治療ですが、デンタルローンや分割払い、医療費控除など、負担軽減につながる方法もあります。「子どもの歯並びが気になる」「小児矯正を検討したい」という保護者様は、歯科医院へ相談してみてはいかがでしょうか。
山之内矯正歯科クリニックでは、患者様のお悩みを解消するために丁寧なカウンセリングを心がけております。小児矯正にも対応しておりますので、お子様の歯並びや噛み合わせでお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
2025/12/24

「顎が長く見えるのを短くしたい」
「下顔面の間延びをスッキリさせる方法を知りたい」
このように悩んでいませんか?
中抜き法(ダブルカット法)は、下顔面を物理的に短く整えられる形成手術です。プロテーゼを使わず骨そのものを調整するため、仕上がりが自然で後戻りが少ない点が大きな特徴です。
この記事では、中抜きオトガイ形成の手術方法や得られる効果、注意すべきリスクについてわかりやすく解説します。
読めば、「どんな人に向いている手術なのか」「自分の悩みに合う治療かどうか」を判断しやすくなるはずです。

中抜き法(ダブルカット法)とは、顎先(オトガイ)の骨を水平方向に2ヶ所切り、その間の骨を取り除いて短く再固定する手術方法です。顎の骨を直接切除して調整するため、顎の長さを物理的に短縮することができます。
この方法は、「顎が長く見える」「下顔面が間延びしている」と感じる人に適しており、顔全体の縦のバランスを整える効果があります。プロテーゼを使用せずに骨を移動させるため、仕上がりが自然で後戻りが少ないのが特徴です。
また、フェイスラインや横顔(Eライン)のバランスを改善する目的にも有効で、下顎の突出感を抑えつつ、より調和の取れた顔立ちを目指すことができます。自然な印象で下顔面を短く整えたい方に選ばれる形成外科的手法です。

オトガイ形成には、「中抜き法」のほかにも、顎を前方に出して輪郭を整える「前方移動法」や、シリコンなどの人工物を挿入して形を整える「プロテーゼ法」など、いくつかの方法があります。
| 手術法 | 主な目的 | 概要 |
|---|---|---|
| 中抜き法(ダブルカット法) | 顎を短く・下顔面をすっきり見せる | 顎先の骨を2ヶ所で切り、間の骨を除去して短く固定 |
| 前方移動法 | 顎を前に出す・後退顎を改善する | 顎先の骨を切り、前方に移動して固定 |
| プロテーゼ法 | 顎を出す・形を整える | シリコンなどを挿入して輪郭を形成 |
中抜き法は、顎先の骨を実際に短くして調整するため、下顔面をすっきり見せたい人や顎の長さを改善したい人に適しています。骨格そのものを調整するため、プロテーゼ法に比べて後戻りが少なく、より自然な輪郭を再現できる点が特徴です。
ただし、骨を切る外科的手術であることから、プロテーゼ法よりも腫れやダウンタイムが長くなる傾向があります。仕上がりの自然さと回復期間のバランスを考慮し、自分の目的や希望に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。

中抜きオトガイ形成では、顎先の骨を短くして再固定することで、下顔面の長さを整え、顔全体のバランスを自然にすっきりと見せる効果があります。顎が長く見える、下半分が間延びして見えるといった悩みを根本的に改善できます。
顎の長さを短縮することでフェイスラインが引き締まり、小顔効果が得られる点も大きな魅力です。また、横顔のEライン(鼻先と顎先を結ぶ理想的なライン)が整い、口元が自然に引き締まった印象になります。
さらに、顎下から首にかけてのラインがなめらかに整い、全体的にシャープで上品な印象の輪郭を形成できます。輪郭のバランスを重視しながら、ナチュラルで洗練されたフェイスラインを実現できる形成法です。

中抜きオトガイ形成は顎先を短縮して輪郭を整える有効な方法ですが、骨切り量や固定の精度、神経の位置関係によっては注意すべきリスクも伴います。
主なリスクは以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
中抜きオトガイ形成では、顎先に走る「オトガイ神経」という知覚神経に近い位置を操作するため、手術後に一時的なしびれや感覚の鈍さが生じることがあります。これは神経が手術中の刺激や腫れによって一時的に圧迫されるために起こるものです。
多くの場合、数週間〜数ヶ月のうちに自然と回復しますが、まれにしびれや感覚の違和感が長く残るケースも報告されています。そのため、術前にはCT画像などで神経の位置を正確に把握し、損傷を避けながら慎重に骨切りを行うことが重要です。
術後に強いしびれや違和感、感覚の異常が長期間続く場合は、神経の回復状況を確認するために早めの再診を受けることが推奨されます。適切な対応により、多くは時間の経過とともに改善が見込めます。
中抜きオトガイ形成では、骨を切って再固定する際に、ごくわずかな位置のずれによって左右差が生じることがあります。見た目には大きく目立たない場合が多いものの、骨の移動量や固定位置の精度が仕上がりに影響するため、術中のミリ単位の調整が重要です。
また、骨の癒合(ゆごう:治る過程で骨がくっつくこと)が進む過程で固定プレートが緩んだり、周囲の筋肉や皮膚の張力が加わることで、軽度の後戻りが起こることもあります。
仕上がりを安定させるためには、術後の固定をしっかり守ること、医師の指示に従って安静期間を確保することが大切です。定期的な診察で骨の癒合やプレートの状態を確認することで、左右差や後戻りのリスクを最小限に抑えることができます。
中抜きオトガイ形成では、顎の短縮量が大きすぎる場合や、顔全体のバランスを十分に考慮せずにデザインした場合、顎先が平らに見えたり、下顔面が極端に短く見えることがあります。こうした過度な短縮は、横顔の調和を崩し、意図しない印象を与える原因です。
また、顎先を後退させすぎると、相対的に口元が前方に出て見えることがあり、かえって不自然な横顔になってしまうこともあります。骨格や口元の突出度、Eラインとのバランスを考慮せずに調整を行うと、自然さを欠く仕上がりになるおそれがあります。
そのため、手術前にはCT画像や3Dシミュレーションを用いて、顔全体の比率や骨格構造を踏まえたデザインを行うことが大切です。自然な範囲で顎の長さと角度を調整することで、機能的にも審美的にも調和の取れた仕上がりが期待できます。

中抜きオトガイ形成は、顎が長く見える、下顔面が間延びしている、顔全体のバランスを整えたいと感じる人に適した手術法です。骨そのものを短く調整するため、見た目の印象を根本から整えることができます。
とくに、骨格自体が長めで「下顔面が強調されるタイプ」や「口元が引っ込んで見えるタイプ」に向いています。こうしたケースでは、顎の短縮によって顔の縦比率が整い、より自然で引き締まった印象のフェイスラインが得られます。
また、骨を切って短縮するため、プロテーゼなどを使う方法よりも後戻りが少なく安定した効果が得られるのも特徴です。単なるフェイスラインの修正では満足できない人や、下顔面の長さを根本的に改善したい人におすすめの形成術です。

骨格的なずれや咬み合わせの異常を伴う「顎変形症」の人では、顎先のみの手術では改善が難しい場合があります。
下顎全体が前方または後方にずれている場合は顎矯正手術(外科矯正)など、より広範囲の骨格調整が必要です。中抜き法だけでは骨格バランスを十分に補正できず、かえって咬合や顔貌の不調和を招くおそれもあります。
また、顎の骨が極端に薄い人や、過去に顎の手術・外傷歴がある人は、骨の強度や形状の問題から適応外となるケースがあります。
美容目的であっても、まずは医師による骨格・咬合状態の正確な診断を受け、リスクや他の治療法も含めた上で方針を決定することが大切です。

中抜きオトガイ形成の手術の流れは以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
顔全体のバランスや骨格構造を丁寧に確認し、希望する仕上がりのイメージをヒアリングします。
次に、レントゲンやCT撮影を行い、骨の厚み・神経の位置・切除量などを精密に分析します。これにより、安全に骨を切除できる範囲や理想的な短縮量を把握することが可能です。
前方移動法やプロテーゼ法など他のオトガイ形成法との比較も行い、仕上がり・ダウンタイム・リスクなどを踏まえて、最適な手術法を選択します。
手術前に3D画像や模型を用いて、顎先の短縮量や角度をミリ単位でシミュレーションします。顔全体の骨格バランスを踏まえながら、理想的なラインを正確に設計することが目的です。
この段階で、術後に想定されるフェイスラインや横顔(Eライン)の変化を事前に確認できるため、イメージの相違を防ぎ、より自然な仕上がりを目指すことができます。
また、手術の安全性と安定性を確保するために、骨切りライン・固定方法・麻酔の種類や流れなど、細部にわたる治療方針を明確に決定します。
手術当日は、全身麻酔または静脈麻酔のもとで行われます。まず、口腔内(下唇の裏側)を切開し、顎先の骨を2ヶ所で水平にカットします。
切開はすべて口の中で行われるため、外から傷跡が見えないのが大きな特徴です。
次に、中央の骨を取り除き、残った上下の骨を短縮したうえで、チタンプレートでしっかりと固定します。
手術時間はおおよそ1〜2時間程度で、術後は腫れや出血の有無を確認しながら安静に過ごします。
中抜きオトガイ形成の術後は、2〜3日で腫れのピークを迎え、その後1〜2週間ほどで徐々に落ち着いていくのが一般的です。腫れやむくみが軽減するとともに、フェイスラインも自然な形に戻っていきます。
食事は術後数日間、刺激の少ないやわらかい食事を中心にし、口腔内を清潔に保つことが大切です。細菌感染を防ぐため、うがいや口腔ケアも医師の指示に従って行います。
また、固定に使用したチタンプレートは数ヶ月〜1年後に除去が推奨されるケースもあります。除去が不要な場合もありますが、医師の判断により適切な時期に対応します。
術後は定期的に通院し、骨の癒合状態や感覚の回復を確認しながら、最終的な形態が安定するまで経過観察を続けます。

中抜きオトガイ形成(ダブルカット法)では、一般的に3〜6mm程度の骨を取り除いて短縮するケースが多いです。数ミリの調整でも下顔面の印象は大きく変化し、顔全体がすっきりと引き締まって見えるようになります。
ただし、過度に骨を切除しすぎると、顔のバランスが崩れたり、不自然な印象になるおそれがあります。そのため、手術前に3Dシミュレーションなどで理想的な切除量を見極めることが重要です。
仕上がりに左右差がある場合や、思っていたより短く(または長く)なったと感じる場合には、再手術によって修正が可能なケースがあります。修正では、再度骨を切って位置を微調整し、必要に応じて骨片を追加・再固定することでバランスを整えます。
ただし、再手術は通常6ヶ月〜1年ほどの期間を空けて実施するのが一般的です。骨が十分に癒合していない状態で再手術を行うと、固定が不安定になったり、神経への負担が生じるおそれがあります。
しびれは数週間〜数ヶ月で徐々に改善し、半年ほどで自然に回復するケースがほとんどです。神経を直接損傷していない限り、時間の経過とともに感覚は戻っていくため、過度に心配する必要はありません。
ただし、しびれが長く続く場合や片側だけ感覚が鈍いといった左右差が見られる場合は、早めに手術を担当した医師へ相談することが大切です。
中抜き法(ダブルカット法)は、顎先(オトガイ部)の骨を短縮して顔のバランスを整える審美的手術です。主に見た目の改善を目的としており、顎が長く見える・下顔面が間延びしているといった悩みを自然に整えるために行われます。
一方、顎変形症の外科矯正は、上顎や下顎全体の位置や形を調整し、咬み合わせ・発音・呼吸などの機能面を改善する医療的治療です。顎の骨格に大きなずれや変形がある場合に行われ、歯列矯正と外科手術を組み合わせて根本的に改善します。
目的・適応範囲・保険適用の有無なども異なるため、どちらが適しているかは専門医による診断が必要です。

中抜きオトガイ形成は、顎先の骨を直接短縮することで、下顔面の長さや輪郭のバランスを整える有効な手術です。プロテーゼを使わず骨格そのものを調整するため、自然な仕上がりと安定した効果が期待できます。
一方で、骨切りを伴う手術である以上、腫れやしびれ、左右差、後戻りなどのリスクも理解しておく必要があります。とくに骨格的なずれや咬み合わせの問題がある場合は、中抜き法だけでは十分に改善できないケースも少なくありません。
自分に適した治療を選ぶためには、骨格・咬合状態を正確に評価できる医師の診察が不可欠です。
山之内矯正歯科クリニックでは、オトガイ形成から顎変形症の外科矯正まで、幅広い治療に対応しています。形成外科・口腔外科・呼吸器内科など多領域の医師と連携し、骨格診断から治療計画まで一貫したサポートが可能です。顎の長さやフェイスラインでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
2025/12/22

「オトガイ形成術ってどんな手術?」
「手術の流れやリスク、費用を事前に知っておきたい」
オトガイ形成術は、下顎骨の先端を適切な位置に調整し、機能面と顔全体のバランスを整えるために行われる手術です。
オトガイ(あご先)は顔の下半分の形を決める重要な部位で、噛み合わせや顎関節の状態にも関わります。
この記事では、オトガイ形成術の流れやリスク、費用の目安をわかりやすく解説します。

オトガイとは、下顎骨の最前部(あご先)のことです。顔の下半分の形を決める重要な部位で、全体の印象に大きく影響します。
また、歯列や咬合、顎関節の位置とも連動しており、咬合不全や顎変形症の評価にも関係します。
美容面では、鼻・唇・顎を結んだEライン(エステティックライン)の形成に関与する点も特徴です。オトガイの形状によって横顔の印象が変わり、引っ込んで見える、突出して見えるなど、顔全体のバランスの見え方に大きな差が生まれます。

オトガイ形成術とは、下顎骨の先端(オトガイ)の骨を切離し、位置や形を整える外科的な手術です。顎を前に出したり引っ込めたり、上下方向や左右方向へ微調整したりと、多面的な調整ができる点が大きな特徴です。
オトガイ形成術は顔全体の輪郭バランスを整えたり、横顔のEラインを改善したりする目的で行われます。美容目的だけでなく、顎変形症や咬合不全(こうごうふぜん:上下の歯が正しく噛み合っていない状態)といった機能的な問題を改善する治療として行われることも少なくありません。
手術は多くの場合、口腔内からアプローチするため外側に傷跡が残らず、見た目への影響を最小限に抑えられます。顎の形状が変わることで、顔つきがすっきり見える、横顔のバランスが整うなど大きな変化が得られる手術です。

オトガイ形成術には目的や仕上がりの希望に応じて複数の術式があります。以下の3つが代表的です。
それぞれの術式がどのようなケースに適しているのか詳しく解説します。
水平骨切りは、オトガイ形成術の中で最も一般的な方法です。下顎骨のオトガイ部を水平に切離し、骨片を前方や後方、上下方向へ移動させて理想の形に整えていきます。
移動した骨片はチタン製プレートまたはスクリューで固定され、位置を安定させることで自然な輪郭をつくることができます。
適応範囲が広いため単独での手術でも効果が出やすく、輪郭のバランスを整えたい人に向いている術式です。
T字型骨切りは、水平骨切りを行ったあとに中央部へ縦の切離を追加する術式です。オトガイ部をT字状に切ることで骨片を細かく調整でき、不要な骨を除去してから再固定します。
顎の長さを短くしたい場合や、下顎の幅を細くしたい場合に有効で、輪郭をよりシャープに見せたい人に適した方法です。
ただし、骨片の位置決めが複雑で左右対称性の確保も重要になるため、熟練した医師による精密な操作が求められます。
結節部骨切りは、オトガイ部の左右両端にある骨の突出(オトガイ結節)を部分的に切除したり削合したりすることで、顎先の形を細かく整える方法です。
輪郭の微調整や左右差の修正に用いられ、自然な仕上がりを求める場合に適しています。
単独での手術を行うこともありますが、水平骨切りやT字型骨切りと併用し、最終的な輪郭の整えとして仕上げに使われるケースが多い術式です。

オトガイ形成術は、顎の位置や形に関する悩みを改善したい場合に選ばれることが多い手術です。歯科的な問題から美容面のコンプレックスまで、さまざまなケースで適応されます。
具体的には、以下のような症状や悩みに対して適応されるケースが多いです。
| 歯科・機能的な悩み | 美容の悩み |
|---|---|
| ・噛み合わせが悪く、顎の前後関係にズレがある ・下顎の発育が過剰または不足している ・会話時に口元や顎に余分な力が入る ・顎関節に痛みや違和感がある | ・顎が小さく引っ込んで見える ・顎が長く、面長な印象がある ・顎が左右どちらかに傾いている ・フェイスラインがぼやけている ・横顔のEラインが崩れている |
ただし、機能的な問題が強い場合には、矯正歯科治療など別の治療が必要になるケースもあります。
なお、山之内矯正歯科クリニックでは単なる審美目的のオトガイ形成術にとどまらず、顎の骨格・咬合・呼吸を含めたトータルな「外科矯正」に対応しています。専門的な診断と多職種連携による治療体制をご提供していますので、気になる方はぜひ一度カウンセリングへお越しください。

オトガイ形成術は、以下の流れで進められます。
それぞれの工程で何が行われるのかを解説します。
オトガイ形成術ではまず、CT撮影や頭部X線(セファログラム)を用いて骨格や歯列、咬合の位置関係を詳細に評価します。これにより、顎の形だけでなく噛み合わせや顎関節への影響も事前に把握することが可能です。
さらに、3Dシミュレーションを行い、骨の移動量や仕上がり後のEラインの変化を確認します。神経や血管の位置を考慮しながら、安全で効果的な骨切りラインを設計する工程は非常に重要で、手術の精度を左右します。
手術当日は、施術内容や所要時間に応じて局所麻酔または全身麻酔を選択します。
全身麻酔の場合は麻酔科医が立ち会い、バイタルサインを常にモニタリングしながら安全性を確保します。
麻酔が効いたら、手術部位を口腔内粘膜の上から丁寧にマーキングします。正確なマーキングは仕上がりの形だけでなく安全性にも直結するため、オトガイ形成術の中でも重要な工程です。
マーキングの段階で骨切りラインや下歯槽神経の走行を確認し、術中のリスクを最小限に抑えられるよう位置を調整します。
切開・骨切りの段階では、まず下唇の内側から口腔内粘膜を切開し、外から傷跡が見えないようにアプローチします。骨膜を丁寧に剥離してオトガイ部の骨を露出させ、術前シミュレーションで決めたラインに沿って骨を切離します。
このとき、オトガイ神経を損傷しないよう位置を常に確認しながら慎重に操作することが非常に重要です。
切り出した骨片は、必要に応じて前方・後方・上下の方向へ移動させ、理想的な顎の位置やEラインに近づくよう調整します。
骨片の位置を整えたら、チタンプレートまたはスクリューを用いてしっかり固定し、安定性を確保します。
固定後は左右のバランスが正しく取れているかを丁寧に確認し、位置に問題がなければ口腔内の粘膜を縫合して閉鎖します。
使用される固定材は生体親和性が高い素材です。長期的な安全性が確認されており、体内に留置しても支障が出にくいとされています。
手術後は、腫れやしびれ、出血の有無を確認しながら経過を観察します。必要に応じて抗生剤や鎮痛薬が処方され、感染予防と痛みの軽減を図ります。
術後1〜2週間は腫れが残るため、無理をせず口腔内の清潔を保ちながら日常生活を送ることが大切です。安静を保ち、過度な開口や強い咀嚼を避けるよう指導されます。
また、骨の固定状態を確認するため、術後のフォローアップとしてレントゲンやCTを定期的に撮影します。継続的なチェックにより、骨の位置が安定しているか、安全に回復が進んでいるかを確認します。

オトガイ形成術にはいくつかのリスクがあり、術後の経過や仕上がりに影響する可能性があります。代表的なリスクは次の4つです。
それぞれのリスクについて詳しく解説します。
オトガイ形成術では、術後に腫れや出血が生じることがあります。これは骨切り部や軟組織が手術の刺激に反応するためで、多くの人にみられる一般的な症状です。
腫れは術後2〜3日をピークに現れ、1〜2週間ほどで自然に落ち着くケースがほとんどです。冷却や安静、頭部を高くして休むなどの基本的なケアを行うことで症状を軽減しやすくなります。
ただし、腫れが長引く場合や強い圧痛が続く場合は、血腫が形成されている可能性があります。その際はドレナージ処置や早期の再診が必要になるため、自己判断せず医療機関へ相談することが重要です。
オトガイ形成術では、オトガイ神経や下歯槽神経が手術部位の近くを走行しているため、術後に一時的なしびれや感覚の鈍化が生じることがあります。骨切りや剥離操作によって神経が刺激されることで起こるもので、多くの症例で想定される反応です。
しびれは数週間〜数ヶ月の経過で徐々に回復することが多く、時間とともに改善が期待できます。
麻痺が長期間残るケースはまれですが、症状の程度や回復の速度には個人差があるため、経過観察を続けながら適切なケアを行うことが大切です。
オトガイ形成術は口腔内からアプローチするため、常在菌による感染リスクが一定程度あります。術後は抗生剤を服用し、うがい薬で口腔内を清潔に保つことが重要です。
傷口が痛む・腫れる・膿が出るなどの症状がある場合は、早期に対応することで重症化を防げます。
固定材であるプレートやスクリューの感染はまれですが、慢性的な炎症が続く場合には除去が必要になることもあります。
術後の衛生管理や定期的な診察を怠らず、少しでも異変を感じた際には速やかに医師へ相談することが大切です。
リラプスとは、骨切りによって移動した骨片が術後にわずかに元の位置へ戻る現象のことです。固定の安定性や周囲の筋肉の張力、咬合時にかかる力などが影響し、少しずつ位置が変化することがあります。
一般的には、術後3〜6ヶ月の経過観察で骨の位置が安定しているかを確認します。この期間は骨が再生し固まっていく大切な時期であるため、定期的な画像検査で変化を見逃さないようフォローが必要です。
とくに大きな骨移動を行ったケースでは位置戻りが生じやすく、慎重な観察が求められます。適切な固定と術後管理を行うことで、リラプスのリスクを抑えやすくなります。

オトガイ形成術は、審美を目的とする場合は保険が適用されず、自費診療となります。
一般的な相場は40〜200万円前後です。費用は手術方法、麻酔の種類、併用する施術の有無などによって大きく変動します。
とくに、T字型骨切りなど複雑な術式や全身麻酔を用いるケースでは高額になりやすい傾向があります。
また、顎変形症や咬合の改善を目的とする場合であっても、オトガイ単独での形成術は審美的な要素が強いため、保険適用の対象外となることが多い点には注意が必要です。
費用はクリニックによって異なるため、事前に詳細な見積もりを確認し、自分に合った治療内容を検討しましょう。

オトガイ形成術は、あご先の骨の位置や形を調整し、機能面とバランスを整えるための外科手術です。
術式によって調整範囲が異なるため、仕上がりの希望や解決したい課題に合わせて適切な方法を選ぶことが大切です。
一方で、骨切りを伴う手術である以上、腫れやしびれ、感染、位置戻りなどのリスクはゼロではありません。術後の経過観察や適切なアフターケアを行うことで、安全性と仕上がりの満足度を高めやすくなります。
オトガイ形成術を検討する際は、手術の流れやメリット・注意点を正しく理解したうえで、専門の医師と相談しながら自分に適した治療方法を選んでいきましょう。