小児矯正の第一期治療の重要性。やる必要はある?費用は?

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小児矯正の第一期治療の重要性。やる必要はある?費用は?

小児矯正の第一期治療の重要性。やる必要はある?費用は?

乳歯から永久歯へと生え替わる混合歯列期に行われる小児矯正は「第一期治療」と呼ばれます。

一期治療は永久歯が生えるスペースをつくる土台づくりの期間であることから「本当に必要があるのか」「二期からでいいのでは?」と思う保護者様も多くいらっしゃいます。

一期治療はお子様の歯並びを整えるために必要なものであり、適切なタイミングで始めることで将来的な治療期間や費用を抑えられる可能性があります。本記事では一期治療の重要性を解説するので、小児矯正を検討中の方はぜひ最後までお読みください。

小児矯正の第一期とは

小児矯正の第一期とは

小児矯正は、お子様の成長段階に合わせて第一期と第二期の2つの段階に分けられます。第一期は乳歯から永久歯へと生え変わる混合歯列期に、第二期は永久歯が生え揃う12歳以降に行われます。

第一期はあごが成長する力を利用し、永久歯が適切な位置に並ぶためのスペースを確保する“土台づくり”の期間です。この時期にあごの幅や噛み合わせ、口呼吸、舌癖などの問題を改善しておくと永久歯列が安定し、第二期治療がスムーズに進められます。

第一期治療ですること

小児矯正の第一期では主に以下の治療を行います。

  • あごの幅を広げる
  • 不正咬合(ふせいこうごう)を改善する
  • 口呼吸・舌癖などの悪習癖を改善する

混合歯列期は骨格の発育がさかんな時期で、成長を利用してあごが広がるように誘導します。歯が並ぶスペースを確保できれば、歯が重なり合ってでこぼに生えてしまう叢生(そうせい)を予防できます。

受け口や出っ歯、噛み合わせが部分的に反対になっている交叉咬合(こうさこうごう)、前歯が閉じず、上下に隙間ができてしまう開咬(かいこう)などの改善にも効果的です。

第一期に土台を整えておくと、永久歯が生え揃った後の治療負担を大きく減らすことができるメリットがあります。

第二期治療ですること

第二期治療は、永久歯が生え揃ったタイミングで行う「仕上げの矯正」です。ワイヤー矯正やマウスピース矯正を使い、歯そのものを理想的な位置へ動かして噛み合わせを整えることが目的です。

歯の位置をミリ単位で調整し、見た目と機能の両面からバランスの良い歯並びを完成させます。叢生や不正咬合が改善した後は、噛み合わせの最終調整を行います。

治療後は後戻りを防ぐためにリテーナー(保定装置)を使用し、歯列が安定するようサポートする期間も必要です。

第一期であごの成長を整えておけば、第二期で抜歯をせずに済んだり、治療期間が短くなる可能性があります。費用負担を軽減できるメリットもあるため、小児矯正では第一期から第二期へと2段階で治療を行うことが推奨されます。

小児矯正の第一期の必要性

小児矯正の第一期の必要性

小児矯正における第一期は、混合歯列期にしか使えない成長力を最大限に活かすことができる期間です。あごの成長を利用することは、歯並びや噛み合わせ、口呼吸、舌癖といった問題に自然なアプローチができることを意味します。

歯並びや噛み合わせの乱れを放置すると、年齢とともに口腔トラブルが増えていきます。いざ矯正を始めようとしても、その問題を先に解決しなければならず、治療期間が通常よりも長くなる可能性があるのです。

第一期治療を行うと、第二期の治療期間を短くできたり、治療の難易度や費用を下げられたりできる可能性もあります。症状や経過次第では、第一期で治療を終えられるお子様もいます。

将来的にかかる時間やお金、お子様の負担を考えると、第一期治療は成長期だからこそ受けられる効果の高いアプローチだといえるでしょう。

小児矯正の第一期で行う治療

小児矯正の第一期で行う治療

第一期治療には、あごの成長を利用する方法から噛み合わせのズレを改善する装置までさまざまな選択肢があります。

治療法特徴固定or取り外しメリットデメリット
拡大床成長を利用して少しずつあごを拡大する。取り外し式掃除がしやすい装着初期の違和感
急速拡大法上あごの左右の骨のつなぎ目に固定式の装置を装着し、骨を拡大する。固定式治療期間が短い痛みや違和感が出やすい
緩徐(かんじょ)拡大法弱い力でゆっくり時間をかけてあごを拡大する。固定式/取り外し式を選択可後戻りしにくい治療期間が長くなりやすい
バイオネーター下あごの成長を促す。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
プレオルソ口周りの筋力向上や舌癖の改善に効果的。取り外し式痛みや違和感がほとんどない装着しなければ効果がない
リンガルアーチ歯の裏側に金属製のワイヤーを装着して歯を動かす。固定式見た目に影響しない奥歯が虫歯になりやすい
ヘッドギア上あごの成長を抑え、臼歯を後方へ移動させることで出っ歯を改善する。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
フェイシャルマスク額とあごに装置を装着し、上あごの骨格成長を促す。取り外し式日中は外してもよい(装着は夜間が中心)装着しなければ効果がない
インビザライン・ファースト3Dシミュレーションをもとに作成したマウスピースで歯並びや噛み合わせを改善する。取り外し式ほとんど目立たず行動制限も少ない適応症例が限られる

※最適な治療法は歯の状態や生活習慣によって異なります

ここからはそれぞれの方法を詳しく解説します。

拡大床

プレート型の装置を装着し、ネジを少しずつ回してあごを広げる方法です。成長期のあごの発育を利用し、歯列の幅を広げることで歯が適切な位置に並ぶためのスペースを確保します。

食事や歯磨きの際に取り外すことができるので衛生面のメリットがあります。前歯が生えるスペースが少ない、あごが小さく永久歯の生える余地がないなどの症例に適応があります。

拡大床は7〜9歳の混合歯列期に行うのが理想です。(対象年齢は5〜12歳頃)

急速拡大法

上あごの骨の継ぎ目に固定式の装置を装着し、骨を拡大する方法です。6〜12歳の混合歯列期のお子様を対象にした治療で、数週間〜数ヶ月と比較的短い期間であごを広げていきます。

装置は固定式で力が強く、調整直後は痛みや圧迫感が出ることがあります。食べかすが溜まりやすいため、念入りな歯磨きが必要です。

緩徐拡大法

弱い力をかけて、ゆっくりとあごを広げていく方法です。治療期間は1〜2年ほどで、6〜12歳の混合歯列期にスタートすることが推奨されます。

急速拡大法のような早さはありませんが、あごの成長スピードに合わせられる分、後戻りしにくいメリットがあります。装置は固定式と取り外し式の選択が可能です。

バイオネーター

ワイヤーとプラスチックで構成されるプレートを装着し、下あごの成長を促す矯正装置です。受け口と出っ歯の改善に効果的で、ネジを調整すると叢生の改善にも役立ちます。

取り外し式のため、装着しない限り効果を発揮できません。夜間や就寝時、1日10時間以上の装着が推奨されているので、お子様はもちろんのこと保護者様の協力も必要です。

プレオルソ

子どもの口腔機能の改善に特化したマウスピース型矯正装置です。やわらかい素材はお子様でも装着しやすく、痛みが少ないメリットがあります。

大人のマウスピース矯正とは異なり、プレオルソは歯に力を加えて動かすものではありません。口周りの筋肉を鍛えたり、歯並びに影響を与える口呼吸や指しゃぶりの改善が主な目的です。

日中1時間以上と就寝時の装着が推奨されます。弾性のあるポリウレタン製で口の中を傷つける心配もありません。

リンガルアーチ

歯の裏側に装着する金属製のワイヤー矯正装置です。奥歯に固定したバンドから歯の内側に沿ってワイヤーを装着します。

混合歯列期において、奥歯を固定したり前歯を動かしたい時に行う治療です。表側からは見えにくい点が大きなメリットです。

構造自体はシンプルですが、固定式の装置が舌に触れるため発音しづらいと感じることがあります。また、固定源となる奥歯(臼歯)は虫歯や歯肉炎のリスクが高くなるため、普段のケアだけでなく歯科医院での定期的なクリーニングが推奨されます。

ヘッドギア

頭部に固定する矯正装置で、上あごの成長を抑え、臼歯を後方へ移動させるために使用します。主に上顎前突(出っ歯)の治療に適しています。

ヘッドギアは、フェイスボウと呼ばれる金属の牽引装置と上あごの大臼歯に固定する装置、頭に被るヘッドキャップで構成されています。

頭部にも装置を装着するため少々目立ちますが、装着時間は夜間が中心(1日8〜10時間)なので外出時の見た目の心配はほとんどないといっていいでしょう。

フェイシャルマスク

受け口(反対咬合)の治療に用いられる装置で、ゴムの力で上あごを前へ引っ張り骨格の成長を誘導します。

額とあごをワイヤーでつないだ装置は、下あごの動きに合わせて口の中を牽引する仕組みです。大がかりな装置ではありますが、装着は夜間が中心(1日8〜10時間程度)となるため日常生活への支障は比較的少なめです。

インビザライン(インビザライン・ファースト)

成長期の子ども向けに設計されたマウスピース型の矯正装置です。透明で目立ちにくいマウスピースを使用するため、注意深く見なければ周囲に気付かれることはありません。

インビザラインによる矯正は治療開始前に3Dシミュレーションを行い、歯の動き方を可視化します。この3Dシミュレーションによって完了までの期間や費用、マウスピースの枚数などを事前に確認できる点が大きなメリットです。

日常生活への影響もほとんどなく、装着したまま運動することもできます。デメリットとしては、適応する症例が限られる点や、歯と歯の間を削らなければいけない可能性がある点があげられます。

小児矯正の第一期治療にかかる費用

小児矯正の第一期治療にかかる費用

小児矯正の第一期治療にかかる費用は使用する装置の種類や治療期間、歯の状態によって異なりますが、目安は30万〜50万円程度です。

一部を除き、小児矯正は自費診療として扱われるため、費用は全額自己負担となります。医療費控除の対象になるケースが多いので、確定申告で負担を軽減できる可能性があります。

第一期治療を終えた後、第二期治療に進む場合の追加費用は40万〜60万円程度です。

また、高額になりやすい小児矯正では、デンタルローンや歯科医院が独自に行う分割払いを利用できることも多いです。当院でも信販会社やクレジットカード会社を通さない分割払いをお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。

関連記事:小児の歯科矯正の費用はどれくらい?補助金や保険、ローンについて

小児矯正の第一期治療の期間

小児矯正の第一期治療の期間

小児矯正の第一期治療では、1〜3年ほどかけて歯並びや噛み合わせを改善していきます。(成長スピードや歯の生え替わりの時期には個人差があるため、治療期間にも幅が出ます)

永久歯が生え揃う12歳頃以降に行う第二期治療は、1年半〜2年半ほどかかるのが一般的です。第一期と第二期を合わせると2〜5年ほどで治療が完了するイメージです。

治療後は保定期間を設けて、リテーナー(保定装置)を装着しながら後戻りを予防します。保定期間は1〜3年程度が目安です。

小児矯正が第一期で終わることはある?

小児矯正が第一期で終わることはある?

小児矯正は第一期と第二期の2段階で行うのが一般的ですが、症状によっては第一期のみで治療が完了するケースもあります。一期で終了する場合の判断材料となるものは次の通りです。

  • セファロ分析※1
  • 成長予測
  • 口腔習癖(舌癖・口呼吸)の残存
  • MFT※2の到達度など

軽度〜中等度の叢生や部分的な交叉咬合(こうさこうごう:上下の歯が正常に噛み合わない状態)などは、第一期治療でスペースが確保されれば第二期に進まずに治療を終えられることがあります。

もっとも、子どもの口腔内は歯の生え替わりやあごの成長が続くため、第一期で終了しても保定や定期的な経過観察が欠かせません。成長によって新たに問題が生じる可能性もあるため、慎重なフォローが必要になります。

小児矯正はお子様や保護者様の意向、引っ越し・転勤、経済的な理由などで中断せざるを得ないこともあります。しかし、将来的なことを考えると第二期治療まで進み、計画通り終えられるのが理想的です。

※1…横から撮影した顔とあごのレントゲンを使って歯並びのバランスを詳しく調べる検査

※2…口周りの筋肉を鍛えるトレーニング

関連記事:小児矯正を第1期でやめるのは問題ない?

まとめ

まとめ

小児矯正の第一期は、混合歯列期の成長力を活かして永久歯が適切な位置に並ぶための土台をつくる大切な治療です。歯並びや噛み合わせのズレ、口呼吸や舌癖などの問題を早期に改善できるだけでなく、第二期治療の負担を大きく減らせる可能性があります。

第一期だけで治療が完了するケースもありますが、子どもは成長による変化が続くため、終了後も定期的なフォローは欠かせません。

小児矯正の最適なタイミングと治療方法は、患者様一人ひとりで異なります。歯科医院で現状を確認し、お子様と保護者様と相談しながら無理のない治療計画を立てていくことが安心につながります。

山之内矯正歯科クリニックでは、お子様の歯並びに関するお悩みを解消するために丁寧なカウンセリングを心がけております。小児矯正を検討中の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

山之内矯正歯科クリニック 院長山之内 哲治
山之内 哲治

矯正歯科臨床38年以上の経験を持ち、外科矯正と呼吸機能改善を専門としています。口腔外科・形成外科・呼吸器内科など多領域の先生方と連携し、咬み合わせの問題を骨格から見直す必要があるのか、歯列矯正で対応できるのかを慎重に見極めた治療を行っています。

経歴

  • 1984年:岡山大学歯学部附属病院 研究生・医員
  • 1986年:光輝病院勤務、岡山大学歯学部附属病院 助手
  • 1987年:米国ロヨラ大学 Dr.Aobaのもとへ留学
  • 1998年:岡山大学歯学部 退職
  • 2000年:山之内矯正歯科クリニック 開院
  • 2004年:日本矯正歯科学会 優秀発表賞受賞
  • 2011年:日本臨床矯正歯科医会 アンコール賞受賞