2025/12/25

小児矯正は第一期と第二期の2段階で行われます。治療期間には個人差がありますが、第一期と第二期を合わせると2〜5年ほどで完了するのが一般的です。
本記事では、小児矯正が完了するまでの期間について詳しく解説しています。開始するタイミングや期間が長くなるケースなどもまとめているので、小児矯正を検討中の方はぜひ参考にしてください。

小児矯正は、乳歯から永久歯に生え変わる6〜12歳頃に行う第一期と、永久歯が生え揃う12歳以降に行う第二期に分けられます。
歯の状態やあごの成長スピードによって期間は大きく異なりますが、第一期と第二期を合わせると約2〜5年で完了することが多いです。
第一期治療の期間は1〜3年が目安です。第一期では骨格の成長を利用し、あごの幅を広げたり永久歯が生えるスペースを確保するための土台づくりを行います。
乳歯と永久歯が混合する6〜12歳頃は骨の成長が盛んで、あごの形や大きさを調整しやすい時期です。このタイミングで骨を正しく整えておくと、第二期治療の難易度を下げられる可能性があります。
また、軽度の歯並びの乱れであれば、第一期のみで終了できるケースもあります。ただし、成長期は体の変化が大きいため、治療後も後戻りを防ぐために歯を固定する保定期間と定期的な経過観察は欠かせません。
第二期治療は永久歯が生え揃う12歳以降に行う仕上げの矯正です。期間の目安は1年半〜2年半ほどで、ワイヤーやマウスピースなどを用いて歯そのものを理想的な位置へ動かしていきます。
第一期で土台がある程度整えられると第二期での歯の移動量が少なくなり、期間を短縮できる可能性があります。反対に、第一期を行わずに第二期からスタートすると治療範囲が広がり、時間がかかることがあります。
第二期の終了後も、動かした歯を安定させるための保定期間が必要です。保定期間は通常、矯正期間と同じくらいの時間がもうけられます。

小児矯正は6〜12歳のうちに開始するのが理想的だといわれています。その理由は、乳歯から永久歯に生え変わる混合歯列期は骨の成長を利用でき、矯正治療の効果が出やすいためです。
歯並びや骨格には個人差があるので、歯科健診で指摘されたり、保護者様が気になったタイミングで受診するのが望ましいでしょう。
ここからは、乳歯列期・混合歯列期・永久歯列期でそれぞれどのような治療を行うかを解説します。
乳歯列期とは、乳歯が生え揃い、永久歯が生えはじめるまでの時期を指します。この時期は将来の歯並びや噛み合わせに影響する口呼吸や指しゃぶり、舌癖などを改善する治療を行います。
これらの悪習慣は歯列に力をかけ続け、出っ歯や受け口、開咬(かいこう)※につながることがあるため、早期の改善が必要です。乳歯列期に噛み合わせのズレが見られるケースでは、成長への影響を考えて早期に介入を検討することもあります。
ただし、乳児はまだ骨格がやわらかく、歯の生え替わりも進んでいくため、大がかりな治療はほとんど行いません。(必要性があるかどうかは歯科医が慎重に判断します)
※前歯が閉じず、上下に隙間ができている状態(オープンバイト)
乳歯と永久歯が混在する混合歯列期は、小児矯正の第一期治療を開始するのに最適なタイミングです。
この時期はあごの成長力が高く、骨格を誘導したり歯列スペースを確保しやすいため、歯並びや噛み合わせの問題を根本から改善しやすいメリットがあります。乳歯列期よりも治療の選択肢が増え、個々の状態に合わせた方法を選択できます。
歯を大きく動かす治療よりも、成長を活かして歯列を広げ、永久歯が並ぶスペースを確保する土台づくりが主な目的です。
永久歯がほぼ生え揃う12歳頃以降は、小児矯正の第二期にあたります。あごの成長は次第に落ち着いていくため、第一期のような骨格誘導は難しくなり、歯そのものを動かして仕上げる治療が中心となります。
第二期治療はワイヤー矯正やマウスピース矯正を用いて歯列を整え、見た目と噛み合わせのバランスを整えるのが目的です。
骨格が完成に近づいているため、治療期間は第一期より短い傾向にありますが、歯の移動量が多い場合は第二期のみでも長期間かかることがあります。

小児矯正の期間が長くなるケースには次のものがあります。
それぞれのケースを詳しく解説します。
小児矯正は治療計画に沿って進めていく必要があり、途中でやめると十分な効果は得られません。通院の間隔があいてしまうと予定通りに歯が動かず、治療期間も長引いてしまいます。
治療を中断するケースは引っ越しや進学、習い事、経済的理由などさまざまです。通院が困難な場合はスケジュールや治療計画の調整もできるため、歯科医に事前相談することをおすすめします。
矯正装置が外れたまま過ごしたり、調整のタイミングがずれてしまったりすると、動かした歯が元の位置へ戻ってしまうことがあります。
とくに、矯正終了後の保定期間は後戻りが起きやすく、保定装置の使用を怠ると治療のやり直しが必要になるケースもあります。
指しゃぶりや舌を前に押し出す癖は歯に力がかかり、出っ歯や開咬などが再発しやすくなります。
これらの習慣が改善されないまま治療を進めても、根本的な原因が残ったままでは期間が長引き、仕上がりにも影響が出ます。歯科医に相談のうえで、機能訓練や生活習慣の見直しが必要です。
虫歯や歯肉炎が起こると、まずはその治療を優先します。矯正装置をつけたまま虫歯治療を行うのが難しい場合は、一時的に装置を外さなければなりません。
治療を中断すると、当初の計画よりも期間が延びてしまうことがあります。矯正治療を計画通り進めるには、虫歯にならないよう丁寧なブラッシングが必要です。
小児矯正で用いる装置には、取り外し式で決められた時間に装着しないと効果が得られないものもあります。
痛みや違和感への不安から装着を嫌がったり、生活の中で忘れてしまうことが続くと、治療が進まず期間が長引く原因になります。小児矯正は家族で協力し、保護者様のサポートのもと治療を進めていく姿勢が大切です。

小児矯正にはさまざまな方法があり、歯の状態に合わせて最適なアプローチを行います。
| 治療法 | 特徴 | 固定or取り外し | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 拡大床 | 成長を利用して少しずつあごを拡大する。 | 取り外し式 | 掃除がしやすい | 装着初期の違和感 |
| 急速拡大法 | 上あごの正中口蓋縫合に固定式の装置を装着し、骨を拡大する。 | 固定式 | 治療期間が短い | 痛みや違和感が出やすい |
| 緩徐拡大法 | 弱い力でゆっくり時間をかけてあごを拡大する。 | 固定式/取り外し式を選択可 | 後戻りしにくい | 治療期間が長くなりやすい |
| バイオネーター | 下あごの成長を促す。 | 取り外し式 | 日中は外してもよい(装着は夜間が中心) | 装着しなければ効果がない |
| プレオルソ | 口周りの筋力向上や舌癖の改善に効果的。 | 取り外し式 | 痛みや違和感がほとんどない | 装着しなければ効果がない |
| リンガルアーチ | 歯の裏側に金属製のワイヤーを装着して歯を動かす。 | 固定式 | 見た目に影響しない | 奥歯が虫歯になりやすい |
| ヘッドギア | 上あごの成長を抑え、臼歯を後方へ移動させることで出っ歯を改善する。 | 取り外し式 | 日中は外してもよい(装着は夜間が中心) | 装着しなければ効果がない |
| フェイシャルマスク | 額とあごに装置を装着し、上あごの骨格成長を促す。 | 取り外し式 | 日中は外してもよい(装着は夜間が中心) | 装着しなければ効果がない |
| インビザライン・ファースト | 3Dシミュレーションをもとに作成したマウスピースで歯並びや噛み合わせを改善する。 | 取り外し式 | ほとんど目立たず行動制限も少ない | 適応症例が限られる |
それぞれの治療法を詳しく解説します。
プレート状の装置を使い、上あごの幅を広げていく方法です。装置にはネジが組み込まれており、少しずつ回して調整します。
装置は取り外し可能で、清潔を保ちやすいのが特徴です。装着時間は1日8時間以上が目安となりますが、歯の状態次第では14〜18時間と指示されることもあります。
前歯が生える場所が不足しているケースや、あごが小さく永久歯の並ぶスペースがない症例に適しています。あごの成長を利用できる混合歯列期(7〜9歳頃)に行うのが一般的です。
上あごの中央部分(正中口蓋縫合)に固定式の装置を取り付け、短期間で骨を広げていく方法です。数週間から数ヶ月の短期間で拡大が進められるのが大きな特徴です。
固定式のため強い力がかかり、調整直後は押されるような痛みや圧迫感が出ることがあります。装置に汚れが溜まりやすいので、丁寧なブラッシングが必要です。
あごの成長に合わせて弱い力でゆっくりと上あごを広げていく方法です。治療期間の目安は1〜2年ほどで、後戻りしにくいメリットがあります。
装置は固定式と取り外し式があり、お子様の生活スタイルに合わせて選択できます。
ワイヤーと樹脂で作られたプレートを装着し、下あごの成長方向をコントロールする矯正装置です。受け口や出っ歯、叢生(そうせい)※の改善に効果的です。
取り外し式のため自由度はありますが、装着しなければ十分な効果が得られません。装着時間や1日10時間以上(主に夜間や就寝時)で、お子様が忘れないよう保護者様の声かけやサポートが必要となります。
※歯が重なり合ってでこぼに生えている状態
口呼吸や指しゃぶりなど、歯並びに悪影響を与える口腔習慣を改善することを目的としたマウスピース型の装置です。ポリウレタンのやわらかい素材は痛みが少なく、お子様の負担を大きく軽減できます。
口周りの筋肉を鍛えたり、舌の位置を正しく導くことで出っ歯や受け口、開咬を予防・改善します。プレオルソ自体に歯を大きく動かす効果はありません。
推奨される装着時間は日中1時間以上+就寝時です。
奥歯に固定したバンドから歯の裏側に沿ってワイヤーを通す矯正装置です。前歯を動かしたり、奥歯を固定したい時に用いられます。
リンガルアーチは歯の裏側に装着するため、外側からはほとんど見えず見た目の影響がありません。一方で、舌に装置が触れることで発音しづらいと感じることがあります。
バンドを固定する奥歯は汚れが溜まりやすく、虫歯や歯肉炎のリスクが高まるため、家庭での丁寧なブラッシングと定期的なクリーニングが欠かせません。
上あごが前方へ成長するのを抑えたり、奥歯を後ろへ動かしたりする際に使用する外付けの矯正装置です。
ヘッドギアはフェイスボウと呼ばれる金属パーツと奥歯の固定装置、頭部に装着するヘッドキャップで構成され、主に出っ歯の治療に用いられます。外観は目立ちますが、使用するのは主に夜間(1日8〜10時間)なので人目を気にせずに済みます。
ゴムの牽引力を利用して上あごを前方へ誘導する装置です。主に受け口の治療に用いられます。
額とあごに装置を支えるフレームを固定し、下あごの動きに連動して口の中に力を伝えます。推奨される装着時間は1日10時間以上です。
成長期の子ども向けに開発されたマウスピース矯正です。マウスピースは透明で目立ちにくく、激しい接触プレーがなければ運動中も装着が可能です。
治療開始前には3Dシミュレーションを行うので、患者様ご自身で治療前後の予測結果を確認できます。最終イメージや必要なマウスピース枚数、費用の見通しを事前把握できるのも、従来の矯正にはない大きな利点です。
一方で、インビザラインには適応範囲に限りがあり、症例によっては他の装置との併用が必要になります。また、歯と歯の間をわずかに削る処置(IPR)が必要となるケースもあります。

お子様が小児矯正をつらいと感じやすいのは、装置をつけはじめた直後や調整後の数日間です。この間は痛みや圧迫感、噛みにくさ、発音の違和感が生じやすいからです。
口の中に装置を装着したり、今までとは生活習慣が変わってしまうことで戸惑うお子様は少なくありません。長期間に及ぶ治療の中で、装置のお手入れや通院が負担に感じることもあるでしょう。
小児矯正は継続が鍵となるため、お子様本人の努力はもちろんのこと家族のサポートも欠かせません。痛みや装置のトラブルなど、困りごとがあれば家族だけで解決しようとせず、歯科医に相談しましょう。
当院では、小さなお子様でも嫌がることのない痛みに配慮した治療を行っております。多くの患者様が無理なく治療を進められておりますので、痛みが不安な方はお気軽に当院までご相談ください。

小児矯正は、第一期・第二期と段階的に進めていく治療です。個人差がありますが、多くの患者様が2〜5年ほどで治療を完了されています。
歯並びや噛み合わせは見た目だけでなく、体の機能にさまざまな影響を与えます。数年がかりの治療になりますが、お子様の負担を減らしつつ、ご家族のサポートによって乗り越えていくことが大切です。
治療に関して不安がある場合は歯科医に相談し、経過と治療計画を確認しておくと安心です。お子様の成長に合わせた無理のない治療で、健康的な口元を目指しましょう。