2025/12/25

保護者様から「小児矯正は何歳からはじめるべき?」「効果的なタイミングではじめたい」といったご質問が多く寄せられます。
小児矯正は、成長期の顎の発育を利用し、歯並びや噛み合わせを整える治療です。思春期以降は骨が硬くなるため、小児矯正と同じ方法でのアプローチが難しくなります。
本記事では、小児矯正をはじめる適切な時期と完了までの期間をわかりやすく解説します。チェックすべき症状や費用なども説明するので、小児矯正を検討中の方はぜひ参考にしてください。

小児矯正の主な目的は、永久歯が正しい位置に生えるための土台を整えることです。乳歯と永久歯が混在する混合歯列期は顎の成長が旺盛な時期で、このタイミングで治療を行うことで以下の効果が期待できます。
あごの成長は一生のうちで限られた期間しか起こらないため、タイミングを逃さず治療を開始することが大切です。

小児矯正は、あごの成長を利用できる混合歯列期(6〜12歳)にはじめるのがもっとも効果的といわれています。
混合歯列期は、乳歯が抜けはじめて永久歯が少しずつ生えてくる時期です。この時期には顎を広げたり永久歯がきれいに並ぶためのスペースをつくったりと、大人の矯正ではできない治療が行えます。
反対に、永久歯が生え揃う12歳以降は成長を利用した治療ができず、大人とほぼ同じ治療を行うことになります。様子を見すぎて小児矯正のタイミングを逃してしまうケースもあるため、気になる兆候があれば早めに歯科医院へ相談しましょう。
年齢別の治療内容も説明します。
乳歯が抜けはじめる頃はあごの成長がもっとも盛んで、発育を最大限に利用できるタイミングです。
▼この時期の治療例
永久歯がほぼ揃い、前歯の歯並びが安定してくる時期です。個人差はありますが、12歳までであればまだあごの成長を利用できます。
▼この時期の治療例
永久歯が生え揃う12歳以降にはあごの骨格の成長がゆるやかになるため、骨を広げたり骨格のズレを戻したりといった成長誘導が難しくなります。
▼この時期の治療例
この時期は成人矯正とほぼ同じ方針で、歯を動かす治療が中心となります。

お子様の歯並びや噛み合わせの状態は、成長とともに少しずつ変化していきます。様子を見るべきか、それとも相談した方がいいのか判断が難しい場面も多いものです。
小児矯正が必要になる症状には次のものがあります。
ここからはチェックしたいポイントを詳しく解説します。
歯が重なって生えていたり、前歯がねじれていたり、スペースが明らかに足りない状態を「叢生(そうせい)」と呼びます。
▼叢生が起きる原因
叢生を放置すると歯の位置がさらにズレたり、永久歯が正しく生えてこないなど状態が悪化する可能性があります。歯ブラシが届きにくく、虫歯や歯肉炎のリスクが増える点にも注意が必要です。
叢生が自然に治ることはほぼありません。一方で、あごの成長を利用できる子どもの時期こそ、改善しやすい症状の一つでもあります。
噛み合わせが悪いと、見た目だけではなく機能面の問題が起こります。
▼不正咬合による影響
噛み合わせの異常は発音や咀嚼に影響が出ます。食べ物をうまく噛み切れず、消化不良の原因につながります。
頭痛や肩こりなど全身の不調につながるケースもあるため、気がついた時に対処することが大切です。
指しゃぶり自体は幼児期にはよくある行動ですが、4〜5歳以降も続く場合は歯並びや骨格に影響します。
▼指しゃぶりによる影響
指しゃぶりによって舌が常に下がる癖がつくと、歯を支える力のバランスが崩れ、歯列がさらに乱れやすくなります。
小児矯正の装置を装着すると、指しゃぶりの習慣を断ち切りやすくなるケースも多いので、親御さんだけで対応が難しい場合は歯科医院に相談するのもおすすめです。
口呼吸も歯並びに影響を与える悪習慣の一つで、改善しなければ虫歯や歯周病、口臭などの口腔トラブルにつながります。
▼口呼吸の特徴
口の中が乾燥すると風邪やウイルス感染のリスクも増加するため、お子様の健康を考えると早期に改善することを推奨します。

小児矯正は、混合歯列期に行う1期と永久歯が生え揃ってから本格的な矯正治療を行う2期の2段階に分けられます。
1期では主にあごの歯が生えるスペースを確保したり噛み合わせを整える治療を行い、期間の目安は1〜3年ほどです。2期に進む前提で進めていきますが、経過次第では1期で終了する場合もあります。
2期治療は永久歯が生え揃う12歳以降に行われ、ワイヤーやマウスピースで歯並びを整えます。期間は1年半〜2年半ほどで、1期と合わせると2〜5年ほどで完了するのが一般的です。(個人差があります)
このほか、後戻りを防いだり、動かした歯を安定させるためにリテーナーを装着する保定期間も必要です。

小児矯正の費用は症状の程度や装置の種類、治療期間によって大きく変わります。一般的な相場は次の通りです。
2期治療からスタートした場合の相場は50〜120万円程度です。この費用には精密検査(レントゲン・模型・口腔内スキャンなど)・診察代・装置代・矯正後の保定装置(リテーナー)などが含まれます。
装置の破損・紛失や、虫歯治療などが必要となるケースでは追加費用がかかります。

小児矯正と成人矯正の最大の違いは、あごの成長を利用できるかどうかです。
小児矯正の目的は、発育を利用して永久歯が並ぶスペースを確保することです。あごの骨が柔らかい分、成人矯正よりもスムーズに歯列を移動させられるメリットがあります。
成人矯正は骨格の成長がある程度終わっているので、歯を動かす治療がメインです。歯がきれいに並ぶスペースがなければ抜歯、骨格のズレが大きい場合は外科的手術を行うこともあります。
成長期のうちに小児矯正を終えられると抜歯のリスクが減り、治療負担も軽減される可能性があります。治療の難易度が下がると治療期間や費用も抑えられるため、適切なタイミングでスタートすることが大切です。

小児矯正はあごの成長を活かせる混合歯列期(6〜12歳)にはじめるのがもっとも効果的です。
親御さんには「まだ早い」「子どもに負担をかけたくない」といった気持ちがあるかと思いますが、適切なタイミングでスタートすることがお子様にとって最善の選択となります。
いつはじめるべきか、そもそも小児矯正が必要かどうかは歯科医師に相談することをおすすめします。山之内矯正歯科クリニックでも小児治療に対応しておりますので、お子様の歯並びや噛み合わせでお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
2025/12/25

小児矯正を検討するきっかけの多くは「子どもの歯並びがよくない」「歯が生えるスペースが狭そう」「口呼吸が気になる」といった保護者様の不安です。
小児矯正は成長期だからこそ行える治療で、発育を利用して顎を無理なく広げることで永久歯が生えるスペースをつくります。顎の土台が整うことで抜歯を回避できたり、思春期以降の本格矯正の負担を軽減できるといったメリットがあります。
本記事では小児矯正で顎を広げる治療の基礎知識をまとめました。治療法や推奨年齢、痛みなども詳しく解説しているので、小児矯正を検討中の方はぜひ最後までお読みください。

小児矯正では、永久歯がきれいに生え揃うための土台を整えるために顎を広げる治療を行うことがあります。
永久歯は乳歯より大きいため、顎が小さいと永久歯が並ぶスペースが不足します。将来的に歯並びや噛み合わせに影響が出るリスクがあるため、歯科矯正で永久歯が生えるスペースを確保する必要があるのです。
成長過程にある子どもの顎の骨はまだ柔らかく、変化を受け入れやすい状態です。発育を利用し、成長期に顎を広げると無理なく顎を広げられるメリットがあります。
思春期以降は骨が硬くなるため、同じ治療で同じ効果が得られるとは限りません。また、永久歯が生えるスペースがないと抜歯が必要になったり、治療が複雑化することもあります。
土台を整えつつ、将来的なリスクや負担を軽減することが小児矯正の目的です。

小児矯正で顎を広げる治療には以下の種類があります。
| 治療法 | 固定/取り外し | 年齢の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 拡大床 | 取り外し | 5〜12歳(理想は7〜9歳) | 成長を利用して少しずつ顎の幅を広げる。軽度〜中等度に適応。 |
| 急速拡大法 | 固定 | 6〜12歳 | 短期間で骨ごと拡大し、数週間〜数ヶ月で完了する。 |
| 緩徐拡大法 | 固定or取り外し | 6〜11歳 | 弱い力でゆっくり広げる。比較的痛みが少ない。 |
| マウスピース | 取り外し | 5〜12歳 | 取り外し式なので衛生的で負担が少ない。 |
ここからはそれぞれの方法を詳しく解説します。
取り外しができるプレート型の装置を装着し、中央のネジを少しずつ回して顎を広げる方法です。成長期の顎の発育を利用し、負担をかけずに歯列の幅を広げていきます。
装置は取り外しが可能で、食事や歯磨きの邪魔にならず衛生的です。前歯が生えるスペースが少ない、顎が小さく永久歯の生える余地がないなどの症例に適応があります。
対象年齢は5〜12歳頃で、もっとも効果が出やすいのが7〜9歳の混合歯列期です。顎の成長がほぼ完了している13歳以降は拡大床以外の選択肢が推奨されます。
上顎の中央にある正中口蓋縫合という骨の継ぎ目を利用し、数週間〜数ヶ月で顎を広げる治療です。固定式の強固な装置を使い、上顎の骨を拡大します。
急速拡大法は短期間で歯列の幅を広げられることが最大のメリットです。固定式なので装着忘れの心配もありません。
ただし、力が強いため調整直後に軽い痛みや圧迫感が出ることがあります。食べかすが溜まりやすいため、いつも以上に丁寧な歯磨きが必要です。
顎の成長スピードに合わせて、弱い力を長期間かけながら顎を広げる治療です。急速拡大法に比べて患者様の負担は比較的少なく済みます。
推奨年齢は6〜12歳の混合歯列期で、1〜2年ほどかけてゆっくりと顎を拡大していきます。固定式と取り外し式が選べるのも緩徐拡大法の特徴です。
急速拡大法ほどのスピードはありませんが、顎の拡大と成長が同期するため後戻りのリスクが低いとされます。
シリコンや樹脂でできたマウスピースを装着し、歯列誘導を行う方法です。単独でも効果がありますが、口腔筋機能療法(MFT)と併用するとより高い効果が望めます。
取り外し式で負担が少なく、指しゃぶりや舌癖などの習癖にも有効です。ただし、装着時間が短いと効果に影響が出る可能性があるため、計画通りに治療を進めるには本人の協力だけでなく、保護者様の見守りも必要です。

小児矯正で顎を広げるメリットには次のものがあります。
それぞれのメリットを詳しく解説します。
小児矯正で顎を広げる最大の目的は、永久歯がきれいに生えるための十分なスペースをつくることです。永久歯は乳歯よりひと回り大きいため、顎が小さいままだと歯が収まりきらず、前歯のガタつきや八重歯など歯列の乱れにつながります。
顎を広げると永久歯が自然な位置に並びやすく、歯列不正や噛み合わせのズレ予防に効果的です。抜歯を回避できる可能性もあり、多くのメリットが得られます。
子どものうちから早期に介入すると本格矯正の難易度が下がり、治療がシンプルに進みやすくなります。
顎の幅が整うと、上下の歯が正しい位置で噛み合いやすくなり、咀嚼の動きがスムーズになります。
特定の歯だけに負担が偏る状態を改善することは食事効率を上昇させ、消化不良を防ぎます。虫歯や歯周病のリスクを抑えたり、顎関節症や肩こりなど全身の不調を予防するのにも効果的です。
小児矯正で歯列が広がると、舌が本来の位置である舌房に収まりやすくなります。口を閉じる力がしっかり働くと口呼吸が減り、虫歯や歯周病、口臭予防に役立ちます。
鼻呼吸には細菌やウイルスを除去・ろ過する効果がありますが、口にはその機能が備わっていません。つまり、口呼吸をすると風邪を引きやすくなったり感染症のリスクが高まったりするのです。
口呼吸の癖が治らないと口周りの筋肉も衰え、将来的に皮膚のたるみへとつながります。睡眠の質が低下したり、いびきをかく原因になるのも口呼吸の方に多い傾向です。
呼吸の通りが良くなり、こうしたトラブルを未然に防ぎやすくなる点も小児矯正の大きな利点といえます。

顎を広げる治療では、装置を装着した直後やスクリューの調整後に軽い痛みや圧迫感が出ることがあります。
これは顎の骨に力がかかっているためで、多くの場合数日〜1週間程度で落ち着いていきます。よくある症状は歯が押されるような感覚やムズムズする違和感、食事の噛みにくさなどです。
耐えられないほどの痛みはほとんどありませんが、お子様がつらそうにしていたり、日常生活に支障が出るような時は歯科医師に相談してください。装置の微調整や食事内容のアドバイスで痛みや違和感の軽減を目指します。

小児矯正の費用は、使用する装置の種類・拡大の幅・通院頻度・治療期間などによって変動します。一般的な相場は30〜100万円ほどで、厚生労働大臣が定める疾患を除き、ほとんどのケースが自費診療となります。
補足ですが、小児矯正は歯や顎の成長段階に応じて「1期治療」と「2期治療」に分けられ、経過によって治療内容と費用が変わります。(1期は土台づくり、2期は本格矯正)

顎を広げる治療について、保護者様から多く寄せられるご質問に回答します。
小児矯正の患者様におすすめしているのが、口周りや舌の筋肉を鍛える「あいうべ体操」と、正しい舌の位置を覚えるトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)です。
これらは鼻呼吸の習慣づけや歯並びの悪化予防に役立つとされており、お口の機能を整えるうえで大切な取り組みです。
ただし、体操やトレーニングに顎そのものを骨レベルで広げる効果はありません。顎の幅を拡大するには矯正装置による治療が必要です。
顎を広げる治療で動かせるのは数ミリ単位で、小児矯正で見た目が大きく変わるほど顎が広がることはありません。
見た目への不安がある場合は、事前に想定される拡大量や治療後の歯列イメージなどを写真・模型・3Dシミュレーションで可視化してもらうと安心です。
顎の骨がもっとも反応しやすいのは混合歯列期(6〜12歳頃)です。この時期は骨が柔らかく、拡大する力に対して自然に広がりやすいため、小児矯正の理想的なタイミングとされています。
反対に、思春期に入ると骨が急速に硬くなり、拡大の反応も鈍くなります。混合歯列期と同じ治療をしても効果が出にくく、治療も長期化しやすいため、永久歯が生え揃ってからは成人と同じ本格矯正を行うのが一般的です。
歯の状態は個々の成長段階によるところが大きいので、小児矯正は計画〜保定まで一貫管理できる歯科医院で行うことを推奨します。

小児矯正で顎を広げる治療は、成長期だからこそ行える大切なアプローチです。顎の発育を利用して永久歯が生えるスペースを確保でき、将来的に抜歯を避けられる可能性が高まります。
さらに、噛み合わせの安定や口呼吸の改善など、歯並び以外の面でもお子様のお口の健康に大きくプラスに働く治療です。
顎を広げる矯正にはいくつかの方法があり、お子様の年齢や成長段階、歯並びの状態によって最適な治療法が異なります。お子様の歯並びで気になることがあれば、早めの相談をおすすめします。
山之内矯正歯科クリニックでは、一人ひとりのお子様に合わせた治療計画をご提案し、負担の少ない小児矯正を行っています。将来を見据えて最適な治療方法をご案内いたしますので、小児矯正を検討している方はお気軽にお問い合わせください。
2025/12/25

小児矯正はお子様の歯並びや噛み合わせを整え、将来の健康を守る大切な治療ですが、数十万円〜百万円単位の費用がかかります。
保護者様からは支払い方法や医療費控除についてのご相談が寄せられます。結論から申し上げると、小児矯正は医療費控除の対象になることが多いです。
本記事では、小児矯正で医療費控除の対象となる費用と条件を詳しく解説します。申請方法や計算例もご紹介するので、手続きを予定している方はぜひ最後までお読みください。

医療費控除とは、1月1日〜12月31日の間に支払った医療費が一定の基準を超えた場合、超えた部分を所得から差し引ける公的制度です。
医療費控除によって課税対象となる所得を減らせるので、支払った医療費に応じて所得税や住民税が軽減され、世帯の経済的負担を軽減します。医療保険や共済、その他給付金などで医療費が補填される場合、控除額はその額を差し引いて計算します。
対象となるのは納税者本人と配偶者、生計を一にするその他の親族のために支払った医療費です。見た目を改善する美容目的の治療は対象とはなりません。

小児矯正は、お子様の歯並びや噛み合わせを整えることで発音や咀嚼機能を正常に育てることを目的としています。
見た目を整えるためだけの治療ではなく、機能を回復・改善するための治療であることから、医療費控除の対象となるケースが多いです。
▼小児矯正が医療費控除の対象となるケース
機能改善が必要かどうかは、医師または歯科医師の診断に基づいて判断されます。機能面に問題がなく、見た目をきれいにしたいという理由であれば医療費控除の対象にはなりません。

小児矯正で医療費控除の対象となる費用は次の通りです。
ここからはそれぞれの内訳を解説します。
矯正治療そのものにかかる費用は医療費控除の中心となる項目で、以下の内訳が対象となります。
| 項目 | 内訳 |
|---|---|
| 診断料 | 歯型やレントゲンなど、治療計画を立てるための費用 |
| 矯正装置の費用 | マウスピースやワイヤー、拡大装置など |
| 定期調整料 | 装置の調整やワイヤー交換など |
| 保定装置の費用 | 治療後の歯並びを維持するための装置 |
分割払いやデンタルローンであっても、その年に支払った矯正の治療費は医療費控除の対象となります。
矯正治療の前段階で行われる精密検査も治療計画を立てるために必要な医療行為です。レントゲン撮影や口腔内スキャナー、歯列模型の作成なども医療費控除の対象となります。
自宅から歯科医院までの交通費も医療費控除の対象になりますが、電車やバスなど公共交通機関の利用に限られます。原則として、マイカー利用でのガソリン代や駐車場代は認められません。
公共交通機関の場合は領収書はなくても構いませんが、利用した日付や区間、金額はメモに残しておく必要があります。保護者が同伴した場合の交通費も対象となります。
矯正治療の過程で歯科医師から薬を処方された場合、その薬代も控除対象となります。
小児矯正で処方される薬の例としては、矯正装置装着後の痛みや炎症に対する鎮痛薬や、口内炎や歯肉炎を抑えるための抗生物質などがあります。
小児矯正で入院が必要となるケースは稀ですが、あごの骨格的な異常を伴う顎変形症などの症例では外科手術を伴う場合があります。その際の入院費や手術費、麻酔費用なども医療費控除の対象です。
矯正治療に付随して口腔外科との連携治療が行われるケースも、同一の治療であれば一体の医療行為として控除できます。医師の紹介状や手術記録がある場合は、申告時に添付または提示できるよう保管しておきましょう。

小児矯正において医療費控除の対象とならない費用は次の通りです。
ここからは医療費控除の対象外となる費用について補足します。
機能面に問題がなく、見た目を美しく整えることだけを目的とした矯正治療は医療費控除の対象外です。審美(美容)目的の歯科矯正が対象とならないことは国税庁のホームページでも明記されています。
通院中に発生した飲食費は医療費控除の対象になりません。
ただし、入院が必要となるケースでは治療を行ううえで病院側が管理・提供する食事(病院食や手術前後の特別食など)は認められます。※入院中に売店などで購入したものは対象外
通院のためにタクシーを利用しても、その分の交通費は医療費控除として認められません。やむを得ない事情がある場合は例外的に認められることもありますが、小児矯正でそのようなケースは極めて稀です。
仮に歯科医師や病院からタクシー利用を指示された場合は、その旨を診療記録やメモに残しておくと安心です。(タクシー利用は領収書が必要です)

医療費控除は以下の手順で申請します。
ここからはそれぞれの工程を詳しく解説します。
医療費控除の申請をするには、まず支払いや通院の証明となる書類を正確にそろえることが重要です。
▼必要書類一覧
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 医療費控除の明細書 | 氏名や病院、金額などの情報を記載する書類。国税庁のホームページからダウンロード可。 |
| 医療費の領収書 | 矯正治療や精密検査などの領収書。提出は不要だが税務署から求められた際に提示できるようにしておくと安心。 |
| 交通費の利用明細 | 領収書や利用記録など。メモでも可。 |
| 源泉徴収票 | 勤務先から渡される年末調整の書類。 |
| 確定申告書 | 税務署や国税庁のホームページからダウンロード可。 |
| 本人確認書類 | マイナンバーカードや免許証など。 |
医療費は家族の誰が支払っても、同一生計内であれば代表者1人がまとめて申告できます。
医療費控除の申請は①e-Taxで提出②税務署に提出する方法の2通りあります。
国税庁の確定申告書等作成コーナーから入力・提出でき、マイナンバーカードとスマホで簡単に本人確認ができます。
源泉徴収票などを読み取って入力できるため、書き間違いが少なく、還付までの期間も2〜3週間程度と比較的短いです。
② 税務署に提出
お近くの税務署に申告書と必要書類を持参、または郵送する方法です。申告期間中(通常:翌年2月16日〜3月15日)は混雑するため、早めの提出をおすすめします。
郵送の場合は、締切日必着ではなく消印有効です。
書類の提出後、内容に問題がなければ指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。振込までの期間はe-Taxでの申請で2〜3週間程度、税務署へ提出した場合は1〜2ヶ月程度が目安です。
医療費控除は過去5年分までさかのぼって申請できます。過去に小児矯正の治療費を支払っていて申請していない場合も、領収書や明細書が残っていれば還付を受けられる可能性があります。

医療費控除は以下の要件を満たしていることを確認したうえで計算します。
▼医療費控除の要件
▼医療費控除額の算出
医療費控除額=実際に支払った医療費 – 保険金等で補填される金額 – 10万円または所得金額の5%(いずれか少ない方)
医療費控除の限度額は200万円です。支払いが同一年内であれば、複数の医療機関分を合算して申告できます。

医療費控除の仕組みを理解しても、実際にどのくらい戻るのかはイメージしづらいものです。ここからは医療費控除の計算例を2つ紹介します。
▼ケース設定
▼控除基準額
所得500万円 × 5% = 25万円
→10万円または所得金額の5%いずれか少ない方が採用されるため、10万円
治療費60万円 − 10万円 = 50万円
医療費控除の対象となる金額 :50万円
所得税の還付金額:10万円
翌年度の住民税減額金額:5万円
このケースではおよそ15万円前後が税金として戻る計算になります。
▼ケース設定
▼控除基準額
所得700万円× 5% = 35万円
→10万円または所得金額の5%いずれか少ない方が採用されるため、10万円
治療費130万円(合算) − 保険補填分20万円 − 10万円 = 100万円
医療費控除の対象となる金額 :100万円
所得税の還付金額:23万円
翌年度の住民税減額金額:10万円
このケースでは、およそ33万円前後が税金として戻る計算になります。

医療費控除は医療費控除の明細書を提出すれば申請でき、診断書や治療計画書の提出は必須ではありません。
歯列矯正は治療と美容目的で扱いが異なるため、治療目的であることを説明できる資料を手元に置いておくと税務署への説明がスムーズに進められます。
▼保管しておくとよい書類

小児矯正の年齢上限に明確な決まりはありませんが、一般的には永久歯への生え替わりが進む幼児期〜中学生までを対象とすることが多いです。
判断のポイントとしては「発育段階にある子どもの成長を阻害しないように行う矯正かどうか」で、年齢はその目安として扱われます。
では、高校生以上はどうかというと、歯の生え変わりがほぼ完了していることから小児矯正ではなく成人矯正として扱われることが多いです。もっとも、成人矯正も美容目的ではなく、医療上の必要性があると判断されれば医療費控除の対象となります。

小児矯正は噛み合わせや発音、咀嚼機能を正しく育てるための医療行為として判断されるため、医療費控除の対象になりやすい治療です。
申請の際には、美容目的でないことを示す治療計画書や領収書、通院記録などを用意しておくと手続きをスムーズに進められます。
小児矯正は高額になりやすいですが、医療費控除によって家計の負担を軽減できます。「支払いが不安」「続けられるかわからない」といった方の助けになる制度なので、正しい知識を持って上手に活用しましょう。
2025/12/25

小児の歯科矯正は、歯や骨格の成長に合わせて1期と2期に分けて行います。治療経過によっては2期が不要になるケースもありますが、小児矯正は1期でやめることを前提としていないので、1期から2期へ移行するのが一般的です。
1期でやめられるか?というご質問に対して、歯科医院としては「経過次第だが、大半の患者様が2期治療に進んでいる」という回答をしております。
本記事では、小児矯正を1期でやめられるケースをご紹介します。1期で中断するリスクや再開時の注意点も解説するので、小児治療を検討中の保護者様はぜひ最後までお読みください。

「小児矯正は意味がない」「途中でやめても問題ない」といわれる理由に、1期治療では歯を動かす本格的な治療を行わないことがあげられます。
6〜10歳頃は乳歯と永久歯が混在する混合歯列期と呼ばれ、歯並びや噛み合わせの基礎となるあごの骨が大きく成長する時期です。小児矯正の1期治療では、永久歯がきれいに生え揃うためにあごの成長を正しい方向へ導く“土台づくり”を行います。
混合歯列期はあごの成長をコントロールしやすいため、この時期に適切な治療を行うと将来的に抜歯をせずに済んだり、大がかりな矯正治療を回避できる可能性があります。
小児矯正の1期は、将来の治療負担を軽減することが目的です。骨格の柔軟性を活かし、成長を味方にする優しい治療が行えるのです。

結論から申し上げると、小児矯正を1期でやめることは可能です。治療は歯科医師が強制するものではないため、なんらかの理由で継続するのが難しくなればご家庭の事情に配慮します。
しかし、1期で治療が順調に進んだからといって、将来も歯並びが良好に保てる保証はありません。なぜなら、1期治療で行えるのはあくまで土台づくりだけで、歯列のズレや噛み合わせ自体を改善することはできないからです。
1期治療であごを広げ、永久歯が十分に並ぶスペースを確保できれば、その後は経過観察のみで良好な歯並びを保てることはあります。一方で、一度広げたスペースが元に戻ってしまったり、成長途中で新たに歯列がズレたりすることは珍しくありません。
2期治療までしっかり行うと後戻りのリスクが軽減されるので、小児矯正では1期で終了する想定はせずに最終的な目標を立てるのが一般的です。
歯科矯正には虫歯や歯周予防のほか、咀嚼・発音の改善や体の機能向上などさまざまなメリットがあります。結果として生活の質向上にもつながるため、当初の治療計画の通り継続することをおすすめします。

小児矯正は1期から2期へ継続して行うのが理想とされていますが、状況次第では1期で治療を終了するケースもあります。
ここからは上記のケースを詳しく解説します。
小児矯正の1期では、あごの成長を利用して永久歯がきれいに並ぶよう土台を整えることが目的です。歯を動かす本格的な矯正は行いませんが、1期で歯列や噛み合わせが十分に改善した場合は2期へ進まずに治療を終了することがあります。
▼1期治療で終了となる場合の判断要素
セファロ分析とは、横から撮影した顔とあごのレントゲンを使って歯並びのバランスを詳しく調べる検査のことです。複数の所見から総合的に判断します。
仮に1期で終了した場合も、永久歯が生え揃うまでは半年〜1年に一度の定期健診を受けることが推奨されます。
小児矯正の平均的な期間は1〜3年程度と長く、装置を装着して生活することにストレスを感じるお子様もいます。装着から数日〜1週間程度は違和感や軽い痛みが出ることもあり、その間はお子様にとって辛抱の時間となります。
徐々に慣れていくものの、食事がしにくい、装着するのが恥ずかしいといったお子様の心理的負担を無視することはできません。保護者様のケアも必要になるため、ご家族が継続するのは難しいと判断すれば治療を中断することもあります。
補足ですが、近年は新しい装置の開発や技術力の向上によって以前よりも痛みが軽減されています。お子様の歯の状態を見ながら、ワイヤーの太さや歯を引っ張る力を調整することで痛みや違和感の少ない治療が可能です。
当院では、患者様の不安や疑問を解消するために丁寧な説明を心がけておりますので、安心してご相談ください。
小児矯正は1期と2期合わせて2〜5年ほどかかりますが、この間に進学や転勤などで引っ越しが必要になり、継続が困難になるケースも想定できます。
治療費も数十万〜百万円単位と高額であり、費用面を理由に中止したいと考える方がいるのも事実です。
小児矯正を途中でやめると、あごの成長誘導が中途半端に終わってしまい、改善しつつある歯並びや噛み合わせがふたたび乱れてしまうことがあります。
将来的に再矯正が必要になる可能性もあるため、やむを得ず中断する場合でも、引っ越し先で通院可能な歯科医院を紹介してもらうなど継続的なフォローが必要です。
費用に関しては、デンタルローンや院内分割制度など無理なく続けられる支払い方法を選択できます。ここまでの治療が無駄にならないよう、歯科医院と相談しながら継続できる方法を模索していくことを推奨します。

小児治療を1期で終了するリスクには次のものがあります。
それぞれのリスクを詳しく解説します。
1期治療の目的は、これから生えてくる永久歯がきれいに並ぶための土台を整えることです。歯そのものを大きく動かすわけではないため、1期治療のみで理想的な歯並びが完成するとは限りません。
骨格バランスのズレや歯の生え方に問題がある場合は、2期治療の本格矯正を行うことではじめて最終的な噛み合わせが整います。
1期治療を行う混合歯列期はあごが成長途中にあり、途中でやめるとせっかく整えた骨格がふたたび変化し、歯並びや噛み合わせに影響が出る可能性があります。
小児矯正を1期で終了すると後戻りのリスクが心配です。
小児矯正は1〜2期治療を適切に終えた場合と、中断・再開した場合とでは所要期間と費用に差が出ることが多いです。
1期で土台をつくり、2期で歯並びや噛み合わせを仕上げると完了までの治療がスムーズに進みます。歯科矯正はあごの成長を利用するため、成人よりも小児の方が難易度は低い傾向です。
1期で中断すると、歯列やあごのバランスが不安定なまま成長が進むことになります。結果として将来的により複雑な治療が必要になり、時間と費用両方の負担を増やしてしまう可能性があります。
噛み合わせは発音や姿勢、全身のバランスにも関わりがあります。噛み合わせが改善されないまま1期で治療をやめてしまうと、身体の機能面にも影響が及ぶリスクがあるのです。
▼噛み合わせが悪い状態(不正咬合)によって起こる症状
小児矯正は歯の健康や見た目の問題だけでなく、身体の機能やバランスを保つ役割も担う治療です。中断せざるを得ない理由がある場合は必ず歯科医師に相談し、リスクを十分に理解した上で決めることが大切です。

歯科矯正は一度中断しても再開することは可能です。ただし、小児矯正においては「再開」ではなく「一からやり直す」という考え方をします。
というのも、小児の場合は一時中断している間にも歯やあごが成長していくため、再開時に当初の計画と同じ治療ができるとは限らないためです。
1期治療ではあごの成長誘導や歯列の基礎づくりを行いますが、途中でやめてしまうとせっかく整えたバランスが時間とともに崩れてしまうことがあります。
そのため、再開時には改めて検査を行い、歯並びやあごの骨の成長状態を再評価したうえで治療方針を立て直さなければなりません。
中断期間が長いほど、以前の治療計画をそのまま適用できなかったり、再検査や装置の製作など新たに費用が発生する場合もあります。とくに、思春期以降は骨の柔軟性が低下し、成長を利用した治療が難しくなります。
小児矯正を中断する理由は患者様それぞれで、さまざまな事情があるかと思います。しかし、長期的な目で見ると継続する方が治療期間が短く、費用も抑えられるケースは多いです。
悩んだ時は歯科医師に相談し、経過観察や再開のタイミングを一緒に検討することが大切です。柔軟な対応でより良い結果を目指していきましょう。

小児矯正を1期でやめることは可能ですが、完了せずに終えると歯並びや噛み合わせに影響する可能性があります。
将来的に治療が長期化・高額化するリスクもあるため、中断すべきかお悩みの方は歯科医師に相談のうえで慎重に判断しなければなりません。
1期で完了となるケースもありますが、大半は経過観察や2期治療への移行を含め長期的にサポートを受けることが推奨されます。やむを得ず中断した場合でも、時間と費用はかかりますが再スタートは可能です。
山之内矯正歯科クリニックでは、患者様のお悩みを解消するために丁寧なカウンセリングを心がけております。過去に小児矯正を中断したことがある方もお気軽にお問い合わせください。
2025/12/24

外科矯正とマウスピース矯正は併用できるのか、治療の流れや向き不向きが気になっている方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、すべての外科矯正でマウスピースが使えるわけではなく、骨格のずれの程度や歯並びの状態によって、適応の可否や治療方法は大きく変わります。
この記事では、外科矯正とマウスピース矯正を併用できるケース・難しいケース、治療の流れを解説します。

外科矯正とは、顎の骨格にずれや変形がある場合に、外科手術によって顎の位置を正しく整える治療法です。通常の矯正治療(ワイヤー矯正やマウスピース矯正)だけでは改善できない、骨格性の不正咬合(受け口・出っ歯・顔の非対称など)に適応されます。
この治療では、矯正歯科治療と外科手術を組み合わせて行うのが特徴です。手術によって顎の骨格そのものを動かすため、咬み合わせの改善に加えて、横顔やフェイスラインなどの見た目も大きく変化します。
さらに、顎の位置を正しく整えることで、噛む・話す・呼吸するといった機能面の改善も期待できます。審美性と機能性の両面から根本的な改善を図る治療法といえるでしょう。

マウスピース矯正とは、透明なマウスピース(アライナー)を一定期間ごとに交換しながら、歯を少しずつ理想の位置へ動かしていく矯正方法です。装置が透明で目立ちにくく、食事や歯みがきの際に取り外しができるメリットがあります。
マウスピース矯正は、軽度〜中等度の歯列不正(出っ歯・すきっ歯・軽い叢生など)に適しており、歯並びを整える「歯列矯正」を主な目的としています。従来のワイヤー矯正に比べて見た目が自然で、日常生活への支障が少ないことも大きなメリットです。
ただし、顎の骨格的なずれが大きい症例(受け口・左右非対称など)では、マウスピース矯正だけでの改善は難しい場合があります。そのような場合には、外科矯正と組み合わせて行うことで、機能面と審美面の両立を図ることができます。

近年では、外科矯正の一部工程でマウスピース型矯正装置(インビザラインなど)を併用するケースも増えています。
術前や術後の歯の位置調整をマウスピースで行うことで、見た目の自然さや装着時の快適性を保ちながら治療を進められるのが特徴です。
マウスピース矯正は、取り外しができるため口腔内を清潔に保ちやすく、治療中のストレスを軽減できる点もメリットです。術前矯正では手術に最適な歯列位置の調整、術後矯正では噛み合わせの微調整に活用されることがあります。
ただし、骨格の大きな移動や複雑な歯体移動が必要な場合は、従来どおりワイヤー矯正のほうが精密なコントロールに適しています。
そのため、症例によってマウスピースの併用が可能かどうかは異なり、矯正歯科医と口腔外科医が連携した精密な診断が重要となります。

マウスピース併用は、外科矯正の中でも特に「見た目や快適さを保ちながら治療を進めたいケース」に適している方法です。
マウスピース併用が向いているケースは以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
マウスピース矯正は、骨格のずれが比較的軽度で、主に歯の位置や角度を整えることが目的の症例に向いています。
ワイヤー矯正のように強い力を持続的にかけることは難しいものの、術前・術後の歯列微調整や最終的な噛み合わせの仕上げ段階で有効に活用できます。
とくに、見た目や装着感を重視しながら治療を進めたい人にとって、マウスピース併用は大きなメリットです。
外科矯正全体の流れの中で、機能的・審美的な最終調整を行う手段として取り入れられるケースが増えています。
仕事や人前で話す機会が多いなど、見た目を重視する成人患者では、外科矯正にマウスピース矯正を併用することで治療中の審美性を保つことができます。
マウスピースは透明で目立ちにくいため、写真撮影や会話の際にも装置がほとんど気にならず、接客業・営業職などの人でも負担が少ないのが特徴です。
また、取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際に清潔を保ちやすいという衛生面でのメリットもあります。
社会生活を維持しながら矯正治療を進めたい人にとって、マウスピース併用は現実的で快適な選択肢といえるでしょう。
外科矯正の手術後は、骨格が正しい位置に整った状態に合わせて歯の位置を微調整する「術後矯正」を行います。この段階では、手術前のような大きな歯の移動は少なく、マウスピース矯正による細かな調整や保定が効果的です。
マウスピースは透明で取り外しができるため、術後の腫れや違和感が残る時期でも快適に使用できるのが利点です。また、金属を使わないため口腔内への刺激も少なく、日常生活への影響を最小限に抑えられます。
さらに、術後矯正が完了した後も、保定装置(リテーナー)として継続使用できるため、歯並びや咬み合わせの安定を長期間保つことができます。

マウスピース併用が難しいケースは以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
顎の前後・左右のずれが大きい場合や、開咬(奥歯を噛んでも前歯が閉じない状態)などの重度な骨格性不正咬合では、マウスピース矯正単独での対応は難しいとされています。
これらの症例では、歯の位置だけでなく顎全体の骨格を移動させる外科的処置が必要になるためです。一般的にはワイヤー矯正や骨固定装置を併用して治療を行います。
重度の歯周病がある場合は、歯槽骨(しそうこつ:歯を支える骨)が弱くなっているため、マウスピース矯正による力のかかり方で歯の動揺や位置の不安定化が起こるおそれがあります。
外科矯正を行う際にも、骨の支持力が不十分だと手術後の安定性に影響する可能性があります。
そのため、歯周病がある場合は、まず歯周治療を優先して炎症や骨吸収をコントロールすることが重要です。歯肉の健康状態を改善してから矯正や外科手術を検討することで、より安全かつ長期的に安定した結果を得ることができます。
インプラントは骨と結合して固定されているため動かすことができず、その周囲の歯をマウスピース矯正で移動させる際に制約が生じます。
また、埋伏歯(まいふくし:骨の中に埋まったまま生えていない歯)がある場合も、歯の移動計画に影響を与える要因となります。埋伏歯は周囲の骨構造を変化させる可能性があり、マウスピース矯正単独では対応が難しいケースが多いです。
マウスピース矯正では、1日20時間以上の装着や定期的な交換・清掃といった自己管理が欠かせません。これらを怠ると、歯の移動が計画どおりに進まず、治療期間が延びたり効果が十分に得られないリスクがあります。
外科矯正では、手術前後に歯列の安定が重要になりますが、装置の管理が不十分だと咬み合わせの調整にズレが生じるおそれがあります。とくに、手術後の腫れや痛みによって装着時間が短くなると、歯の位置がわずかにずれたり、アライナー(マウスピース)が合わなくなるケースもあります。
そのため、装着の習慣化やメンテナンスに不安がある場合には、より確実に歯の位置をコントロールできるワイヤー矯正主体の治療を選択する方が安心です。自分のライフスタイルや性格に合わせて装置を選ぶことが、外科矯正を成功させる大切なポイントです。

外科矯正とマウスピースを併用する場合の治療の流れは以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
外科矯正とマウスピース併用治療を行う場合、まずは顔全体のバランスや顎の位置、咬み合わせの状態を詳細に確認します。CT撮影やセファログラム(頭部X線)、歯列模型などを用いて、骨格構造と歯並びの関係を精密に分析するのが最初のステップです。
そのうえで、マウスピース矯正がどの範囲まで適用できるかを判断し、術前矯正・術後矯正のどの段階で活用できるかをシミュレーションします。歯の移動量や顎の骨格的ずれの程度を評価し、治療全体の流れを設計します。
顎変形症の程度が大きい場合や、骨格移動が必要なケースでは、ワイヤー矯正との併用を提案されることもあります。
外科矯正では、手術に先立って上下の歯を正しい位置関係に整える「術前矯正」を行います。手術で顎の骨を正しい位置に動かした際に、咬み合わせがぴたりと合うようにするための大切な準備です。
マウスピース矯正を使用する場合は、主に軽度の歯列調整や歯軸の傾き修正を目的として行われます。
一方で、大きな歯の移動や強い固定力が必要なケースでは、マウスピースだけでは対応が難しいことがあります。その場合は、ワイヤー矯正やハイブリッド法(ワイヤーとマウスピースの併用)を選択することで、精密かつ安定した歯列調整が可能になります。
外科矯正の中心となる工程が、顎の骨を適切な位置に移動させる外科手術です。手術では、上顎・下顎、またはその両方の骨をミリ単位で調整し、咬み合わせと顔全体のバランスを整えます。
この段階では、マウスピース矯正は使用せず、顎の骨格を安定させることを最優先とします。手術後の骨の固定や噛み合わせの維持には、ワイヤーや固定装置(スプリントなど)が用いられることが一般的です。
骨の位置が安定するまでの期間は、食事や会話などにも制限が設けられます。
外科矯正手術の後は、骨格が正しい位置に整った状態に合わせて歯の微調整を行う「術後矯正」を実施します。この工程では、手術によって得られた咬み合わせをさらに精密に仕上げ、噛みやすさと見た目の自然さを両立させます。
この段階でマウスピース矯正を使用することで、装置が目立たず審美性を保ちながら歯列の微調整が可能です。透明で取り外しができるため、術後の腫れや違和感が残る時期でも快適に装着できます。
治療が完了したあとは、保定用のマウスピース(リテーナー)を使用し、歯並びと咬み合わせの安定を維持します。定期的な通院で骨の癒合と歯列の安定を確認し、後戻りを防止することが大切です。

サージェリー・ファースト(Surgery First)とは、従来の「術前矯正 → 手術 → 術後矯正」という流れとは異なり、外科手術を先に行う治療法です。まず手術によって顎の骨格のずれを改善し、その後に歯の細かな位置調整を行います。
この方法の最大の特徴は、見た目の変化を早期に実感できることです。術前矯正を省くため、顎の位置を整えた直後から顔貌のバランスが改善され、心理的な負担も軽減されます。
一方で、術前矯正を行わない分、手術前の咬み合わせを仮想的に設計(セットアップ)する精密な計画が不可欠です。3Dシミュレーションを用いて、術後の歯列や顎の位置を高精度に予測する必要があります。
また、すべての症例に適応できるわけではなく、顎変形の程度・歯列の乱れ・噛み合わせの複雑さによっては、従来型が適している場合もあります。
当院では、従来の外科矯正に加えて「サージェリーアーリー」(手術時期を早めた治療法)にも対応しています。RAP・SAP効果を活かした治療システムにより、従来の外科矯正に比べて治療期間を大幅に短縮することが可能です。治療期間を短くしたい方は、ぜひご相談ください。

外科矯正にマウスピース矯正を組み合わせることで、見た目を気にせず治療を進められるという大きな審美的メリットがあります。透明な装置を使用するため、装着中でもほとんど目立たず、仕事や人前に立つ機会の多い人にも適しています。
また、取り外しが可能なため、食事や歯みがきの際に装置を外して口腔内を清潔に保ちやすく、虫歯や歯周病などのトラブルを防ぐことが可能です。
術前・術後の歯の微調整も快適に行えるうえ、話す際の違和感が少ないのも特徴です。さらに、見た目や生活へのストレスを抑えられることで、長期間にわたる外科矯正治療へのモチベーションを維持しやすいという心理的な利点もあります。

マウスピース矯正はワイヤー矯正に比べて歯を動かす力が弱いため、複雑な歯の移動や大きな咬み合わせの修正には不向きなケースがあります。
また、1日20時間以上の装着が必要であり、自己管理が不十分だと歯が予定どおりに動かず、治療期間が延びるリスクもあります。とくに外科矯正は手術との連携が前提となるため、スケジュール通りに歯を動かすことが非常に重要です。
さらに、骨格的なずれが大きい症例(受け口・開咬・顔の非対称など)では、マウスピース併用が難しい、または治療効果が限定的になることもあります。
治療前には必ず矯正歯科医と口腔外科医による精密な診断を受け、適応可否を見極めることが大切です。
外科矯正とマウスピース矯正は併用可能なケースがありますが、すべての症例に適しているわけではありません。
骨格のずれが大きい場合や複雑な歯の移動が必要な場合は、ワイヤー矯正のほうが精密な制御ができるため優先されます。
一方で、術前・術後の微調整や見た目の自然さを重視する場面では、マウスピース矯正が有効に活用できます。
快適さ・審美性・治療精度のバランスは人によって異なるため、併用の可否は精密検査と専門医の判断が欠かせません。
自分に合った治療方法を選ぶためにも、矯正歯科と口腔外科の連携による診断を受け、治療計画を丁寧に検討することが大切です。