2025/12/24

「鼻中隔湾曲症があると顔の見た目に影響するの?」
「鼻筋が曲がって見えるのは鼻中隔のせい?」
このように不安に感じる方は少なくありません。
鼻中隔の曲がりは多くの場合は外見に影響しませんが、湾曲が強い場合は、鼻筋のずれや顔の左右差などが現れることがあります。
この記事では、鼻中隔湾曲症で見た目に影響が出るケースの特徴や、鼻中隔湾曲症の治療法についてわかりやすく解説します。

鼻中隔は、鼻の内部を左右に仕切る薄い壁で、前方は軟骨、後方は骨で構成されています。この鼻中隔が左右どちらかに曲がったり、ねじれたりした状態を鼻中隔湾曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)と呼びます。
湾曲自体は多くの人にみられるもので、軽度であれば自覚症状がないことも少なくありません。しかし、湾曲が大きくなると片側の鼻腔が狭くなり、空気の流れが阻害されることで鼻づまりや息苦しさが生じます。
その結果、就寝時のいびきや口呼吸、集中力の低下など、生活に支障が出ることもあります。
耳鼻科では鼻づまりの原因疾患として認識されており、症状が強い場合は薬物療法や手術などの治療対象となります。

鼻中隔湾曲症そのものが、顔の見た目に大きな変化を直接引き起こすことは多くありません。多くの場合は内側の変形にとどまり、外見上ははっきりとした変化が分かりにくいまま過ごしている人がほとんどです。
ただし、鼻中隔の湾曲が強い場合や、鼻骨・鼻内の軟骨の形態と関連した変形がある場合には、鼻筋や鼻先の向きが左右どちらかに偏って見えることがあります。
また、鼻づまりによって慢性的な口呼吸が続くと、口唇の閉じにくさや下顎の位置変化などと関連し、口元の突出や下顔面の印象に変化が生じる可能性があります。
見た目の変化の有無や程度には個人差が大きく、必ずしも誰にでも起こるわけではありません。

鼻中隔の湾曲は内部の症状だけでなく、外見にも影響することがあります。主な見た目の変化は次のとおりです。
それぞれの特徴について詳しく解説します。
鼻中隔が強く湾曲している場合、外見にも影響が及び、鼻筋がS字状に見えたり鼻先が片側へ寄って見えることがあります。
正面から鏡を見ると、鼻の中心が目や唇のラインと一致せず、全体がわずかに傾いて見えるのが特徴です。
とくに、鼻骨や軟骨の変形を伴うケースでは、内部のずれがそのまま外側のシルエットに反映されやすく、鼻が曲がっている印象を与えることがあります。
鼻の中心にある鼻中隔がずれると、顔全体のバランスにもわずかな影響が及ぶことがあります。
片側の鼻づまりが続くと無意識に呼吸が片側へ偏り、口呼吸の癖がつきやすくなるため、頬の筋肉や下顎の使い方にも左右差が生じることがあります。
ただし、笑ったときの表情の左右差や片側だけフェイスラインが下がって見えるといった非対称の印象は、鼻中隔湾曲症だけでなく、筋肉の使い方や骨格など複数の要因が関わると考えられています。
口呼吸が続くと、唇や顎まわりの筋肉(口輪筋・オトガイ筋など)が常に緩んだ状態になります。その結果、口が自然と開きがちになり、顔下半分の表情筋の働きが弱くなることで形態にも影響が出やすくなります。
口呼吸が慢性化すると、「間延びした顔つき」「下膨れに見える」「顎が後退して見える」など、顔全体がゆるんだ印象になることも少なくありません。

鼻中隔湾曲症による鼻づまりが長期間続き、鼻呼吸がしづらい状態になると、口呼吸や舌位の低下と関連して歯並びや咬み合わせに影響が出る可能性があります。
鼻呼吸がしづらくなると口呼吸へ移行し、舌の位置が低下して上顎の発育に影響することが指摘されています。
具体的には、舌が上顎を広げる力が弱まることで横幅が不足し、歯列が狭くなるため叢生(歯並びがガタガタになる)が起こりやすくなります。
さらに、口呼吸が続くと開咬や下顎前突などの不正咬合(ふせいこうごう)につながるケースもあります。

鼻中隔湾曲症は、生まれつきの骨格の特徴だけでなく、成長期の外傷や炎症など、複数の要因が関係して起こります。主な原因は次のとおりです。
それぞれの原因について詳しく解説します。
鼻中隔湾曲症は、先天的な顔面骨格の左右差によって生じることがあります。
生まれつき上顎骨や鼻骨の発育にわずかな差があると、鼻中隔が中央から外れた位置で成長し、結果として左右どちらかに偏った構造になるためです。
とくに胎児期から成長期にかけて骨の発育スピードが均一でない場合、鼻中隔が一方向へ押されるように変位し、曲がりとして現れやすくなります。
成長期の外傷は、鼻中隔湾曲症の原因としてよくみられます。
成長期は鼻骨や軟骨がまだやわらかく、衝撃で簡単に変形やずれが生じやすいからです。
鼻を強くぶつける、転倒する、ボールが当たるといった軽い外傷でも、鼻中隔が曲がったり偏位したりすることがあります。
外傷後に適切な整復や治療を行わないまま成長すると、その位置で骨が固定され、鼻筋の左右差や鼻中隔湾曲症として残ることがあります。
また、外見上は大きな腫れや変形がなくても、内部で鼻中隔だけがずれているケースも少なくありません。こうした場合、鼻づまりや片側呼吸のしづらさなどの症状が成長とともに徐々に現れます。
鼻中隔湾曲症は、生まれつきの骨格の特徴や外傷などに加え、慢性的な炎症が関与して症状が目立ちやすくなることがあります。
片側の粘膜が長期間腫れると鼻中隔への圧力が偏り、反対側へ押される形で徐々に変形しやすくなるためです。
とくにアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎の患者に多くみられ、片側だけ鼻づまりが続く状態が鼻中隔の偏位を助長します。
また、鼻呼吸が困難になることで口呼吸が習慣化し、舌の位置が下がって上顎の発育が妨げられ、歯列不正につながることもあります。

鼻中隔が曲がると、左右の鼻腔の通気が不均一になり、空気の流れが偏るため日常生活にさまざまな不調が現れます。
呼吸がしづらくなることで、睡眠や日中のパフォーマンスに影響が及ぶことがあり、場合によっては姿勢や顔のバランスの乱れの一因となることもあります。
主な症状は次のとおりです。
症状が長引くときは、早めに耳鼻科へ相談しましょう。

鼻中隔湾曲症の治療は、症状の程度や原因に応じて大きく2つに分かれます。
それぞれについて詳しく解説します。
保存的治療は、鼻の構造そのものを変えず、炎症や鼻づまりを和らげることを目的とした方法です。
軽度の湾曲で症状が強くない場合や、アレルギー性鼻炎を併発しているケースで効果が期待できます。
主な治療内容・対処法は以下のとおりです。
| 治療内容 | 対処法 |
|---|---|
| 薬物療法 | 抗ヒスタミン薬、点鼻ステロイド、去痰薬※などを用いて炎症を抑える |
| 物理療法 | 鼻洗浄や生理食塩水スプレーで粘膜の清潔を保ち、通気を改善する |
| 環境改善 | 加湿器・空気清浄機の使用、寝具や姿勢の見直しなどで鼻への刺激を減らす |
| 行動指導 | マウステープや呼吸訓練を取り入れ、鼻呼吸を促す |
※去痰薬(きょたんやく):痰を出しやすくする薬
保存的治療はあくまで症状を和らげるための対症療法ですが、炎症を抑えたり鼻呼吸をしやすくしたりすることで、日常生活の快適さを取り戻すことが期待できます。
鼻中隔矯正術は、曲がった鼻中隔の骨や軟骨を整えて空気の通りを改善する手術です。
外科的に修正することで左右の鼻腔の通気バランスが整い、鼻呼吸がしやすくなります。保存的治療で改善しづらい中〜重度の鼻づまりに対して行われることが多く、根本的な治療方法として位置づけられています。
手術では粘膜を丁寧に剥離し、曲がった骨や軟骨を削ったり整えたりしながら適切な位置へ再配置し、安定させます。施術は多くの場合、鼻の中からアプローチするため外から傷は見えません。

鼻中隔矯正術は、あくまで鼻呼吸を改善することが目的であり、外見を大きく変えるための手術ではありません。
手術では鼻の内部構造を整えるだけで、皮膚や鼻骨の形には直接触れないため、外観が大きく変化することはほとんどありません。
強いて言えば、鼻中隔の位置が整うことで、内部から鼻筋の通りが自然にまっすぐ見えるようになるケースや、左右のバランスがわずかに改善するケースはあります。
しかし、見た目の変化はあくまで副次的な効果であり、見た目の改善を目的とする場合は別の施術が必要になることが多いです。

鼻中隔湾曲症を根本から改善するには、耳鼻科での呼吸機能の回復と、矯正歯科での咬合調整を併用する方法が効果的です。
呼吸と咬合は密接に関係しており、どちらか一方だけの治療では長期的な安定が得られにくいからです。
たとえば、鼻呼吸が確立していない状態で矯正を行うと、舌の位置が低いまま残り、口呼吸の癖も続きやすく、歯列が後戻りしやすくなります。
また、矯正で上顎を広げても、鼻中隔の湾曲が強い場合は呼吸が改善されにくいです。
耳鼻科治療と矯正治療を組み合わせることで、鼻呼吸がしやすくなり、いびきや口呼吸が軽減しやすくなります。
山之内矯正歯科クリニックでは、一般的な歯科矯正に加え、鼻中隔湾曲の治療にも対応しています。必要に応じて各分野の医師と連携し、「咬み合わせ・骨格・呼吸機能」の三方向を考慮した治療を行っています。

鼻中隔湾曲症は、基本的に自然に治ることはありません。
軽度の湾曲であれば、成長とともに症状が目立たなくなるケースもありますが、内部の構造そのものが元に戻るわけではないからです。
鼻中隔は骨と軟骨でできているため、一度曲がったり変形したりすると、成長や自然治癒によって形が大きく変わることはほとんどありません。
鼻中隔湾曲症があっても、矯正治療自体は問題なく行うことができます。
しかし、鼻呼吸がしにくい状態が続いていると、口呼吸の癖が残りやすく、舌の位置が下がることで上顎が狭くなるなどの影響が出ることがあります。
その結果、せっかく整えた歯列が再び乱れたり、治療後の安定性が低くなったりするリスクが生じます。
長期的に安定した仕上がりを目指すためには、呼吸状態の改善と矯正治療を並行して進めることが大切です。
矯正治療によって呼吸がしやすくなるケースはありますが、鼻づまりを根本的に改善することは難しいです。
鼻中隔の湾曲や粘膜の腫れなどが鼻づまりの原因となっている場合、歯列矯正では直接的に治すことができません。
とくに鼻中隔が大きく曲がっているケースでは、矯正治療だけでは十分な改善が得られず、耳鼻科での治療も併用する必要があります。
鼻中隔湾曲症は、多くの場合は内側の変形にとどまります。しかし、湾曲が強い場合や口呼吸が続く場合には、鼻筋のずれや顔の左右差など見た目に影響が出ることがあります。
鼻づまりやいびきは、歯並び・咬み合わせの乱れにつながることもあるため、早めの対策が大切です。
治療は薬や鼻洗浄などの保存的治療に加え、必要に応じて鼻中隔矯正術が検討されます。
呼吸状態や見た目の悩みがある場合は、耳鼻科や矯正歯科に相談し、自分に合った治療法を選びましょう。