2025/12/24

「鼻中隔湾曲症って手術したほうがいいの?」
「症状の目安や、手術以外の治療法もあれば知りたい」
このように不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
鼻中隔湾曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)は鼻づまりやいびき、頭痛など、日常生活に影響するさまざまな症状を引き起こすことがあります。
しかし、すべてのケースで手術が必要になるわけではありません。症状の程度や原因によって選ぶべき治療法が異なります。
この記事では、鼻中隔湾曲症の手術すべき目安や治療の概要、外科的治療なしで改善できるケースをわかりやすく解説します。
読めば、自分の症状に合わせてどの治療法を選べばよいか判断しやすくなるはずです。

鼻中隔湾曲症とは、鼻の内部で左右を仕切る壁である鼻中隔が曲がったり、片側に偏ってしまう状態をいいます。
鼻中隔が大きく曲がると、片側だけ呼吸しづらくなったり、口呼吸やいびきが増えたりと、日常生活で不快感が出るようになります。
日本人はもともと鼻腔が狭いため、わずかな曲がりでも鼻づまりが起こりやすい傾向があります。軽症では自覚しにくいものの、進行すると睡眠の質の低下や頭痛につながることもあります。
原因として多いのは、成長の過程で骨と軟骨の発育バランスがずれることや、外傷によって鼻が変形することです。とくに成長期は軟骨が柔らかく影響を受けやすいため、軽い衝撃でも鼻中隔が曲がることがあります。

鼻中隔の曲がりによって日常生活に支障が出ている場合、手術が必要になることがあります。手術を検討すべき症状の目安は以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
片側の鼻だけ通りが悪い、風邪でもないのに詰まった状態が続く場合は、鼻の内部に構造的な狭窄(きょうさく:通り道がせまくなること)がある可能性があります。
とくに、季節や体調に関係なく鼻づまりが慢性的に続くときは、鼻中隔の曲がりが呼吸の妨げになっている可能性が考えられます。
薬を使っても改善しない鼻づまりが長く続く場合は、鼻中隔矯正術の適応となることが多いです。生活に支障を感じる場合は、早めに耳鼻科で状態を確認しましょう。
鼻呼吸がしづらい状態が続くと、口呼吸に頼るようになり、いびきや睡眠時無呼吸が起こりやすくなります。
とくに鼻中隔の曲がりが強い場合は、就寝中の空気の通りが悪くなり、睡眠の質が悪化しやすくなります。手術によって鼻の通りが改善されると、空気が流れやすくなるため、いびきの軽減や酸素供給の安定が期待できます。
その結果、朝のだるさや日中の眠気が減り、全身のコンディションが整いやすくなります。
鼻づまりが続くと空気の流れが悪くなり、十分な酸素を取り込めなくなるため、慢性的な頭痛や倦怠感が出やすくなります。仕事や勉強に集中できない、すぐ疲れてしまうといった不調が積み重なり、生活の質が落ちてしまうことも少なくありません。
また、呼吸がしづらい状態が長引くと口呼吸が習慣化し、口腔内の乾燥が進みます。乾燥は細菌の繁殖を招き、むし歯や歯周病のリスクが高まるほか、舌の位置が低くなることで歯列不正の原因にもなります。
通気が悪い状態が続くと、鼻腔内の粘膜が腫れやすくなり、炎症や細菌感染が慢性化しやすくなります。その結果、季節に関係なく鼻炎や副鼻腔炎を繰り返すケースも珍しくありません。
とくに鼻中隔の曲がりが強い場合は、空気や排泄物の通り道が狭くなるため、炎症が治りづらい傾向があります。
手術で通気と排膿の経路が改善されると、炎症が起こりにくくなり、再発予防につながります。
鼻中隔が大きくずれている場合、呼吸が片側に偏り、頬や顎の筋肉の使い方にも影響が及ぶことがあります。
とくに片側だけ力が入りやすい状態が続くと、噛む動作に偏りが生じ、顔の左右差につながりやすくなります。
鼻中隔の位置が整うと空気の流れが安定し、筋肉の働きにも偏りが出にくくなります。
ただし、鼻中隔矯正術は美容目的の手術ではないため、大きく見た目が変わることはありません。結果として、咬合や表情のバランスが緩やかに整う可能性はありますが、あくまで機能改善に伴う変化といえます。

鼻中隔の曲がりがあっても、必ずしも手術が必要になるわけではありません。状況によっては、生活の工夫や保存的治療だけで十分改善が見込めるケースもあります。
手術をしなくても改善できるケースは以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
鼻中隔が少し曲がっている程度であれば、とくに治療を行わなくても問題がないケースが多いです。
実際、軽度の湾曲は多くの人に見られるもので、呼吸がしっかり確保されているなら経過観察で十分といえます。
日常生活で息苦しさを感じず、睡眠や運動にも支障がない場合は、手術を選ぶ必要はほとんどありません。
むしろ、症状のない状態で手術を受けてもメリットは少ないため、まずは自覚症状の有無を基準に判断しましょう。
鼻づまりの原因が鼻中隔の曲がりではなく、粘膜の腫れによって起こることもよくあります。
アレルギー性鼻炎や風邪による鼻づまりは一時的で、炎症が治まると自然に改善する場合が多いです。このようなケースでは、薬物療法や環境改善に取り組むことで十分に症状をコントロールできます。
加湿器の利用や空気清浄機の活用、ハウスダスト対策なども効果があり、手術へ進む前に試す価値があります。
鼻中隔の湾曲が軽度であれば、保存的治療で症状を安定させることができます。
抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイドで炎症を抑え、生理食塩水による鼻洗浄で通気が改善しやすくなります。
症状が落ち着いているなら、必ずしも手術を選択する必要はなく、まずは保存的に経過をみる方が現実的です。

鼻中隔矯正術は、曲がってしまった鼻中隔の骨や軟骨を適切な位置へ整え、空気の通り道を確保するための手術です。
湾曲の程度が強く、薬では改善しない鼻づまりが続く場合に選択されることが多いです。呼吸機能を根本から改善できる点が特徴といえます。
手術ではまず鼻の内側を切開し、粘膜を丁寧にめくりながら曲がった骨や軟骨を露出させます。その後、変形した部分を部分的に切除したり整復したりして、中央へ再配置します。
作業はすべて鼻腔内で行われるため、外から傷跡が見える心配がありません。
麻酔は全身麻酔または局所麻酔を使用します。入院期間は日帰りから1泊2日程度になるのが一般的です。

鼻中隔矯正術には多くのメリットがある一方で、治療を検討するうえで知っておきたいデメリットも存在します。
鼻中隔湾曲症手術のデメリットは以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
鼻中隔矯正術の術後は、粘膜が手術の刺激に反応して腫れたり、少量の出血が続いたりする場合があります。その影響で一時的に鼻が詰まりやすくなりますが、これは自然な治癒過程としてよくみられる反応です。
多くのケースでは数日〜1週間ほどで症状が落ち着き、日常生活への支障も徐々に減っていきます。不安を感じることもありますが、長期的な合併症はまれで、重い後遺症につながるリスクは非常に低いとされています。
術後の経過を安定させるためには、処方された薬の使用や、鼻を強くかまないなどの注意点を守ることが大切です。
鼻中隔矯正術は高い成功率を持つ手術ですが、ごく稀に矯正した鼻中隔が再びわずかに曲がることがあります。これは「リラプス」と呼ばれる現象で、術後の軟骨が変形したり、傷跡による組織の収縮が起きたりすることで生じることが多いです。
ほかにも、周囲の筋肉の張力が影響して骨や軟骨が元の方向へ引き寄せられるように戻ることがあります。
とくに湾曲が大きかった症例ではリラプスの可能性が高まり、外傷やアレルギー性炎症が再発した場合にも起こりやすいとされています。
とはいえ、正確な手術手技と適切な術後管理が行われれば、リラプスのリスクを抑えることが可能です。定期的な診察を受けながら、回復状況に合わせてケアを続けることが重要です。
鼻中隔矯正術は、保険が適用されるとはいえ、一定の費用と回復期間が必要です。費用の目安は、保険適用(3割負担)の場合でおよそ3〜10万円です。
内訳には、麻酔や手術処置、入院費などが含まれます。多くのケースでは日帰り手術が可能ですが、状態によっては1〜2日程度の入院や安静が求められることもあります。
手術後は数日間、鼻づまりや軽い腫れが続く場合が多く、完全に回復するまでに時間がかかることも少なくありません。
費用面とダウンタイムを考慮して、スケジュールに余裕をもって手術を検討することが大切です。

鼻中隔湾曲症は、鼻の内部の構造が原因で起こる鼻づまりやいびきなど、生活の質に影響しやすい疾患です。しかし、必ずしも手術が必要になるわけではなく、症状の強さや日常生活への支障の程度によって治療の選択肢は変わります。
軽度であれば薬物療法や鼻洗浄などの保存的治療で十分改善が期待できます。慢性的な鼻づまりや睡眠の質の低下が続く場合には、鼻中隔矯正術で根本的な改善を目指しましょう。
大切なのは、現在の症状がどの程度生活に影響しているかを把握し、適切な治療方法を選ぶことです。
山之内矯正歯科クリニックでは、一般的な歯科矯正に加え、鼻中隔湾曲症の治療にも対応しています。必要に応じて各分野の医師と連携し、「咬み合わせ・骨格・呼吸機能」の三方向を考慮した治療を行っています。
お悩みの方はお気軽にご相談ください。